絶対に繰り返されてはいけない「邪悪な9つの医療実験」とは?
by coschda
フィクションの世界では「科学の発展に犠牲は付きもの」という言葉を目にすることもありますが、現実の世界ではそれが医学的な進歩をもたらすものであっても、意図的に人々を犠牲にすることは倫理的に許されません。しかし、「歴史を見ると医学の発展のために『邪悪な医療実験』が行われた例が少なくない」と報じられています。
9 Absolutely Evil Medical Experiments
https://www.livescience.com/13002-7-absolutely-evil-medical-experiments-tuskegee-syphilis.html
◆1:三つ子の兄弟を生後すぐに引き離す実験
1960年代から1970年代にかけて、アメリカ国立衛生研究所の支援を受けた心理学者らが、極秘で「生まれて間もない双子や三つ子の兄弟をバラバラにし、一人っ子として別の親元で育てさせたらどうなるのか?」という実験を行いました。被験者とされた三つ子のロバート・シャフラン氏、デヴィッド・ケルマン氏、エドワード・ギャランド氏の3人が偶然出会い、お互いに兄弟だということを知って露見したこの実験は、大きな非難にさらされることになりました。
3人は「自分に兄弟がいる」とは考えたこともなく、ケルマン氏は「実験によって私たちの20年は奪われた」と憤りをあらわにしたとのこと。ギャランド氏は実験の事実が判明した後の1995年、妻と娘を残して自殺しています。3人の養子縁組を主導して研究を行った心理学者らは、「自分たちは子どもたちにいいことをしたと思っている。それぞれがバラバラの環境で育ったことにより、自分自身の個性を育むことができた」と述べ、事実が露見した後も全く悪びれなかったそうです。
◆2:ナチスの行った人体実験
第二次世界大戦中にナチス親衛隊の将校だった医師ヨーゼフ・メンゲレ氏が行った、ユダヤ人に対する医学実験は非常に残虐なものだったとして有名です。ナチスは人間を減圧室に入れたり急速に冷凍したり、去勢措置を施したりといった実験を行い、数多くの人々が医学的興味から行われた実験によって死亡しました。
by NASA Goddard Space Flight Center
◆3:関東軍731部隊が行った人体実験
大日本帝国陸軍に存在した研究機関である731部隊は、生物兵器の開発や治療法の研究といった目的で、本人の同意を伴わない人体実験を行ったとされています。コレラ菌や腸チフス菌を意図的に井戸水に混入させて感染力を試したり、囚人を寒い天候の中で行進させ、凍傷を治療する方法の開発に利用するなどの実験が行われたとのこと。また、意識がある状態の人間を解剖したという証言もあります。
◆4:意図的に吃音病を発症させる研究
1939年、アイオワ大学の言語病理学者らは「吃音(きつおん)病は子どもの話すことに対する不安が原因だ」という説を立証するため、戦争孤児に対して「意図的に吃音病を発症させる」という実験を行ったとのこと。
研究者らはオハイオ州の戦争孤児と一緒にテーブルに座り、「君たちには吃音病の兆候が見られる。正確にしゃべることができるようになるまで、口を開いてはいけない」と伝えました。結局、研究対象となった孤児が不安から吃音病を発症することはなかったものの、孤児は不安を抱えて内気になり、無口になってしまったとのこと。2007年、アイオワ大学は実験の生き残りである3人に対し、合計92万5000ドル(約1億円)もの賠償金を支払いました。
by Windell Oskay
◆5:解剖用の死体を手に入れるために行われた殺人
1830年代まで、医学者が解剖実験に使用できる遺体は、「殺人事件で死刑になった犯人の遺体」に限られていました。ところが、殺人事件の犯人はそうそう簡単に捕まえられるものではないため、多くの医学者らは墓場泥棒が墓場から盗み出した遺体を購入するか、時には自分で墓場を掘り起こして遺体を手に入れるなどしていたそうです。
そんな中、エディンバラで1827年から1828年にかけて発生した「バークとヘア連続殺人事件」は、「解剖用の遺体をほしがっている医師に、新鮮な遺体を売りつけるために人を殺す」という恐ろしい動機で発生した事件でした。実に17人もの被害者を出したこの事件が明るみに出た後、解剖に使用できる遺体の条件引き下げが検討されました。
by Robert Couse-Baker
◆6:奴隷に対する麻酔なしの外科手術
「産婦人科の父」として知られるマリオン・シムズ氏は、産婦人科の開拓者として多くの功績を残した医者ですが、中でも膀胱腟瘻(ぼうこうちつろう)という膀胱と膣がつながってしまい、尿が膣に漏れ出してしまう病気の外科手術を開発したことで知られています。
シムズ氏は膀胱腟瘻の手術を、黒人奴隷の女性に対して行ったことで有名になりましたが、シムズ氏は「麻酔によって発生するかもしれないトラブルを許容できるほど、痛みは激しいものではない」として、麻酔なしで手術したことが非難されています。現在でもシムズ氏の功績には賛否両論あり、2018年4月にはセントラルパークに置かれたシムズ氏の銅像が撤去されるといった事態も起きています。
◆7:グアテマラ梅毒研究
アメリカ公衆衛生局は1946年から1948年にかけて、アメリカ政府とグアテマラ政府の協力の下、グアテマラの囚人および精神病患者に対して意図的に梅毒を感染させたとのこと。梅毒感染を防ぐ化学物質を探す目的で行われたこの研究は、参加者には実験後にペニシリンが投与されたものの、事前の同意を得ていなかった点が問題とされています。
by Windell Oskay
◆8:タスキーギ市の梅毒研究
アメリカ疾病予防管理センターは1932年から、タスキーギ市で梅毒患者である399人の黒人男性について追跡調査を行いました。この調査では、「治療されていない梅毒による健康への影響」を研究することが目的だったため、調査対象となった黒人男性らは「病気を治療する」と伝えられていたにもかかわらず、実際には何の治療もされていなかったとのこと。
1947年にはペニシリンが梅毒に対し有効であると判明しましたが、それでも対象の黒人男性らにはなんの治療も施されず、1972年に新聞が事実を公表するまで40年にわたり非倫理的な状態が見過ごされていました。
◆9:スタンフォード監獄実験
1971年に行われた「スタンフォード監獄実験」は、大学生を含む21人を看守役、囚人役に分けて刑務所のロールプレイングをさせるというものでした。その結果、看守役はサディスティックになり囚人役の人々を虐待し始め、囚人役の人々も消耗した様子を見せたとされています。
実は、このスタンフォード監獄実験は看守役に対して「残虐に振る舞うように」という指示が与えられており、囚人役の中にも「早く解放されたくてわざと精神がまいっているように振る舞った」人物もいたと明らかになっています。それであっても、スタンフォード監獄実験は今なお「普通の人間がどのように邪悪な存在へと変貌してしまうのか」という認識の基礎をなしており、同様の倫理的に欠如した実験は行われてはならないとのことです。
・関連記事
「脳をブーストさせるドラッグ」を利用する人が世界的に増えている - GIGAZINE
人は切断された四肢を再生する能力を覚醒させることができる、という可能性がウーパールーパーの研究から示されつつある - GIGAZINE
現代社会を作り上げた「5つの偉大な化学的発明」とは? - GIGAZINE
アスリートはバレにくい不正行為として「遺伝子ドーピング」を行うようになるかもしれない - GIGAZINE
ゲノム編集技術「CRISPR/Cas9」を用いて中国ではすでに86人の遺伝子改変が行われたことが判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ