サイエンス

突如として財産を失うという不幸は健康に多大な影響を及ぼすという研究結果

by Pedro Ribeiro Simões

詐欺や投資の失敗などによって、一夜にして貯金・家・車などの財産を失うと、そのショックによって精神的にはもちろんのこと、肉体的にも大きな影響を及ぼし、体調を崩したり寿命が縮まったりする傾向があると、メルボルン大学の社会心理学者であるニック・ハスラムさんが主張しています。

Losing wealth, health and life: how financial loss can have catastrophic effects
https://theconversation.com/losing-wealth-health-and-life-how-financial-loss-can-have-catastrophic-effects-93639


1990年に発表された論文によると、銀行の詐欺行為で退職金を失った人びとを対象に精神的な健康状態を調査したところ、財産を失った人ほどうつ病や不安障害の割合が著しく増加し、抗不安薬の処方も増えたとのこと。また、同様に住宅ローンの差し押さえ(PDFファイル)や失業率の上昇にも同じような効果があることが別の研究により明らかになっています。

また、うつ病や不安障害に陥る割合は、男性の方がより高くなる傾向にあるとのことで、アイルランドでは2008年から2012年の間で男性の自殺率が57%も増えたという研究をハスラムさんは示しています。さらに経済状況の悪化と児童虐待の発生率上昇にも関連がある可能性が研究によって示されているとのこと。

by Stu

2018年4月に発表された論文では、51~61歳のアメリカ人8714人を対象とした、20年にもわたる研究の結果が報告されているとのこと。論文によると、2年の間に財産の75%以上失ったことがある人たちは、裕福者層よりも死亡率が50%高かったことが分かりました。また、財産を失うショックを経験した人のおよそ半数が20年を待たずに亡くなっており、その死亡率は研究開始時から財産を持たない貧困層とほとんど同じだったこと。

ハスラムさんはこの研究から他にも「女性・少数民族・未亡人・独身の人たちは財産を失った時のショックがより大きい」「財産喪失による死亡リスクは家を失った時が特に大きい」「財産を失った時のショックが大きい人ほど、元の財産が豊かだった傾向が強い」という3点がという3点が読み取れるとしています。

また、突如として財産を失った人の死亡率が上がる理由として、病院や歯科医院にあまり行かなくなり、医師による正しい処方を守らずに薬を飲むことが増えるためともハスラムさんは考えていて、「社会や家計の景気後退は不健全な行動や選択を助長し、ファストフードやアルコールの摂取を促す」と指摘しています。

by NYCandre

一方で、宝くじに当たって突如として財産が増えた人が健康的になったということはないという研究も存在するとのこと。経済状況による生活環境の変化が健康に影響を及ぼすだけではなく、財産を失った時に受ける精神的ショックも影響して、精神的にも肉体的にも健康が悪化するのだとハスラムさんは主張しています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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