セキュリティ

イギリスの警察で運用される自動顔認証システムは「極めて不正確な精度で運用も不透明」と批判の声

by Mirko Tobias Schäfer

300万台以上の監視カメラが設置される監視カメラ大国・イギリスでは、いくつかの地方警察が監視カメラの映像からAIによる顔認識で犯罪容疑者を見つけ出す自動顔認証システム(AFR)を採用しています。しかしイギリスのプライバシー保護機関であるNGO・Information Commissioner's Office(ICO)が、AIによる自動顔認識技術の運用は透明性が欠け、精度に疑問が残るという声明を発表しています。

Facial recognition technology and law enforcement | ICO Blog
https://iconewsblog.org.uk/2018/05/14/facial-recognition-technology-and-law-enforcement/


Face recognition police tools 'staggeringly inaccurate' - BBC News
http://www.bbc.com/news/technology-44089161


AFRではまず、警察データベースにある容疑者の写真をソフトウェアで解析し、目・鼻・口など顔のパーツの大きさや位置のマッピングデータを作成します。その上で、監視カメラに映っている大勢の人の顔を一人一人スキャンしてマッピングデータと照合し、一致した場合には現場にいる警察官へ通報されます。警察官はその場で該当者と容疑者写真を見比べ、職務質問を行います。


実際に中国では同様のシステムで、コンサート会場で指名手配犯を顔認識システムで特定し逮捕することに成功しています。

顔認識機能を使って逃亡者を6万人参加のコンサート会場から中国警察が見つける - GIGAZINE


しかし、イギリスではAFRがうまく機能していないようで、2017年のUEFAチャンピオンズリーグの決勝戦でAFRを使用したところ、2000人以上が容疑者と誤認されたということが判明しました。他にもさまざまなイベントでAFRが利用されましたが、認識率はどれも低いものだったとのこと。

2000人以上のサッカーファンが監視カメラを使った顔認識システムによって犯罪の容疑者と誤判定されていたことが判明 - GIGAZINE


実際にAFRを採用している南ウェールズ州警察は、AFRの判定がそのまま逮捕につながるわけではなく、AFRからの通報を受けた警察官による職務質問が行われるため、誤認逮捕は今のところ出ていないと主張しています。また、南ウェールズ州警察は「AFRの認識性能が悪いのは、データベースに用いられている容疑者写真の画質が悪すぎて解析が正しく行われなかったため」と弁明し、今後もAFRを使用していく方針を示しました。

警察はまずAFRの有用性を示す明確な証拠を提示すべきであると論じています。また、AFRの主要なコンポーネントとなる警察のデータベースには1900万もの顔写真が登録されていますが、イギリスでは法整備がきちんとされていないためにデータベースの写真が正しく運用されているかは不透明であるとICOは述べています。さらにICOのエリザベス・デナム氏は警察に顔認識技術の利用をやめるよう訴えていて、「顔認識技術に対する懸念が解決されなければ、国民のプライバシーが適切に保護されるために訴訟を検討します」と語っています。

また、監視カメラの設置政策に異を唱えるイギリスの市民団体「Big Brother Watch」は、イギリスの全警察組織に情報開示を請求しました。その結果、南ウェールズ州警察以外にも、ロンドン警視庁とレスターシャー州警察がAFRを試験的に導入していたことを認めました。レスターシャー州警察は2015年にAFRをテスト運用したとのことですが、2018年にはもう利用していないとのこと。また、ロンドン警視庁はBBCの取材に対して「広範囲の人びとを保護するため、また警察が大規模な事件捜査で犯罪者を捜し出すことができるか確認するために、AFRを試験的に利用している」とコメントしています。

by Ludovic Bertron

イギリス内務省はBBCの取材に対して、2018年6月に新しい生体認識戦略を発表する予定とコメントし、「犯罪活動の変化や新しい要求に対応するために、警察を引き続き支援する」と述べています。

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in ソフトウェア,   セキュリティ, Posted by log1i_yk

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