2000人以上のサッカーファンが監視カメラを使った顔認識システムによって犯罪の容疑者と誤判定されていたことが判明
UEFAチャンピオンズリーグ(UCL)2016-2017の決勝戦が2017年6月にイギリス・カーディフで行われました。大規模なスポーツイベントはテロリストの標的になる可能性があるため、南ウェールズ警察は監視カメラを用いた顔認識システムで犯罪の容疑者を検出する計画を立てていましたが、実際に顔認識システムを利用した結果、2000人以上の人が容疑者とシステムに誤判定されていたと発表しました。
Facial Recognition Technology - South Wales Police
https://www.south-wales.police.uk/en/advice/facial-recognition-technology/
2,000 wrongly matched with possible criminals at Champions League - BBC News
http://www.bbc.com/news/uk-wales-south-west-wales-44007872
UCL2016-2017決勝戦の開催地となるイギリス・カーディフに約17万人のサッカーファンが訪れると予想されていました。南ウェールズ警察は、大規模なスポーツイベントはテロリストの標的になりやすいことから、街中に仕掛けられた監視カメラと自動顔認証システム(AFR)を用いて訪問者の顔をスキャンし、リアルタイムで犯罪容疑者データベースと照合を行っていました。
by Jeremy Segrott
UCL決勝戦当日、AFRによって犯罪の容疑者と判定された人物は全部で2470人にのぼりましたが、そのうち2297人が誤認だとわかりました。ただし、AFRで容疑者と判定された人物はすぐに逮捕されたわけではなく、容疑者リストと一致した警告が出た段階でAFRのオペレーターによる確認が行われ、さらに警察官が対象者を事情聴取することで容疑者かどうかを確認していたとのこと。そのため、AFRによる誤判定はあっても誤認逮捕は1件もなく、苦情も出ていないと南ウェールズ警察は発表しています。
by Elvert Barnes
南ウェールズ警察は、顔認識技術が一般の人を犯罪者と誤認してしまうのはUEFAやインターポールなどから提供された容疑者リストの画質が悪いためだと分析していて、顔認識技術のアルゴリズムはアップデートでより正確になったとしています。また、南ウェールズ警察署長のマット・ユークス氏はBBCの取材に対して「テロの脅威から人びとを守るために、大規模なイベントではAFRが必要不可欠ですし、その精度は技術の進歩によってますます上がっています。AFRを使って人びとに強硬手段をとるつもりはありませんから安心してください」と語っています。
一方で、市民団体「Big Brother Watch」はAFRなどの監視システムを廃止するよう呼びかけていて、イベントで2000人以上が犯罪者だと誤判定されたことに対して「不合理だ」とコメントしています。「Big Brother Watch」の主催者であるシルキー・カルロ氏は「リアルタイムの顔認識は市民の自由に対する脅威になるだけではなく、危険で不正確な政治的ツールでもあります。顔認識技術はすさまじい速度で一般市民を犯罪者と誤認し、介入する警察は彼らを容疑者として扱うのです」と主張しています。
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