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Amazon Echo Lookはファッションを正しく評価できるのか?


Amazon Echo Lookは、Alexaが搭載された自撮り用カメラで、ファッションチェックを行うのが特徴です。作家のカイル・チャイカ氏は、自分に似合うスタイリッシュな服を見つけるため、Echo Lookを購入しました。その後、いろいろな服を着てカメラの前でポーズを取り続けていたそうですが、ある日「Echo Lookで写真を撮ることは無意味なのではないか?」と感じてしまったとのことです。

What Does The Amazon Echo Look Mean For Personal Style? - Racked
https://www.racked.com/2018/4/17/17219166/fashion-style-algorithm-amazon-echo-look

Echo Lookは2種類の異なる服装の写真から、どちらの服がスタイリッシュに見えるかを評価します。Echo Lookのヘビーユーザーであったチャイカ氏は相当数の写真を撮影していたため、経験的にEcho Lookの「Style Check機能」のアルゴリズムを把握して評価の傾向を理解することができたとのこと。チャイカ氏が確認したStyle Check機能の評価は以下の傾向があったそうです。

・灰色よりも黒で統一した方が良い
・袖をロールアップした方が何もしないより評価が高い
・ブルーのジーンズの評価が非常に高い
・襟は立てた方が良い


Echo Lookは2種類の衣装を評価する時に、「Aの服は76%、Bの服は24%」というように結果をパーセント表示で示します。このとき、Echo Lookは得点をつけた理由やアドバイスを教えてくれるのですが、この説明がイマイチ理解できないことに、チャイカ氏は不満を感じています。実際にチャイカ氏のファッションをEcho Lookが評価すると、スコアを表示した後に「これをスタイリングするとより良く見えます」や「サイズを変えた方が良い」などを教えてくれたそうです。しかし、具体的に何をどうすれば良いかわからないため、チャイカ氏はいつも困惑していました。


その後、チャイカ氏は、Echo Lookが指し示すアドバイスをStyle Checkアルゴリズムの「好み」のようなものだと考えました。そして、チャイカ氏は将来的に人々の生活が、機械の好みに左右されるのではないかということに、危機感を覚えたそうです。

この「好み」は「味」の視覚的表現と考えることができます。過去に哲学者は「味」について、多くの考察を行いました。味は「食べ物の風味を知覚したり、物の品質を判断したりするなど、喜びを通した知の形態である」と定義されています。イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベン氏は、18世紀の哲学者モンテスキューの言葉を引用して「味は美しさを理由なしに楽しむもの」と述べています。モンテスキューはまた、味を「道徳的能力」「真実と美を認識する能力」と定義し「味は理論的な知識ではない。それは私たちの知らない法則の優れた応用である」とも述べています。

チャイカ氏は、モンテスキューが述べたことが重要であると考えており、「人は『味』を数値化したり計測したりできません。私たちは単に感じるだけです」と述べています。そして、チャイカ氏はEcho Lookのように、味の判断を部分的にアルゴリズムに置き換えることは、人間の一部の能力を奪い取ってしまうことになり、好ましくないと考えているそうです。

By shizhao

過去に雑誌の編集者や裁判所によって、ファッション文化がコントロールされたことがあります。哲学者のロラン・バルト氏は、あるファッション誌に「今年は青が流行色になっています」と書かれていたのを見て、「なぜ、その結論を導いたのか?」を調べたそうです。しかし、納得のいく根拠はどこにも見つからなかったため、バルト氏は「スタイルは不可解な方程式である」と述べ、ファッションに根拠はないと結論づけました。

また、2006年の映画「プラダを着た悪魔」では、主人公のアン・ハサウェイが着用していた青いセーターに対し、ファッション誌の編集長役のメリル・ストリープが「そのセーターは私の手で流行させたものだ」と断言するシーンがあります。この映画の通りであれば、何の根拠がなくても「世間に青が流行色だと思わせる」力を働かせてしまい、人々にファッションを強制できてしまうことになります。


では、このように人工的に作り上げられたファッションや流行の代わりに、Echo Lookが客観的な美を追究できるのでしょうか。Echo Lookのアルゴリズムは、Amazonでの購買状況を基にファッションを評価しています。たとえば、83.7%のユーザーが青いシャツを購入しているのであれば、Echo Lookは「今年は青が流行していて、青いシャツが良い」と考えます。つまり、ファッション誌の編集長の代わりに、Echo Lookが流行を判断してくれますが、流行に関係ない客観的な視点での美の追究はできません。

Echo Lookは個人のスタイルの追究よりも、普遍的な平均にマッチさせようとしていることから、チャイカ氏は「やはり自分自身でファッションを選択するのが安心です。しかし、人間の選択が良いと思うか、機械の選択の方が良いと思うかは、個人の主観で決まります」と述べています。

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in ソフトウェア, Posted by darkhorse_log

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