ハードウェア

軍事用レーザー技術の進歩で戦場はSF映画のようにレーザーが飛び交うようになるだろうという予測


SF映画やアニメなどフィクションの世界では、色とりどりのレーザー光線が飛び交う様子がしばしば描かれます。かつてはレーザー兵器は現実的ではないと考えられていましたが、アメリカをはじめ世界各国でレーザー兵器の研究が続けられた結果、ついにレーザー砲の発射実験が行われるにまで至り、「レーザーが飛び交う戦争も遠い話ではない」と技術・工学系の情報を扱うサイトIEEE Spectrumで予想されています。

Fiber Lasers Mean Ray Guns Are Coming - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/aerospace/military/fiber-lasers-mean-ray-guns-are-coming


2014年、アメリカ軍の輸送揚陸艦ポンスにレーザー兵器システムの試作品が搭載されました。このレーザー兵器システムは30キロワットの出力が可能で、1発1ドル(約110円)で発射できるというものです。また、2017年には攻撃ヘリコプター「AF-64アパッチ」にレーザー兵器を搭載する実験も行われました。


レーザー兵器の導入に積極的なのはアメリカだけではありません。中国の保利科技有限公司やイスラエルのラファエル、ドイツのラインメタルなど、各国の軍需企業が最終的にポンスに搭載されている試作型レーザーと同レベルのものが開発できるようにと研究を続けています。また、日本でも、北朝鮮からの弾道ミサイルのような短距離ミサイルの攻撃を防ぐためにレーザー兵器の研究を行っているといわれています。

例えば、イギリスの防衛科学技術研究所(DSTL)は2017年9月、「ドラゴンファイア」と呼ばれる50キロワット出力のレーザー兵器を3000万ポンド(約46億円)という費用で導入しています。既にドラゴンファイアの稼働実験は行われているようで、2019年には公開演習も予定されているとのことです。


しかし、やはりレーザー兵器の開発競争で先を行くのはアメリカです。アメリカの企業IPG Photonicsは、ファイバーレーザーという技術の開発で最先端をいっているといわれています。ファイバーレーザーは光ファイバーを媒質として増幅されたレーザーです。ファイバーレーザーを用いたレーザーシステムは「メンテナンス性が高い」「維持コストが安い」「振動に強い」というメリットがあるため、1990年以降のレーザー兵器は基本的にこのファイバーレーザーのシステムを利用しているとのこと。


冷戦時は大型の弾道ミサイルや核兵器の開発が主流となっていましたが、冷戦が終了して核廃絶の声が高まり、ミサイルやロケットは小型化の傾向にあります。2010年代の防衛で重要視されているのは小型ミサイル・ボート・ドローンの撃墜であり、フィクションに出てくるような巨大なレーザー砲は必要ありません。アメリカの航空機開発・軍需企業ロッキード・マーティンのレーザー・センサーシステム部門の上級研究員であるロバート・アフザルさんは「軍事用レーザーを開発する上で重要だった点は『小さいこと』と『強力であること』です」と語ります。


2017年、ロッキード・マーティンがアメリカ陸軍の宇宙ミサイル防衛司令部に納入した、60キロワット出力に調整したレーザーは、軍事用レーザーとしては最も高い効率でのレーザー出力を記録したとのこと。アメリカ軍は、陸軍の軍事トラックへは2022年までに100キロワット出力のレーザー兵器を、空を飛ぶ戦闘機へ10キロワットという比較的低出力のミサイル撃墜用レーザー兵器システムを導入する予定にあるといわれています。兵士が小型の光線銃を撃ち合うことはなさそうですが、映画やアニメのように、レーザー光線が戦場を飛び交う時代はすぐそこまで来ているといえます。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
米海軍が1発100円のレーザー砲発射実験を公開、強力な破壊力もプレステ感覚で操作可能 - GIGAZINE

攻撃ヘリコプター「アパッチ」にレーザー兵器を搭載する試験に米軍が成功、実戦投入は近いとの予想も - GIGAZINE

アメリカ海軍が軍艦にレールガンを搭載した中国に対抗するため約160億円の巨大レーザーキャノンを購入 - GIGAZINE

米軍はF-35戦闘機を含む多くの軍用機にレーザー兵器の搭載を狙っている - GIGAZINE

レーザー砲・レールガンなどの未来兵器をアメリカ海軍が実戦配備の見通し - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.