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無音で目にも見えないレーザー兵器は本格的に戦場に配備されるのか?


米海軍が1発100円のレーザー砲発射実験を公開しており、一時は忘れ去られていたレーザー兵器の存在が再び注目され始めています。低コスト・低エネルギーで対象物を破壊するレーザー兵器が戦場で本格的に活躍する日は来るのか、レーザー兵器の現状についてNature Newsがまとめています。

Military technology: Laser weapons get real : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/military-technology-laser-weapons-get-real-1.17613#/


航空宇宙大手ボーイングが製造する、米陸軍向けに開発したレーザー兵器を載せたHEL MDという車両があります。HEL MDに搭載されるレーザー兵器はアメリカとヨーロッパが近年開発したもので、ビームには光ファイバーを利用しており、安価で持ち運びが簡単なサイズ。レーザーの出力はキロワット(KW)の単位で計測されるもので、1983年にレーガン大統領が計画したアメリカの戦略防衛構想で想定されていたメガワット(MW)よりも小さい出力ですが、戦略防衛構想のときとは異なり、現実のものとして機能します。さらに、このレーザー兵器のテストは、従来の防衛予算より少ない予算で行うことができ、それでいてテロ集団からの攻撃を圧倒するには十分な力が示せることもポイントです。


一方で、米海軍は2014年の終盤に、テロリストと海賊が使う小型ボートを標的とする、Laser Weapon System(LaWS)と呼ばれるレーザー兵器を発表し、実際にLaWSを輸送揚陸艦「USS Ponce(ポンス)」に配備しました。

Laser Weapon System(LaWS)がどんなものかは、以下の記事が参考になります。

米海軍が1発100円のレーザー砲発射実験を公開、強力な破壊力もプレステ感覚で操作可能 - GIGAZINE


上記の2つの例からも分かるように、防衛と安全の専門家はレーザーを現実的なものとして受け取り始めており、アメリカのセキュリティセンター(CNAS)の先進技術専門家のポール氏は「半世紀の研究により、米軍はレーザー兵器を戦場に配備する転換点にある」と2015年4月1日に発表された報告書に記しています。

そもそも、アメリカが弾道ミサイルを迎撃するための照射レーザー・プロジェクトを開始したのは1996年のこと。ミサイルの燃料タンクをピンポイントで加熱して破壊し制御不能にする兵器を開発する計画でした。計画を実現するのに必要な「レーザーの出力可能なエネルギー」は電力で生成できないため、酸素-ヨウ素化学レーザー(COIL)が使用されました。しかし、ボーイング747に載せるにはCOILは非常にサイズが大きく、レーザーの燃料を運ぶスペースがボーイング747にほとんど残らないため、アメリカ国防総省が難色を示し、2012年に計画が中止されました。

ファイバーレーザーは1963年に開発され、1990年以降はほぼIPGフォトニクスによって開発が進められました。ファイバーレーザーは光ファイバーを使用するもので、DVDで使用される光よりも弱い光から光学エネルギーを集め、集めた光を30%以上増幅させレーザーに変換します。2000年初頭からIPGフォトニクスは溶接用の工業用のレーザーの開発を進め、軍事研究者の注目を集めていました。実際に、F-22F-35などを開発しているロッキード・マーティン社がIPGフォトニクスのレーザーを使い始め、2012年に1.5キロメートル離れたところから船やドローンなどを破壊できるADAMと呼ばれるレーザー兵器を発表しています。


ボーイング製HEL MDの場合、標的を不能にするために必要な燃料が非常に少量で済むため、10KWのレーザーを生成するエネルギーは車両のエンジンまたは発電機から得ています。また、コストの面から見ても、ロケットであれば1発10万ドル(約1200万円)のところ、ファイバーレーザーであれば10ドル(約1200円)以下で済むのも優れた点です。

レーザー兵器の復活は、高度な画像認識とファイバーレーザー自体の性能のおかげだと、ボーイングのエンジニアであるブラウント氏は強調します。高度な画像認識を使った追跡のシステムでおかげで、2014年5月に自律的に動くHEL MDのテストが成功しました。ただ、レーザーは無音で目には見えず、また標的が爆発するとも限らないので、人が分かるようにHEL MDに音を組み込んだとのこと。テストは成功はしましたが、レーザー兵器の攻撃力には問題があります。10KWのレーザー兵器では、どこでも配備できるほどの威力がないとのことです。


2012年に、ドイツのミサイル開発会社MBDAが40KWのファイバーレーザーを搭載したapproachで、2キロ離れた対象を破壊することに成功。MBDAのマーカス氏は従来のロケットなどの爆発物に比べ、レーザー兵器は標的以外への被害を最小限にすると主張していますが、レーザー兵器の本格的な運用には3年から5年はかかるだろうと予測されています。一方で、ロッキード・マーティン社は、走行中のトラックのエンジンを破壊することができるATHENAと呼ばれるレーザー兵器の存在を既に報告しています。なお、先進技術専門家のポール氏によると、霧が立ち込める場所では、ロケットなどの通常兵器がまだまだ有効であるので、5年から10年ぐらいたてば、レーザー兵器が米軍の一部で本格的に配備されるかもしれないとのことです。

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