世界初の政府発行仮想通貨「Sovereign(ソブリン)」をマーシャル諸島が発行、その狙いとは?
マーシャル諸島共和国(RMI)が、国家公認の仮想通貨「Sovereign(ソブリン)」を発行すると表明しました。自国仮想通貨Sovereignの発行は、RMIの国家としての生き残りをかけた国を挙げての一大事業のようです。
Media Kit: Marshall Islands issues world’s first crypto legal tender: ‘The Sovereign’ (SOV) | Blonde 2.0 | PR system
http://pr.blonde20.com/media-kit-rmi/
The Marshall Islands Is Most Recent Nation to Make Crypto an Official Currency
https://futurism.com/marshall-islands-crypto-official-currency/
RMIが仮想通貨「Sovereign(SOV)」を発行すると発表しました。RMIはこれまで自国通貨としてアメリカドルを用いてきましたが、新たに政府発行の仮想通貨SOVも並行して流通させる予定です。
RMIによると「SOVは法的な根拠を持つ政府発行による世界初の仮想通貨」だとのこと。すでにベネズエラが政府発行の仮想通貨「Petro」構想を明らかにしていますが、いまだ正式な法的根拠がなく廃案となる可能性があることから「世界初の政府公認仮想通貨はSOVだ」というのがRMIの主張です。なお、石油価格に紐付けて発行されるPetroと違い、SOVは市場によって価格が決定される自由貨幣であり、アメリカの経済制裁を受ける国ではなくアメリカの同盟国によって発行されると強調しており、Petroに対する優位性をアピールしています。
RMIによるとSOVはイスラエルの新興Fintech企業のNeemaによって開発されているとのこと。SOVでは「Yakwe」と呼ばれるフレームワークが導入されており、Bitcoinなどの仮想通貨に内在する匿名性の問題を解決している点が大きな特徴。Yakweフレームワークによって、仮想通貨の保有者が誰か、資金源は何か、という金融機関が求める情報が担保されるそうです。また、SOVの利用ではトークンはあくまで交換機能としてのみ働き、日常的に利用するアプリケーションは指紋認証によって金銭の交換が行われると述べています。
RMIは2018年後半にInitial Coin Offering(ICO)を通じてSOVを発行する予定で、RMIのデビット・ポール大臣はロイターに対して「SOVは24自治体に対して合計2400万単位発行する予定で、ICOに先だつ『前売り』はまもなく始まる」と述べています。
RMIがSOVをICOによって発行する大きな目的は、財政上の問題にあると見られています。かつてRMIの海域で水爆実験が行われた補償として、アメリカから毎年6000万ドル(約63億円)の対外援助を受けているRMIですが、この援助金は2023年には3000万ドル(約32億円)にまで減額される予定で、わずか5年以内に国家予算の3分の1を失ってしまうという財政危機にあるとのこと。RMIのヒルダ・ハイネ大統領は「SOVの発行は私たちRMI国民にとって歴史的な瞬間です。最終的にはアメリカドルとともに自国発行の通貨を使用することになります。これは、国家の自由を明らかにするための一つのステップです」と述べています。
RMIはSOVを発行して得た資金のうち、20%を核実験による被害を受けた市民への医療ケアにあて、20%を市民に直接配布して「普通のお金」と同じように市場に流通させる予定。さらに10%は気候変動問題への対策資金とし、残りの50%はRMI国立信託基金として積み立てる計画です。
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「仮想通貨を法定通貨にする」と発表したマーシャル諸島に「考え直すべき」とIMFが提言
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