仮想通貨マイニングに特化した「ASIC」の世界で激しい戦争が起こっていると仮想通貨「Monero」運営者が明かす
Bitcoin(ビットコイン)に代表される仮想通貨では多くの場合、ブロックチェーンの信頼性を高めるために「プルーフ・オブ・ワーク」(PoW)という作業が行われます。その際には膨大な量のコンピューターの処理能力が必要とされるため、その用途に特化した「ASIC」(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)と呼ばれるチップを搭載したマシンが用いられるのですが、加熱する仮想通貨の世界の傍らでは、このASICに関する激しい「戦争」が起こっています。
PoW change and key reuse | Monero - secure, private, untraceable
https://getmonero.org/2018/02/11/PoW-change-and-key-reuse.html
Monero Declares War on ASIC Manufacturers
https://www.ccn.com/monero-declares-war-asic-manufacturers/
世の中に数あるアルトコインの一つであるMoneroは、エスペラント語で硬貨やコインを意味する言葉から名付けられている仮想通貨です。プライバシーの高さを特徴とするMoneroは2014年に運用が開始されたのですが、このMoneroの開発者は2018年2月11付けのブログで「ASIC耐性を高めること」についての方策を発表しました。
開発陣が採ることにした方策というのは、通常は1年に2度が予定されているハードフォークを実施するたびにPoWアルゴリズムを変更するというもの。Moneroの一般ユーザーにとってはほとんど影響がないこのアルゴリズム改変ですが、ASICを使ってマイニングを行っている「ASICマイナー」にとっては、ハードフォークのたびにそれまでの手法が時代遅れにされてしまうという影響が及びます。また、もしこの対策が不十分であることが判明した際には、開発者は「緊急ハードフォーク」を実施することで、ASICマイナーによる「掘りすぎ」を防止するとしています。
また、いま仮想通貨の世界では、ASICを使ったマイニングによる「不公平感」が問題とされています。Moneroの開発チームが対策をとることになったのもこの不公平さをなくすことでより広く平等なシステムとし、本来は分散型である仮想通貨が一部のマイナーによって「独り占め」されることを防止することが狙いであるとのこと。また、ASICを生産しているメーカーの寡占化も問題視されています。中国にあるASICメーカーのBitmainはASIC生産のために膨大なシリコン母材「シリコンウエハー」の発注を行っており、その規模はGPUメーカー大手のNVIDIAをしのぐほどとなっています。
世界最大のBitcoinマイナーはマイニングマシン構築のためNVIDIAよりも大量のシリコン半導体を購入している - GIGAZINE
Moneroの開発チームが警鐘を鳴らしているのも、この一部のメーカーによるマイニング技術の独占状態です。今後もしMoneroのマイニングがBitmain製のASICによって完全に独占される環境が作られてしまったとして、そこでBitmainが拠点を置く中国政府が何らかの規制をかけてASICマイニングをストップさせる「キルスイッチ」を搭載することを強制するような事態が起こってしまうとすれば、Moneroはもはや中国政府による中央集権的な仮想通貨となってしまう恐れがあります。
そこでMoneroでは、メーカーが分散化しているGPUを使ったマイニングが行われるようにしておくことで、特定の勢力による恣意的なコントロールが行われない環境を作ることを目的に掲げているというわけです。Moneroの次のハードフォークは、2018年3月が予定されています。
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