数万台のコンピューターを導入して行われるBitcoinマイニングの現状はこんな感じ
By ApolitikNow
一時は1200ドル(約14万円)以上の高値で取引され、2014年の流行語大賞にもノミネートされたのが、仮想通貨の「Bitcoin(ビットコイン)」です。世界最大のビットコイン取引所であったMt.Goxが民事再生手続を申請してサイトを閉鎖したことで一時は信頼性が大きく失われましたが、Microsoftがビットコインでの支払いに対応したり、楽天グループも一部で支払いに対応したりと徐々にその信用を回復させてきています。
Bitcoin: The magic of mining | The Economist
http://www.economist.com/news/business/21638124-minting-digital-currency-has-become-big-ruthlessly-competitive-business-magic
ビットコインはPCで専用ソフト「Bitcoin-Qt」を走らせれば採掘(入手)することができる仮想通貨で、専用ソフトを動作させている人たちのマシンパワーによってビットコインシステムは維持されています。ビットコインシステムにはビットコインの埋蔵量に限界数が設定されており、発掘ペースを一定にする巧妙なアルゴリズムが採用されているので、ビットコインの採掘作業(マイニング)をおこなうユーザーの数が増えれば増えるほど、新たにビットコインをマイニングすることが難しくなっていきます。また、これはより高性能なCPUを搭載したコンピューターを使ってマイニングを行えば他よりも多くのビットコインが入手できるという構造であり、その結果ビットコインを採掘するためのコンピューターに多額の投資を行うユーザーまで登場する事態に陥りました。
スウェーデン北部にある巨大な元航空機格納庫は、12機のヘリコプターを格納するのに十分過ぎる広さの中に、4万5000台のコンピューターが所狭しと並べられています。これらのコンピューターは絶え間なくBitcoin-Qtを走らせており、ビットコインマイニングのためだけに用意されたものです。
これらのコンピューターは世界中の何百、何千、何万というコンピューターと競合しており、難易度の高い数学パズルを1つ解くたびにマイニングに成功した、ということで25ビットコイン(1ビットコイン200ドル換算で約59万円)が得られるようになっています。
世界中で巨額の投資が行われているビットコインマイニングですが、ビットコインのシステム自体を運営するような組織というものは存在しません。代わりに存在するのは、ビットコインの採掘専用ソフトの「Bitcoin-Qt」で、複数のユーザーがこのソフトを走らせることでビットコインシステムの維持ができるようになっており、ユーザーはシステム維持の見返りにビットコインを得られる(マイニングできる)というわけです。
Bitcoin-Qtを走らせるユーザーは、世の中に存在するビットコインのやりとりのすべてを記録したビットコインの取引記録である「ブロックチェーン」を更新し続けることとなります。なので、「ビットコイン泥棒」が盗んだビットコインを使用したい場合、このブロックチェーンを改ざんする必要があり、それにはビットコイン泥棒が独力でビットコインネットワークの50%以上を支える必要が出てくる、とのことです。
なお、ビットコインに関するデータの提供を行っているCoinometricsによれば、ビットコインネットワークの50%以上を支えるには、設備投資と電気代を合わせて4億2500万ドル(約500億円)程度の費用が必要とのことで、到底個人でまかなえるレベルの費用ではありません。
なお、ビットコインの取引記録である「ブロックチェーン」の詳細な解説は以下の記事にあります。
仮想通貨「Bitcoin」を完璧に理解するために知っておきたいことまとめ - GIGAZINE
従来の決済システムの場合、オペレーターは取引手数料から収入を得ますが、ビットコインの初期段階ではユーザー数が少なすぎて、ビットコインマイナー(ビットコインの採掘を行うユーザー)に十分な報酬を与えることができませんでした。しかし、ビットコインがよりポピュラーなものへと進化していったことで、取引数が増え、ビットコインマイナーが取引手数料から正当な報酬を得ることが可能になり、ビットコインマイナーはマイニングによる報酬を主な収入源にすることもできるようになっています。
ビットコインの価格は最盛期の17%程度まで下落しているにも関わらず、現在も複数のコンピューターを組み合わせた強力なマイニング用設備を拡充している企業は存在しており、ビットコインマイナーたちはコンピューターへの設備投資を続けています。
中国でも驚くべき規模でビットコインのマイニングが行われており、マイニング施設内の様子は以下の記事で見ることができます。
中国の郊外でも行われている大規模Bitcoinマイニングの現状とは? - GIGAZINE
ビットコインの誕生初期は個人でもマイニングが可能でした。しかし、ビットコインの価格が上昇するにつれて、個人でのマイニングは徐々に難しくなっていきます。ビットコインマイナーは複数のコンピューターを使用するようになり、複数人でマイニングを行うユーザーも出現すれば、マイニングに適した専用ハードウェアまで登場しました。
ムーアの法則にある通り、通常マイクロプロセッサは18カ月でその性能が2倍にまで進歩します。しかし、ビットコインのマイニング競争の激化でハードウェアのニーズが高まり、最盛期には6カ月ごとに性能が2倍のマイクロプロセッサが誕生する程でした。さらに、ビットコインマイニング向けのキャパシティをGH/s(1秒あたりのギガハッシュ)単位で販売する企業も登場。例えばGenesis Miningでは、1000GH/sを702ドル(約8万2000円)でレンタルできるようになっています。
多くの代替手段が存在するにも関わらず、ビットコインマイニング用の施設は建設されています。マイニングはエネルギー集約型工業のように大量の電気を消費するので、電気代が安くて安定して供給できる場所が好まれます。また、マイニング用のコンピューターは発熱するので冷却する必要があり、立地を考えると寒い場所ほど冷却用のコストが抑えられて良い、とのことです。
現在はビットコインマイニングに参加する人々の数が減少しており、クラウドベースのマイニング代行業やマイニング用のマイクロプロセッサの製造なども停滞気味。それでも多額の設備投資を行ったユーザーはマイニングを続けていますが、ビットコインの価格がどれくらいまで落ちるとマイニングが赤字になるのかを検討している人も多い、とのこと。
スウェーデン北部の航空機格納庫内に4万台以上のコンピューターを並べてビットコインマイニングに取り組んでいる「KnCMiner」は、北極圏に近いので非常に寒く、水力発電所のすぐそばに立地しており、現在のマイニング施設に求められる要素をきっちりと満たしています。KnCMinerのマイニング施設を管理するサム・コール氏は、マイニング市場の競合相手が少なくなることでマイニングがより効率的になることを期待しており、最近になってベンチャーキャピタルから1400万ドル(約16億4000万円)の出資を得ることにも成功しています。
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なお、スウェーデンにある「KnCMiner」のマイニング施設規模の設備を運用すると、1年当たり1.46テラワット時の電力量を消費するそうで、これはアメリカの平均的な家庭の13万5000倍に相当するそうです。
ビットコインの価格は現在も徐々に下がってきており、記事執筆中の段階では200ドル(2万3000円)前後を行き来しているような状況。なお、CoinDeskによる価格変動グラフを見てみると、ちょうど1年前の2014年1月には1000ドル(約12万円)を超える高値でビットコインが取引されていたことが分かります。
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