観客からは見えない「映画の着ぐるみ俳優」にスポットを当てたムービー


私たちが映画を見るとき、登場する俳優や脚本に注目する人は多いと思いますが、エイリアンやモンスターの「着ぐるみの中」に注意を向ける人は少ないはず。そんなエイリアンやモンスターの着ぐるみの中に入って演技をする「クリーチャー・パフォーマー」にスポットを当てたムービーが、YouTubeで公開されています。

Credited As: Creature Performer


「僕は8歳の時にモンスターが出てくる古い映画を見て、『これがやりたい!』と思ったんです」と語るのは、映画「エイリアン4」に登場するエイリアン役や「Mr.ズーキーパーの婚活動物園」のゴリラ役などを演じた、クリーチャー・デザイナーでパフォーマーでもあるトム・ウッドラフ・Jrさん。


クリーチャー・パフォーマーは映画に出演するれっきとした俳優ですが、特殊なコスチュームに身を包んで自らの顔や体のラインが画面に映らないことから、体の動きだけを使ってすべての演技をしなければなりません。他の俳優が取った行動に合わせてクリーチャーの演技をして、さらにクリーチャーの反応によって俳優が演技をするなど、出演者としての役割は顔が出ている俳優と同じ。


クリーチャー・パフォーマーは作中で炎に包まれるなど、過酷な役割を課せられることもあります。


トムさんは「自分がスーツの中に入ったキャラクターを、普通の俳優と同じかそれ以上の存在に仕上げることに誇りを持っている」と語りました。


「だって、それが仕事だからね」


トムさんによれば、「僕が8歳のとき、周りの友人も大人たちも誰一人としてクリーチャー・デザイナーやパフォーマーについて知らなかった」とのこと。


映画に登場するクリーチャーを作りたいと思っても全くの手探り状態で勉強するしか方法がなく、「ゴリラのスーツはどうやって作るんだ?」「顔のメイクアップはどんな方法で行われているんだ?」ということも、直感に従って手に入るだけの情報をかき集めることしかできなかったようです。


「でも、そんな苦しい日々が僕の糧となっています」


ある日、トムさんは映画「猿の惑星」の特殊メイクに携わった著名なメイクアップ・アーティストのジョン・チェンバースさんに手紙を送ったとのこと。


「ジョン・チェンバースは僕にとってのヒーローです」と語るトムさん。ジョンさんはトムさんに返事を送り、2人は対面を果たします。


トムさんはジョンさんを通じて得た映画関係者の知り合いと親しくなり、彼らの仕事場を見学させてもらって、ようやく映画の現場で使われる最先端のメイクアップ技術を知ることができました。


そしてトムさんは、ユニバーサル・スタジオの3Dムービー「ドラキュリアン」に参加することになります。


その現場でトムさんは「ターミネーター」や「ジュラシック・パーク」の特殊メイクアーティストとして有名なスタン・ウィンストンさんと共にモンスターのデザインをすることになり、かつてスタンさんがデザインした「ギルマン」という半魚人のモンスターが好きだったトムさんは非常に感激したとのこと。


トムさんは「ギルマン」のスーツを着る機会も得ることができたそうで、「あれがすべての始まりでした」とウットリとした表情で語ります。


ちなみに、「ギルマン」はこんな感じのモンスター。


トムさんはクリーチャー・デザイナーだけでなくクリーチャー・パフォーマーとしても活動しており、他の映画スタッフといろんなやり取りをし、さまざまな得がたい経験をしてきたとのこと。


「どれくらい動物で、どれくらい人間っぽく演じればいい?」と着ぐるみから顔を出した状態でディレクターに尋ねるトムさん。


「それはいい質問だ。だいたい、10のうち6くらい動物って感じで演じて欲しい」


クリーチャー・パフォーマーは厳重にその姿を隠され、外からは誰にもその姿を見ることはできません。


着ぐるみの中に入っての撮影初日、着ぐるみの中に入った状態では普通に歩くことですら非常に困難であり、トムさんはナーバスになっていたとのこと。


「歩かなきゃ、歩かなきゃ……あれ、そもそも僕はどうやって歩いてたんだ?」


「でもそれが自信になった」と語るトムさん。


トムさんはクリーチャー・デザイナーとしてクリーチャーのデザインを行う一方で、パフォーマーとして着ぐるみの中に入るチャンスを常にうかがっているそうです。


「当然、新しくてエキサイティングな着ぐるみには僕が入りたいです」


さまざまな着ぐるみの中でもトムさんはゴリラの着ぐるみに思い入れがあるそうで、「ゴリラは僕にとって、非常に近しい存在なんだ」とゴリラへの愛情を語ります。


ゴリラらしい仕草を演じるため、トムさんは世界中の動物園に行ってあらゆるゴリラを観察してきたとのこと。


トムさんはゴリラを演じるに当たって、人間とは違いつつも人間との間に心が通っているかのような、リアリティがある演技を追求しているそうです。


「ゴリラは表情でも感情を表します」


トムさんはゴリラの着ぐるみに表情を与えるべく、顔の中にいくつものモーターを設置。


4人のスタッフがトムさんが演じるゴリラの仕草に合わせて、コントローラーでゴリラの表情を動かします。


ゴリラの仕草と表情をリアルタイムで連動させることにより、ゴリラの感情がまざまざと伝わってきます。


「ゴリラの表情を動かすスタッフと僕は、いわば1つの『バンド』です。それぞれがお互いの役割を理解し、ギター・ベース・ドラムを演奏します」


「そして僕たちは音楽を奏でるんです」と熱を入れて話すトムさん。


「25年もこの仕事をやってきたけど、エキサイティングなことの連続です。たとえ僕の姿が観客からは隠されていようと、クリーチャー・パフォーマーの仕事に飽きるなんてありえません!」


トムさんが持つクリーチャー・パフォーマーとしての誇りと熱意が伝わってくるムービーでした。

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