AI・金融・小売り業など各分野のエグゼクティブが予測する「2018年に起こるであろう18のこと」
By Chris Blakeley
日々進化を続けるコンピューター技術、特に日進月歩の著しい人工知能(AI)の分野では、1年も経てば状況は大きく変わります。そんな世の中の動きを予測することは簡単ではないはずですが、AIや金融、小売り業、IoT、ドローンなど幅広い分野にわたる18人のエグゼクティブが予測した「2018年に起こるであろうこと」がスタートアップビジネスなどに特化したメディアInc.comによってまとめられています。
Here's What 18 Top Executives Say Will Happen in 2018 | Inc.com
https://www.inc.com/christina-desmarais/18-tech-predictions-for-2018.html
◆01.2018年は音声ユーザーインターフェース(VUI)の年になる
(モバイルアプリケーションの設計と開発のコンサルティング会社ArcTouchの共同設立者Adam Fingerman氏)
音声アシスタントの「アレクサ」を登場させてから3年後、Amazonはスマートスピーカーの「Echo」を発表しました。最初は誰もが好奇心で見つめていたEchoですが、すぐにアメリカ国内で爆発的なヒットとなり、そのあとをGoogle HomeとAppleのHomePodが追いかけています。Amazonはその後、アレクサをスマートホーム機器や自動車関連などの分野にライセンス提供を始めており、実際にアレクサが組み込まれた製品が徐々に登場してきています。
人々は次第に携帯電話やスマートホーム、自動車などに対して声で指示することに快適さを覚えるようになっています。私は今のスマートフォンのような「グラフィカル・ユーザー・インターフェース(GUI)」がすぐになくなると言うつもりはありませんが、2018年には声がデジタル世界で最も重要なインターフェースになることについてほぼ疑問はありません。
By Ken M Erney
◆02.大手小売業者はAmazonの侵攻を食い止めるために、アメリカじゅうで店舗の閉鎖を進め、電子商取引のサプライチェーンを自動化することに資金を投じる
(グローバルな商品取引を可能にするロジスティクス技術会社Havenで設立者でCEOのMatthew Tillman氏)
大手小売業者は彼らが持つサプライチェーンの重要性を長年にわたって認識しておらず、今や消費者はその非効率的な購入方法を受け入れなくなっています。最先端の競争力を確保するために小売業者が必要なのは、サービスを提供する拠点を減らすことだけが唯一取るべき最初のステップです。そして第2のステップは、サプライチェーンのコントロール性を高め、アウトソーシングの比率を低めること。大規模小売業者はこの面における不備を2018年に認識し、他社との差別化要因としてロジスティクスの内製化を進めるでしょう。
◆03.代替的な決済方法が拡大し続ける
(決済関連ソリューション開発起業 Verifone北米社長 Joe Mach氏)
世の中では常に新しい決済方法が生みだされ続けています。モバイル決済などの新しいテクノロジーの出現にも適応できるように迅速さを保ち続けることが重要です。Apple Payは毎週100万人以上の利用者がいると見られています。WeChat PayやAlipayのようなクラウドベースのウォレット機能が国境を越え、支払いのエコシステムを破壊し続けています。ユーザーはそのようなサービスを受け入れ続けるので、サービスを提供する側も、ウェアラブル端末を含む新しい決済機能への適応に準備しておく必要があります。
◆04.MySpaceが復活するかもしれない
(シラキュース大学でマスメディア関連のプログラムを提供しているニューハウススクールの助教授、Jennifer Grygiel氏)
いま社会では本や雑誌のようなレガシーメディア・アナログメディアが復活の勢いを示しており、より多くの「リアルな」体験やイベント、他社との交流への関心が強まっています。人々はFacebookを10年やってきて、今や人同士の交流やつながりに飢えています。今このタイミングでMySpace(2013年からは「Myspace」表記)が復活しても驚きではありません。アメリカでも有数の資産家であるコーク兄弟の資金が投入されたTIME誌の買収劇により、TIME傘下のMyspaceもその影響を受けています。Myspaceの2018年の復活は、誰もが予想していないサプライズになるかもしれません。
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◆05.「モノのインターネット (IoT)」のセキュリティ競争が加速する
(デジタルアイデンティティのマネジメントソリューションを提供するForgeRock副社長 Eve Maler氏)
近年、IoT機器に対するマルウェア攻撃が多く行われるようになっており、そのアイデンティティ・マネジメントおよび認証の確実性が注目されています。個別の機器に対する脆弱性を悪用する「Reaper」と呼ばれる最新型ボットネットの出現により、IoT機器のセキュリティ競争が加速しています。2018年にアイデンティティがより強固に認証されるようになると、Reaper型の攻撃も増加することになるでしょう。
◆06.中国が世界の電子商取引および決済の生態系において、さらに重要な役割を果たし続ける
(オンライン送金とデジタル決済サービスを提供する金融サービス会社PayoneerのCEO、Scott Galit氏)
中国政府は、開放性と革新性の向上に焦点を当てており、ますますグローバル化していくデジタル社会、つながる社会で主導的役割を果たそうとしています。中国の中産階級が驚異的なスピードで成長し、毎年送り出されるエンジニアの数が西洋の世界全体よりも多くなっていることから、2018年には中国は「生産国」から強力な消費者とイノベーターを持つ活況なマーケットへと進化することが見込まれます。世界中の企業は、製品やサービスを中国市場に投入するための努力を加速させ、中国の企業はますます世界的に重要な役割を果たします。
◆07.サプライチェーンはよりスマートになる
(オンラインビジネス成長の支援サービスを提供するCommerceHubのCEO、Frank Poore氏)
「小売業者」と「サプライヤー(供給業者)」の区別は、2018年に不明瞭になり始めます。小売業者とブランドは商取引ネットワーク内に分散している在庫商品のデータをシェアできるようになり、消費者はどのポイントで購入したとしても、より迅速で安価に商品を手に入れて恩恵を得ることができるようになります。突き詰めると、従来の小売業者/供給業者の関係が進化して消費者のエクスペリエンスが向上することで、全ての当事者にメリットが生じるでしょう。
By Caribb
◆08.現実のビジュアルコンテンツの需要は増加し続けるでしょう。
(動画、画像、音声のストック素材を提供するStoryblocksのCEO、TJ Leonard氏)
物語を構築して伝える「ストーリーテリング」は基本的にはまだ「願望」の段階ですが、私たちが目指していることはここ数年でかなり変化しており、まもなくメディアの状況に反映されることになります。ますます「つながり」が強まりを見せる都市の世界では、消費者やクリエイターは従来のようなリア充的な理想から離れ始め、その代わりにもっと実際の生活を確かに反映するコンテンツを求めるようになります。
◆09.消費者は、ヘルスケアブランドに対して最大限のカスタマー・エクスペリエンスを提供する責任を課す
(グローバルにクリエイティブ関連コンサルティングを行うLippincottのCEO、Rick Wise氏)
従来からの大企業は、カスタマー・エクスペリエンスに対して投資し、改善することで、シンプルで透明性の高いオンデマンド型エクスペリエンスに対する顧客の期待の高まりに対応する必要があります。すべての医療機関は、上昇を続ける利用者からの期待に確実に伝えるために、現在のシステムとプロセスを再評価する必要があります。業界の統合が加速する際においては、ヘルスケア企業は混乱を巻き起こすのではなく、顧客にとってより強力なブランドエクスペリエンスをもたらすような方法でブランドを結集する方法に細心の注意を払う必要があります。これはヘルスケアブランドにとって、従来のヘルスケア分野だけでなく、より全体的な健康やそれによって生みだされる幸福を支援するという機会となります。
◆10.新しい税制は、ブランドがその従業員と顧客に対する姿勢を示す良い機会になる
(デジタルマーケティングおよび広告会社DXagencyのCEO、Sandy Rubinstein氏)
新しい税制と財政的インセンティブは、ブランドとマーケティング担当企業にとって、その従業員と顧客に対してどのような利益を与えられるのかを示す最も好ましい機会になると考えています。AT&TやComcast、Wells Fargoのような企業は、企業の貯蓄を再投資し、最低賃金を引き上げ、従業員にボーナスを渡す計画を発表しました。次のステップは、サービスの価格を下げて顧客の費用を節約することです。このタイプのメッセージは、ブランドに対するロイヤルティを高め、収益をさらに増加させることにつながります。
By 401(K) 2012
◆11.「CMO」がついに「CEO」に次ぐ最も重要な「Cのつく役職」になる
(データドリブン型の意志決定方法を提供するThe Trade DeskのCEO、Jeff Green氏)
現代のマーケットでは、あなたが靴や着るもの、コンピューター、車を購入するときにどのブランドを選ぶのかは、マーケティングによって影響を受けています。データの裏付けなしに広告に費用を投じることはもう終わりを迎えようとしています。そして2018年、それはついに終わりを迎えるでしょう。CMO(Chief Marketing Officeer:最高マーケティング経営者)が行動を起こし始めています。彼らはデータを有効に活用しており、広告の費用対効果を過去以上に大きくしています。データドリブン型のデジタル時代に適応できない企業は、2018年に多くの被害を受けるでしょう。そして、データドリブン型のCMOがいる企業は、進化していない企業からシェアを奪います。
◆12.ドローンがさまざまな保守コストを低減する
(GEグループの設備・ソリューション提供子会社GE PowerのCDO、Steve Martin氏)
エネルギー産業におけるドローン(無人航空機)の世界的需要は、2017年から2025年の間に累積的な市場価値で4470億ドル(約50兆円)に達すると予想されています。ドローンはコンシューマーガジェットから出荷ボット、そして今や工業用ツールに進化しました。GPSやレーダー、赤外線カメラなどを使った空撮ビデオ検査技術を用いることで、ドローンは長距離送電線を遠隔監視したり、停電の原因となる障害物を直接取り除いたりすることもできます。2018年に電力会社は、アセットパフォーマンス管理のような設備メンテナンスと、現場の作業員や指示されたメンテナンスを完了させることができるドローンを結びつけるアプリケーションを電力網における主要資産として取り入れる見込みです。またドローンは、AIを有効にした分析を使用して、前例のないデータをユーティリティに提供してワークフローを合理化し、問題を解決して顧客に付加価値をもたらしつつ、電力会社にとって情報のある価値を届けることでオペレーションの向上やコスト削減、問題の事前対策などをもたらします。
◆13.AIとIIoTは、電力業界のデジタル変革を推進する
(GE Power Digital傘下のNeuCo元CEOで、現在は経営幹部であるPeter Kirk氏)
電力業界などの資産集約型産業は、機械から集められる膨大な量のデータを活かすことで、工業用インターネットやAIなどの新しいテクノロジーからの価値を引き出す初期段階にあります。発電設備から集められるテラバイト級データをAIに処理させることで、機械の動作におけるパターンを認識し、より望ましい結果を得るための変更を可能にします。2018年には、IIoT(インダストリアルIoT)、AI、およびデジタルツインの産業界全体にわたる継続的な成長、導入、および協働が、基本的なメンテナンスプロセスを自動化することになるでしょう。このコラボレーションは、デジタル化オペレーションに対する人的・機械的アプローチを作成することで、人的資産を解放して優先度の高い運用問題に集中させ、電力業界全体に大きく影を落としている運用および保守予算のコストを削減します。
By Oran Viriyincy
◆14.大企業も中小企業も人工知能(AI)と機械学習に投資する
(初のiPad電子カルテを構築したdrchronoの共同設立者/COO、Daniel Kivatinos氏)
AI技術は、いくつかの点でヘルスケア業界に大きな影響を与えます。例えば、AIは患者の診断を支援し、大規模な医療データセットから学び、より深いレベルの医学についてもっと理解する手助けとなります。近い将来、AIは放射線技師よりCTスキャンとX線を読みとり、放射線診断レポートを作成するコストを削減することになるでしょう。AIは、患者が答えた一連の質問に基づいてどの専門医に受診するかを患者が決定するのを助けるかもしれません。さらに、医師は時間の経過とともに大量の患者のカルテを作成し、AIは患者の症状をもとに過去の症例と関連付けることができます。これは、従来の方法では難しかったことです。また医療費請求では、AIを使用することにより、クレーム審判がより合理化される可能性があります。
◆15.より多くの企業がAIをIoTネットワークに統合する
(IoT、クラウド、ビッグデータなどの分析ソリューションを提供するHitachi Vantaraで商品戦略を統括するBrad Surak氏)
ボットやアルゴリズムなどを用いるAI技術が、教師なし学習、自動生成トレーニング、エッジデバイス内での強化学習などの限界を押し上げることになります。IoT環境では、これらの自動化されたボットとアルゴリズムにより、各端末がよりスマートになり、学習することができるようになります。その結果、ITシステムとOTシステムが密接に連携していくこととなります。このコンバージェンス(集約)により、組織はIoT成熟モデルを向上させることができるようになります。
◆16.住宅が自分で自分を売るようになる
(インタラクティブ型アプリ対応の不動産会社Realiの創設者兼CEO、Inher Haller氏)
テクノロジーの発展により、これまで以上に簡単に家を売買し、住宅ローンの承認を得られるようになっています。自動車を検索してオンラインで購入することが自動車業界を変えたように、自宅の売買プロセスも合理化と変化が進んでいます。住宅価格の高騰と新造住宅の不足により、バーチャルなステージング(物件案内)や消費者主導型のインサイト取得などのテクノロジーがもたらされます。不動産業界は2017年に伝統的な手数料モデルから決別したため、バイヤーと売り手の不動産取引の変化が引き続き見られます。私たちは現在、業界の転換点にあります。
By Lynn Friedman
◆17.モバイルテクノロジーは移動する消費者により多くのユーティリティーを提供する
(家族向けロケーションおよび安全運転サービスを提供するLife360の設立者兼CEO、Chris Hulls氏)
過去10年間、モバイル空間での大きな成長が見られましたが、これまでの流れはソーシャル・ネットワーキングのようなサーフェス・レベルの利用をモバイルに提供する既存技術の移転でした。現在では、ハイテク企業がモビリティを核として、移動中の消費者にモバイルならではの日常的な価値を提供するように変化しています。モバイル技術は、「自撮り」や「SNS」などのユーティリティを超えて、より基本的な方法で人生を改善します。UberやLyftのようなモバイルアプリでは既にそれが確認されています。安全性やセキュリティなどの他の業界でも展開されています。
◆18.ブロックチェーンは旅行業界で成長する
(AI技術に基づいたパーソナル・トラベル・アシスタントを提供するMeziのJohnny Thorsen氏)
ブロックチェーン上で契約を締結するスマートコントラクトとAIチャットボットテクノロジーを組み合わせることで、旅行を提供し、消費する全く新しい方法が考案され、開発が進むでしょう。ブロックチェーンは2017年に大きな関心を集めました。既にCryptoCribsのようなAirbnbに競合するサービスプロバイダーは出現していますが、旅行業界はホテルの空き部屋などの「旅行在庫」をこれらのプラットフォームにつなげる第一歩を歩み出したばかりです。この技術が広く利用され、ブロックチェーンのチャンネルからの予約がある程度のボリュームになるまでには、あと1〜2年はかかるでしょう。
CryptoCribs
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