ソフトウェア

AI技術の最先端を行くNVIDIAはAIの未来をどのように予測しているのか?


半導体メーカーのNVIDIAはハードウェアのみならず、機械学習や人工知能(AI)などソフトウェア面の開発も積極的に行っています。そんなNVIDIAの各部門ヴァイスプレジデントが、「将来的にAIはどのように応用されていくのか」を予測しています。

2022 Predictions on How AI Will Impact Global Industries | NVIDIA Blog
https://blogs.nvidia.com/blog/2021/12/07/2022-predictions-ai-global-industries/


◆ブライアン・カタンザロ氏(応用深層学習研究担当ヴァイスプレジデント)
カタンザロ氏は2020年に「会話型AIがゲームの没入感を高めるために、リアルタイムにゲームプレイに介入してキャラクター主導のアプローチに肉付けするような使われ方をするだろう」と予測していたとのこと。しかし、実際はビジネス向けに応用されるケースばかりで、ゲームのものではなかったとカタンザロ氏は述べています。

カタンザロ氏は「企業は、自然言語処理を使ってより効率的かつ効果的に仕事ができるようにするため、新しい会話型AIツールの導入を競うでしょう。音声合成は、2022年には人間の声と同じように感情的で説得力のあるものになるとされており、小売業や銀行、ヘルスケアなどの業界が顧客をよりよく理解し、よりよいサービスを提供できるようになると思います」と予測。また、企業は顧客が話す内容の文脈や感情を理解するためにAIを駆使するようになるだろう、とカタンザロ氏。さらにプログラマーの仕事の効率化を支援する「Github Copilot」のようなツールの採用も加速すると述べています。

GitHubにソースコードの「続き」を自動で補完する機能「GitHub Copilot」が登場、OpenAIの協力により - GIGAZINE


◆サラ・タリク氏(自動車担当ヴァイスプレジデント)
タリク氏は「プログラム可能な車が登場し、一度購入した車が価値を失うという時代はもうすぐ終わります。新しいアプリケーションやサービスを無線による自動アップデートでサポートできる余裕のあるソフトウェア定義のアーキテクチャを構築することで、運転体験を刷新しようとする自動車メーカーが増えてくるでしょう。自動車は、時間の経過とともに、より良く、より安全になっていきます」と述べています。

さらにソフトウェア定義のアプローチへ移行することで、日々の運転におけるストレスや煩わしさの解消にもつながる、とタリク氏。AIアシスタントが個人的なコンシェルジュとなるほか、車両の乗員は常にAIが提供するサービスにアクセスできるようになり、リアルタイムの会話型AIを使って警告や車両の制御などを行うことができるようになると予想しています。さらに自動車メーカーは、エンド・ツー・エンドのスタックをより多く検証するためのシミュレーション、ディープニューラルネットワークモデルのトレーニングに積極的に投資を行うようになり、長期的な視野に立った設計が行われるようになるとタリク氏は述べました。

◆レブ・レバレディアン氏(シミュレーション技術担当ヴァイスプレジデント)
レバレディアン氏は「仮想世界を表現するための3D規格が進化します」と断言。「開発者や企業、個人のユーザーは、インターネットの黎明期にも似た、オープンスタンダードの基礎に貢献することになるでしょう。Universal Scene DescriptionglTFなどの標準規格は、Web 3.0やデジタルツインの基となる需要を満たすため、急速に進化していきます」と予想しています。

さらにレバレディアン氏は「2022年には高度なニューラルネットワークを訓練するために、正確な物理シミュレーターを使って仮想世界から生成されたデータが用いられるケースが爆発的に増加するでしょう」とも述べています。

◆キンバリー・パウエル氏(ヘルスケア担当ヴァイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー)
パウエル氏は、AIによって創薬技術が飛躍的に向上すると予測しています。たとえばGoogle傘下のAI企業であるDeepMindが、タンパク質の立体構造解析用アルゴリズム「AlphaFold」をオープンソース化したことで、タンパク質の構造解析データが爆発的に増加し、AIによる化学物質の精製によって新しい医薬品発見のチャンスが100万倍に増加したと述べています。

人工知能企業DeepMindがタンパク質構造解析アルゴリズム「AlphaFold」をオープンソースで公開、誰でも利用可能に - GIGAZINE

by OIST

また、AIによってSaaS(Software as a Service)型の医療機器やソフトウェアが増え、コストの削減が進み、自動化とアクセス性が向上すると予想。ハードウェアを提供するだけでなく、リモートでアップグレードすることで、医療機関は機器を導入してから長く使い続けられるようになるとしています。

◆ロニー・バシシュタ氏(通信担当シニア・ヴァイスプレジデント)
バシシュタ氏は、5G(第5世代移動通信システム)にAI技術が組み合わさることで、特定のアプリケーションに専用の通信帯域を割り当てるネットワーク・スライシングや、無線通信環境での超低遅延、セキュリティとアイソレーションの向上などが実現できると述べています。さらに、個人の通信だけではなく、工場の自動化やロボットの管理、自動車関連のシステム、物流システムなどでも新しいユースケースを生み出すと、バシシュタ氏は予想しました。


◆ケビン・ダイアーリング氏(ネットワーキング担当シニア・ヴァイスプレジデント)
「データセンターは、新しいコンピューティングの単位です。これまで1台のコンピューター上で動いていたアプリケーションは、もはや1つの箱に収まりません。新しいコンピューティングの世界では、ソフトウェア定義とハードウェアアクセラレーションがますます重要になっています」とダイアーリング氏。AIの活用が進むと、ネットワークはコンピュータとして機能する多数のサーバを結ぶ高速道路のようになり、ソフトウェア定義のデータ処理装置をつなぎ合わせることでデータセンター規模のクラウドコンピューティングが求められるだろうと述べています。

また、ダイアーリング氏は、利用者や端末、エリアなどを無条件に信頼しない「ゼロトラスト」という考え方がセキュリティで当たり前になり、企業のシステムに接続されているすべての人が認証され、悪意のある攻撃者がネットワークに侵入しないかどうかを常に監視しなければならなくなるとしています。「データはIPsecTLSを用いて暗号化し、各ノードは高度なルーターやファイアウォールで保護する必要があります」とダイアーリング氏は述べました。

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in ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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