AMDの前・Radeon部門責任者がIntelへ移籍、Intelは高性能GPU開発に本気なのか？

AMDでGPU「Vega」アーキテクチャの開発を主導したRadeonチームのトップが、ライバルのIntelへ電撃移籍しました。GPU分野でAMDやNVIDIAに後れを取るIntelが巻き返しを狙っているようです。

Raja Koduri Joins Intel as Chief Architect to Drive Vision across Cores, Visual Computing
https://newsroom.intel.com/news-releases/raja-koduri-joins-intel/

2017年11月6日にIntelはCPU内蔵GPUにライバルAMDのRadeonグラフィックを採用することを発表しました。AMD製CPU(APU)に対してGPU性能で劣るのを補うために、IntelがRadeonグラフィック統合の「Core H」シリーズを投入することになったことは、市場関係者に少なからず衝撃を与えています。

IntelがAMD製カスタムGPU搭載の第8世代「Core H」プロセッサを発表 - GIGAZINE

そのIntelが2017年11月8日に、AMDのグラフィック部門Radeon Technologies Groupの前責任者で、新アーキテクチャ「Vega」の開発を主導したRaja Koduri(ラジャ・コドゥリ)氏を、Core and Visual Computing Groupの上席副社長および新設するdrive edge computing solutions部門の責任者として招聘することを発表しました。AMDのGPU開発部門のトップだったコドゥリ氏は、「年内中は休職する」ことが2017年9月に発表されていましたが、コドゥリ氏はAMDを退職しライバルのIntelに迎えられることになったというわけです。なお、コドゥリ氏のAMD退社にともなって後任のRadeon Technologies Group責任者が見つかるまでは、AMDのリサ・スーCEOが暫定的にトップに就く予定です。

IntelのClient and Internet of Things Businesses部門代表のMurthy Renduchintala博士は、「ラジャ氏はグラフィック・システムのアーキテクチャに関して世界で最も経験がある人物で、革新的かつ業界で尊敬されるべき存在です。そして、Intelに加わることになった技術トップとして最も優れた人物の一人と言えます」と述べ、コドゥリ氏のIntel加入を歓迎しています。

Intelが開発するGPUは、CPUに内蔵されるiGPU(integrated GPU)としては必要十分な性能を持つため、ノートPCなどを中心に高いシェアをとることに成功していますが、グラフィック処理を行う専用のGPUであるdGPU(discrete GPU)としてはライバルのNVIDIAやAMDに対抗できる製品を打ち出すことができていません。現在、コンピューティングの主力分野が、デスクトップPC/ノートPCなどの端末から、ディープラーニングなどの機械学習の活用に移りつつある中、dGPUの需要はますます拡大することが予想され、相対的にはCPUに対してGPUの重要性が増すとみられています。このため、GPU分野の強化はIntelにとっては喫緊の課題であり、AMDのGPU開発トップを迎え入れることで弱点を補強する狙いが見えます。

とはいえ、コドゥリ氏が着手する新アーキテクチャが完成し市場に投入されるまでには4年程度の開発期間が必要であると予想されることから、NVIDIAとAMDが二分している高性能dGPU市場の勢力図がすぐに大きく変わることはなさそうです。ただし、将来的にIntelがdGPU分野に進出する可能性はなきにしもあらず。少なくとも、RadeonブランドのiGPU統合CPU「Core H」の投入＆AMDのGPUトップの招聘という直近の動きを見れば、IntelがGPU分野の強化に本腰を入れていることは明らかであり、今後、さらに重要性を増すディープラーニングなどに向けたGPU市場の覇権争いが激化することは間違いなさそうです。