映画「LEGO ムービー」にファンの自主制作映画が与えていた影響とは?
2014年にレゴを題材とした映画「LEGO ムービー」が公開されました。まるで、うちにあるレゴブロックや人形たちがそのまま動いているような映像には驚かされた人もいたと思いますが、あのような映画ができあがるまでには、実はファンの作った映像の存在も大きく影響を与えていました。
How fan films shaped The Lego Movie - YouTube
レゴ初のCG映画として作られたのは2001年の「Jack Stone」という作品です。
VHSでおよそ20分ほどという作品で、キャラクターたちはCGで描かれ、自由自在に動いているところが特徴。
それから13年後に公開された「LEGO ムービー」は「Jack Stone」とは大きく異なる、「いかにもレゴブロック」という雰囲気の作品でした。
なぜこのような作品が生まれたのかという話が、「ガフールの伝説」「300」などを担当してきたVFX制作会社・Animal Logicでデザイナーを務めるGrant Freckelton氏らの話によって解き明かされていきます。
Animal Logicはクリス・ミラー氏、フィル・ロード氏と組んで「LEGO ムービー」を生みだしました。
ミラー氏とロード氏が目指したのは、観客が実写とCGの区別がつかなくなるようなもの。その狙いは見事に的中し、映画公開前から「これはCG?ストップモーション?」と話題になりました。実際のところは99%がCGアニメーションなのですが、ストップモーションへのリスペクトを込め、そのルールやスタイルに従って作られているというこだわりの作品です。
過去、レゴを題材にした映画としては2003年の「Bionicle: Mask of Light」、2005年の「Lego Star Wars: Revenge of the Brick」、2013年の「Lego Batman:The Movie - DC Super Heroes」など、いくつもの作品が生み出されてきました。
こうした作品と「LEGO ムービー」の違っていたところは、従来の作品ではレゴブロックであるという点が無視されることがあった点です。レゴブロックはプラスチック製なので伸びたり曲がったりしませんが、映画の中ではキャラクターたちは現実のおもちゃよりももっと柔軟に動いていました。
たとえば「Lego Star Wars」では顔のパーツが動いています。もちろん、レゴの人形の顔は変形しません。
それが「LEGO ムービー」では、すべて現実のレゴのパーツをそのまま用いているかのように描写されています。
「LEGO ムービー」では「パーツは曲がらないし伸びない」という原則が守られているので、たとえばキャラクターが着替えをするときはパーツを衣類のように伸ばして着せるのではなく、体のパーツが裸から着衣のものに入れ替えられています。
しかし、このルールを守るということはいろいろな制限を受けるということにつながります。
ところが、スター・ウォーズに出てくるR2-D2やBB-8と同じように、制限の中で動かすことでキャラクターがより魅力的になったのだそうです。
実は「レゴの映画」として振り返ると、その歴史は1973年、デンマークに住むLars&Henrik Hassingという10歳と12歳のいとこが作った「En Rejse Til Manen(Journey to the Moon)」まで遡ります。
この作品は2人が曾祖母の結婚50周年を祝うために作ったものだそうで、レゴを使ったストップモーション映画の最初の作品だと考えられています。以後、レゴを使った「ブリックムービー」が作られるようになりました。
「On Ones」は1秒間24コマのことで、急な動きや滑らかな動きが求められるときに使われ、基本は「On Twos」と呼ばれる、1秒間に12コマの映像が用いられました。
「Journey to the Moon」を作った2人はレゴファクトリーの見学ツアーに招待され、大量のレゴを贈られました。
しかし、レゴは必ずしもファンの作ったブリックムービーに好意的だったわけではないそうです。その例が、1985年~1989年に当時ティーンエイジャーだったLindsay Fleayが作った「The Magic Portal」という映画。Fleay氏は映画祭やコンペに出品する前にレゴに連絡を取ってOKをもらっていました。ところが、レゴは後からこの判断を覆して「7日以内にすべてのフィルムを処分するように」と迫りました。最終的に、レゴは再びOKを出すのですが、Fleay氏は映画祭やコンペを逃した後でした。Fleay氏はのちに、「LEGO ムービー」を制作したAnimal Logicで働いていた時期があるそうですが、実際に「LEGO ムービー」が制作よりも前に退職してしまっていたとのこと。しかし、彼もまたブリックムービーの世界に大きな影響を与えました。
そのため、「LEGO ムービー」では、実写パートで少年が「The Magic Portal」と書かれた筒を持っているシーンがあったりします。
「LEGO ムービー」に出てくるブロックの数は1508万330個。
そしてミニフィギュア(キャラクター)は182体。
デザインのモックアップは「Lego Digital Designer」というフリーソフトで作られました。
ブロックの汚れや傷などはMayaで追加。
ライティングはFleay氏が実際にやっていたような電球で照らす方法を再現しています。
浮遊しているキャラクターの釣り糸が見えているのは「Journey to the Moon」と共通。
レゴ世界と現実世界が融合して見えるのは「The Magic Portal」と似ています。
さらに「LEGO ムービー」の中にはファン制作の映像が4作品登場しています。
なお、「Lego Digital Designer」はフリーソフトだということで、このムービーを制作したVoxのスタッフも映画の再現に挑戦してみたものの、難しすぎて再現できなかったとのことです。
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