メモ

Linuxビジネスの成功者Red Hatが組織運営で心がける「オープンな意思決定フレームワーク」とは?


Linuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux」を販売・サポートするRed Hat(レッドハット)は、技術者が分散した状態で製品開発を行っています。Linuxビジネスの中でも世界有数の成功企業のRed Hatのジム・ホワイトハーストCEOは、たびたび「一体、どうやって分散した場所の技術者の意見をまとめて一つのプロジェクトとして昇華させているのか?」という質問をされるとのこと。そこで、Red Hatが大切にしている「Open Decision Framework(オープンな意思決定フレームワーク)」について、プレゼンテーション資料として公開。オープンな意思決定フレームワークが、「オープンな意見交換」「参加型」「実力主義」「コミュニティ」「迅速かつ頻繁なリリース」という5つの原則から成り立つことを明らかにしています。

Red Hat Releases the Open Decision Framework to Spur Transparent and Inclusive Leadership
https://www.redhat.com/ja/about/press-releases/red-hat-releases-open-decision-framework-spur-transparent-and-inclusive-leadership

Open Decision Framework」(2016年6月2日更新版)


◆概要


・Open Decision Frameworkとは何か?
「ビジネスで意志決定したりプロジェクトを導いていくために必要な、柔軟かつオープンなアプローチ」のこと。

・いつ使うのか?
企業文化に大きな影響を与えたり、現在のチームを超えたメンバーに影響を与える可能性のある意志決定をするとき。

・どのように使うのか?
Open Decision Frameworkをプロジェクト案や意志決定プロセスに落とし込むことで、段階的に使う。

◆「Open Decision(オープンな決定)」とは何か?


・Transparent(透明性を持つこと)
「誰が決定を下すのか?」「解決すべき問題や制約は何か?」「取るべきプロセス」について説明すること

・Inclusive(開放的であること)
フィードバックを得るために他人と連携し、意志決定プロセスを通して協力すること。多様な視点を求めること(これには潜在的な中傷が含まれ得る)

・Customer-Centric(顧客中心主義)
顧客のために競争力のあるニーズと優先順位について考えること。ある顧客のための決定は、時として他の顧客の失望を招き得る。そのため、関係者の行為について関係性を保ち期待を損なわないよう努めるべき。

◆Open Decisionはオープンソースの原則で行う


・オープンな交換
ソフトウェアの開発であれビジネスの問題解決であれ、他人と「ソースコード」を交換することが必要。既存の情報から新しいアイデアを生み出せる環境とは、自由なアイデアの交換から生まれる。

・参加型
自由な連携が可能であれば、一人では解決できない問題をみなで解決することができる。オープンな環境を作ることでのみ、誰もが参加できるようになる。

・迅速かつ頻繁にリリースする
迅速に試作をすることは、障害を素早く見つけることにつながり、ひいてはより早い解決方法の発見につながる。自由に試せる環境があれば、問題を新しい視点から見ることができ、新しい観点から答えを出すことができる。試行から学ぶことは多い。

・実力主義
能力主義の下では、誰が出したアイデアかは問われず、「最も優れたアイデア」が勝つ。そして、誰もが同じ情報に触れることが許される。

・コミュニティ
コミュニティは共通の目的によって形作られる。コミュニティはアイデアや共同作業をもたらしてくれる。地球規模のコミュニティは、個々人の能力を超越した可能性を作り出し、努力を倍増させ、そして作業を分業化してくれる。ともに働くことでより多くのことを成し遂げられる。

◆オープンソースの原則が良い決定を導く流れとは?


・原則
「オープンな交換」「参加型」「迅速・頻繁なリリース」「実力主義」「コミュニティ」

・実践
「顧客と利害関係者に対する透明性」「顧客の関与」「フィードバックに対して適宜に対応」「顧客とアイデアを構築」「コラボレーションを通じて信頼と尊敬を確保」

・成果
「購入してもらえる」「強くて素早い承認」「優れたアイデアが勝つ」「バグや予期せぬトラブルの抑制」「高いエンゲージメント」「戦略や企業文化に合わせた決定」

◆誰をも満足させることは不可能。さればこそ「オープンな意思決定」を


決定が「オープン」であれば……

・なぜその決定が下されたのか、Red Hatの戦略・ゴール・使命とはなにかが理解できる。
・ビジネスにおける、要求・調査・評価基準への透明性を確保できる。
・意思決定のプロセスが開放的で透明性ならば、たとえ決定権がなくとも決定プロセスをコントロールすることは可能。
・たとえ決定に満足できないかもしれないとしても、決定を下した人がRed Hatの価値や企業文化を理解しているのは明確である。
・失望するかもしれないが、不測の事態への驚きはない。
・意見に耳を傾けてもらえ、評価される。

◆「考案」の段階


・とるべき手段
透明性
「問題点と可能な方法をオープンにする」「オープンにできないものを特定する」「考案のプロセスを公開」

考えや環境の多様性を構築
「特に反対意見を出す顧客や利害関係者を参加させる」「多様な視点を探す」「良いアイデアをたたえ、フィードバックを得る」「リスク、限界、潜在的なインパクトを書き出す」

役割と責任の明示し始める

・聞くべき質問
「組織や企業文化への潜在的な影響度は?」

「考案段階で誰が必要か?」
誰の問題か
誰の助けが要るのか
誰が関係するか
誰が単純な問題を解決してきたか
誰が反対するか、誰が賛成するか

「鍵となる検討事項」
機密性、プライバシー、規制などの要請
議論を生み出す可能性
Red Hatの企業文化や未来の決定へのインパクト
どこで発行するか

・共通フレームワークの引き金
Red Hat内で議論や混乱を起こす論点
報酬
働く環境の変更
独自技術の実装
優先フォーマットの使用
データプライバシーの共有
もしも決定プロセスに上記の論点が入っているならば、プロセスをオープンにするために、多くのステップを踏むべき

◆「計画+調査」の段階


・とるべき手段
顧客と研究者を参加させる
顧客やサービスを必要とする人の意見を集める
よく使う機能が何かを聞く
新しい情報をオープンにする
意見を得るための公式のルート以外にも個別のルートを設ける

予測を与える
求めているフィードバックの内容を明確にする
決定プロセスやプロジェクトの計画を明示する

明確に説明する
プロジェクト・決定の射程を頻繁に公開
決定に影響する要因や相対的な重要性を明らかにする
調査結果を明らかにする
法的事項や懸念点を明らかにする

修正を計画する
フィードバックを集めて議論し、必要に応じてプランを変更する
変更によって生じる混乱について考える

・答えるべき質問
どうやって決定を下すか
どの顧客や関係者に影響を与えるか
彼らをどうやって取り込むか
オープンソースの選択肢とは何か
何が優先か
独自のフォーマットを選ぶ可能性があるか
Red Hatの価値や企業文化と衝突するとすればどの点か

・鍵となる検討事項
誰に影響しその頻度はどれくらいか
誰とどうやって強力するか
役割と責任

◆「デザイン・開発・テスト」の段階


・オープンにするためのステップ
コミュニティ作り
誰がチームにフィードバックを与えるのかを部署に問いただす
決定を顧客や利害関係者に伝える
選択肢を調査しマイナスの影響を受ける人をフォローする

オープンな意見交換を促進する
フィードバックを評価する
フィードバックからの変更点を明らかにする
提案が実現不能な場合、その理由を説明する
公開の場で成果を発表する

懸念声を安心させる
リスクや問題をあぶり出す為にプロジェクトチームのメンバーを招集する
プロジェクトの成功を妨げるものが何か?チームが抱えるだろう問題は何か?見落としているものは何か?を尋ねる
リスクや制限を明らかにする

参加者を活性化する
情報ミスや誤解がある場合にこれを正せるようコミュニティを準備する。

・答えるべき質問
試験やリリースを早められるか
どのように試験するか
どの顧客が試験を手伝ってくれそうか
プロジェクトや決定をとりまく熱意あるコミュニティを作れそうか
もっとサービスを売るために誰が必要か

・鍵となる検討事項
さまざまな種類の顧客の代表
予期せぬ影響
議論されていないリスクや懸念

◆「ローンチ」の段階


・オープンにするためのステップ
終わりから考える
Red Hatの戦略・使命・企業文化・価値との整合性を確かめる
その決定を下すためにしてきた手順を明らかにする
詳細な情報がどこで見つかるかを伝える
フィードバックが決定やプロジェクトをどのように形作ったのかを明らかにする
リリース後にどのようにフィードバックを提供すれば良いのかを説明する
意思決定に満足できない人がいることへの理解を示す
決定に反対する人を引き続き取り込む努力をする

オープンのための慣行
ビジネス上の要求や制限について関連することを繰り返す
関連する法、報道、守秘義務について共有する
うまくしのいだ危機や関連する基準について話し合う

報恩
方法、教訓、学習、意思疎通などを文書化して、他の人が決定までの経緯を振り返ることができるようにする
オープンな決定が作られたプロセスを助言する

・答えるべき質問
リリース後のフィードバックを知る方法やメーリングリストの閲覧の仕方
フィードバックに対してさらなる改善を行えるか
フィードバックに対して喜んで修正できるか
重要なことを見落としていないか
もし見落としがあればどのように対処するのか
決定を再考する必要はないか
オープンな意思決定は期待通りの成果を上げたか
どうやって教訓を共有するか
どうやってRed Hatのオープンな決定プロセスを奨励できるか

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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