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労働者が搾取されない環境をインターネットで実現するのは可能なのか?

By David Blackwell.

イギリスのロンドンにあるランカスターハウスでFuture of Work Conferenceというイベントが開催され、Googleのエリック・シュミット会長やオンライン旅行サイトのLastminute.comを立ち上げたマーサ・レーン・フォックス氏など、ビジネスの業界でトップに君臨する著名人が、未来の労働市場を議題にしたプレゼンテーションを行いました。その中で、労働者が弱者として搾取される立場になっている労働市場を改善するためのプロジェクト「Cedah」が紹介され、不安定な労働市場を改善できる可能性があるプラットフォームとして注目を集めています。

One man’s quest to meld Adam Smith and Marx – by creating an Uber for jobs | Money | The Guardian
http://www.theguardian.com/money/2015/apr/16/one-mans-quest-to-meld-adam-smith-and-marx-by-creating-an-uber-for-jobs

現在および未来の労働市場で問題視されているのは「不安定」な労働の環境です。例えば、イギリスでは失業率が下がっている反面、フルタイムで働きたいのにも関わらずパートタイムでしか働けない労働者の数が130万人もいます。また、就労時間や賃金の保証がなく、その時々に求められた時間のみ働くゼロ時間契約という雇用形態がイギリスには存在します。

By DGTX

休日や病欠が認められず、雇用主が必要なときだけ働くというゼロ時間労働者は約70万人もイギリスにいるそうです。こういった労働市場の現状はまさに言葉通り「不安定」で、イギリス労働党党首のエド・ミルブランド氏が「不安定の疫病」と形容するほど。ゼロ時間契約がはびこっている労働市場は、いわゆる雇用主が主導権を握っている状態です。

Future of Work Conferenceでは、こういった労働市場の問題に対する解決案を提示した人物がいました。政策起業家のウィンガム・ローワン氏は「かつてオートメーションや裁定取引が金融業界を好転させたのと同じことを労働市場でも実現できる」とプレゼンテーションで主張。同氏が労働市場に対する解決策として挙げたのは「Cedah(The Central database of avalable hours)」というプラットフォームです。

簡単に言うとCedahは、フレキシブルに働きたい人と雇用主をつなげるためのサービスで、仕事を探している人が「勤務可能日や時間」「職種」「居住区」といった自身のデータを登録し、雇用主は自身が求めている人材を探して仕事をオファーするというもの。同じようなサービスは以前にも存在したそうですが、雇用主が雇用者を選ぶのではなく、雇用者が仕事を検索するというものだったそうです。

By Chris-Håvard Berge

ローワン氏が紹介したCedahのデモでは、障害を抱えた息子を持つ父親が、息子に水泳を教えるためのコーチを探して契約を結ぶまでを実演。サービスのUIはとてもシンプルで、仕事内容と場所、日時を指定すると、それに適した働き手をリストアップ。写真や仕事の評価、仕事への適任度、支払う賃金の予想額など、多くのデータを吟味して、仕事をお願いしたい人を選べます。

また、クリーナーから犬の散歩代行、介護といった地域に密着した求人が多くあるのがCedahの強みです。2日後に2時間だけベビーシッターが急に必要になったときに、人材派遣会社から探すのは不可能ですが、Cedahなら可能にしてくれるというわけです。ローワン氏によると、CedahはITの技術を使い、フレキシブルに働きたい人が無駄にしてしまっていたリソースを有効に使えないか、という考えから着想したとのこと。

By Alan Light

Cedahと似たようなサービスは存在するものの、手数料が労働者の賃金から支払われたり、最低賃金を下回る賃金で募集していたり、雇用主と雇用者の雇用関係が崩壊しているものばかり。一方で、空き部屋シェアサイトのAirbnbや配車サービスのUberといったプラットフォームを仕事に特化して進化させたようなCedahは「テクノロジーと経済が労働者を苦しめている市場を変えたい」というローワン氏の信念が込められていて、雇用主と雇用者の利益が一致するようなサービスになっています。

さらに、Cedahの利用者が税金を収めることで政府は税金を回収でき、かつCedahに登録している労働者は自己の権利が保障されることになり、今までのような雇用主が雇用者より圧倒的上の立場の環境は成り立たなくなるとのこと。Cedahはまだプロジェクト段階でサービス自体は始まっていませんが、労働市場を好転させるプラットフォームになるのかどうか注目が集まっています。


なお、ローワン氏は2012年にロンドンで開催されたTEDにて、フレキシブルに働ける仕事を求める人とそういった人を必要としている雇用主をつなげるCedahの前身のようなサービスについてのプレゼンテーションを行っており、その様子は以下のムービーから確認可能です。

ウィンガム・ローワン:新しい労働市場


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in メモ, Posted by darkhorse_log

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