黒澤映画の分析により映像作品においてセリフではなく「動き」が重要だとよくわかる「Akira Kurosawa - Composing Movement」
映画「スター・ウォーズ」に大きな影響を与えたことでも知られている黒澤明監督作品は、余計なセリフを省いて「動きでストーリーを語っている」ということが分かるムービー「Akira Kurosawa - Composing Movement」が公開されています。
Akira Kurosawa - Composing Movement - YouTube
映画のショットの良しあしは何で決まるのでしょうか?
バランスや……
誘導線
黄金比
色彩
照明
配置など、どれも大切な要素です。
しかし、注目すべきは「動き」です。
「黒澤明はまるで映画監督のベートーヴェンだ。なぜならベートーヴェンの音は誰にでもすぐに分かる。間違えっこない。それと同じことだ」
黒澤映画の動きは独特です。どの作品も傑作級のさまざまな動きがそろっていて、動きの組み合わせもまた一流のもの。
黒澤監督は生涯で30本の映画を作りましたが、全ての映画に驚くべき動きが満ちています。黒澤映画でよく用いられる5つの動きを見ていきましょう。
まずは「自然の動き」。
どの作品でも、必ず背景には何らかの天気が映り込んでいます。
風
水
炎
煙
雪
自然の動きを取り入れることで映像の中に人物以外の要素が加わり、人物が動いていない場面でも背景の動きが観客の目を引きます。
「雨はいつだって心を動かすんだ」
「雨は観客の五感に訴えて共感を呼ぶ」
次は「集団の動き」。
黒澤映画では、多くの登場人物が集まったり散らばったりするという場面があります。
群衆のシーンこそ、映画の醍醐味(だいごみ)と言えます。
なぜならひとつの場面に人を多く詰め込むほど、感情や気持ちを増大させる効果があるためです。
いいリアクションシーンを撮りたい場合は、4人の人間を同時に写すのがよいとのこと。
25人くらいの大人数なら、さらによい効果が得られます。
しかし、ここぞという場面では、3つ目の「個人の動き」を使います。
黒澤映画の魅力のひとつは、芝居が大げさで少し非現実的だということです。
不安な人物はうろうろと歩き回り……
怒りに駆られた人物はその場でバッと立ち上がります。
恥ずかしさや屈辱に打ちのめされたら……
顔を伏せて体をかがめます。
黒澤監督は、俳優に好きな動作をひとつ選ばせて、その動きを映画の中で何度も繰り返すように指示したそうです。
こうすることで、どの俳優がどの役柄を演じているのかを観客がすぐに把握できるようになります。
4番目は「カメラの動き」です。黒澤映画は流れるようなカメラワークが印象的。
このシーンでは、役者の顔のアップから……
全身の画へ引いていき、ノーカットで撮影が行われています。
スティーブン・スピルバーグ作品でも同様のカメラワークが見られますが、黒澤映画では、動きの始まり・中間・終わりがハッキリとしています。
水面に映った人影など、カメラワークだけでストーリーが完成。
最後は「カットの動き」。黒澤監督は、自ら編集作業を行っていました。動きをスムーズに見せて、時に観客は俳優の動きに目がとらわれ、映像の編集に気付かないほど。
ひとつのシーンの最後には、たいていは静かな場面で終わらせて……
次の瞬間いきなり違う動きをぶつけます。そうすることで、観客はストーリーが次にどう進んでいくのか予測がつきません。
「七人の侍」では、まず村人から主役へカメラが動き……
侍のみにカメラがフォーカスし、刀を突き立てると……
村中に落胆が波紋のように広がっていきます。誰も動いていないシーンですが、風のそよめきでグッと印象的な画になっています。
映画「アベンジャーズ」の状況説明のシーンでは、シーンの序盤にすぐにセリフが入り、動くのはカメラとニック・フューリーのみ。
カメラの動きには始めや終わりがなく、変化のない同じ動きが続きます。
一方、「七人の侍」では、カメラの動きに始まり・中間・終わりがはっきりと存在していて、どのショットも前のショットと向きを変えています。
丘を登るシーンでは旗の動きを見せて……
旗と七人の侍が一緒に写るシーンへと自然につなげています。
このシーンにはあらゆる種類の「動き」が注意深く組み合わされて、配置されています。まずは「天気」。
集団
個人
カメラワーク
カット
対して、「アベンジャーズ」ではセリフが主となってストーリーが進み、カメラの動きには意味はあまりありません。
どうすれば「動き」を使ってよいシーンが作れるのでしょうか?そのためには、シーンの意味を考えて、「動き」で表現することが重要です。
登場人物はどのように感じているのか?動きで気持ちを表現できないか?
感情をさりげなく背景に反映させます。怒りを表すなら、このように炎を人物のバックに配置したり……
個人と集団の対比という手法もあります。例えば見つかる当てのないものを探している時はこんな感じ。
カメラの動きで興奮を伝えたり……
動きを中断して驚きを表したり。
あらゆる動きを集めれば、壮大な画を作り出すこともできます。
とはいえ、動きの多すぎるシーンは観客を疲れさせてしまうことも。さりげなく、かつ変化に富んだシーンを作るという手もあります。
どんな動きが効果的なのかは、やってみるまでわかりません。動きと感情がぴったり一致することで、真に映画的なシーンが生まれます。
黒澤映画は、どの作品のどのシーンを取り出しても、動きに満ちあふれています。
「視覚的刺激こそが観客の心を動かす。そのために映画はある」
「さもなければ、映画を見ずにラジオを聞いていればいいんだよ」
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