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映画の中で「ハイになる」シーンはどのように描かれてきたのか?


映画の中で描かれる「ドラッグを使用する様子」そのものは平凡ですが、一方で「ドラッグによって精神がどのように変化するのか」ということの描き方は、映画監督たちのクリエイティビティが発揮されるところだ、というのがビデオ・エッセイストであるPhilip Brubakerさんの意見。数々の映画の中で描かれてきたドラッグ体験シーンがどのようなものだったのか、Brubakerさんがムービーで解説しています。

How Movies Get High
https://www.fandor.com/posts/how-the-movies-get-high

Cinema Under the Influence: How Movies Get High on Vimeo


映画の中でドラッグが登場すると、「頭の中が別次元に移行する」ということがさまざまな表現で描かれます。


例えば以下の画像で宙に浮かぶ3人組は、実際に宙に浮いているわけではなく、3人のドラッグ体験を象徴的に描くための演出です。


ニヤニヤ笑みを浮かべる様子も、ドラッグで「ハイ」になった人々の表現としてよく使われます。


ドラッグは鼻から吸うものや……


タバコのように吸うもの


口の中に液体をたらすもの


そして注射器を使うものなど、これもいくつかのパターンがあります。


映画の中の「ドラッグを使う様子」は平凡なものですが、「ドラッグによって感情が変化していく様子をビジュアルとサウンドでどう描くか」という監督の試みは一見の価値があります。


映画を見れば、視聴者は「ドラッグを使うことでどんな状態になるのか」を、ドラッグを使わずとも体験可能です。映画「ラスベガスをやっつけろ」ではジョニー・デップ演じるラウル・デュークがLSDでハイになるシーンが描かれていますが、テリー・ギリアム監督は映画を撮影する前、一度もLSDを体験したことがなかったとのこと。


作中、ドラッグを服用したラウルの視界はグラグラと揺れ……


カーペットの模様であるはずのツタが、人の足に絡みつきます。


女性の口はあり得ないほどに大きく。


一方で、第三者目線で見たラウルは、通常とは異なる、奇妙な動きで歩きます。ギリアム監督は実際の経験ではなく創造力によって「LSD体験とはどんなものなのか?」を描いたわけですが、このような描き方が可能なのは、ギリアム監督が、ドラッグで体験する「主観的な経験」と「それが外からどれほど奇妙に見えるのか」という2つが、どのように関わってくるかを理解しているためです。


別の映画のシーンでもドラッグでハイになったシーンは描かれていますが……


以下のような女性がステージで踊りまくるシーンは、あくまで「外から見たドラッグ使用者」の様子であって、女性の内側で何が起こっているのかは視覚的に描かれていません。


映画監督は「イメージ」を通して視聴者とコミュニケーションを取ります。優れた監督は映像とサウンドをたくみに操作し、登場人物が体験していることを、視聴者にも体験させることが可能です。


ドラッグ体験を描いた映画の中には観客を笑わせるものや……


怖がらせるものもあります。


しかし、それ以外にも「ドラッグ」はさまざまな演出のきっかけとして使うことが可能。映画の中の「ドラッグ」は観客を新しい映画体験の中に連れていくものでもあるのです。


「ドラッグ」を使うことで、映画の作り手は人々の「無意識」の世界を冒険することができます。人々の内面世界を描くため、動き・スピード・色彩・音など、現実世界の制限に捕らわれることはありません。ゆえにドラッグを扱った映画の中には「映画という名の芸術作品」もあり、言葉では表現できない「精神状態」を表現しようと試みています。


これは絵画や写真の世界における「シュルレアリスム」が試みたことと同じものです。


シュルレアリスムは潜在意識や無意識など、本来であれば表現できないことを表現する方法を探すもの。映画の中でドラッグシーンをよく描く監督の中には、シュルレアリスムの手法を使って人間の無意識を描こうとする人もいるわけです。


また、映画の中でドラッグ体験の「主観」を描く監督の一人に、マーティン・スコセッシ監督がいます。スコセッシ監督は映画におけるドラッグの描き方にクリエイティビティを発揮する人物でもあります。


スコセッシ監督の映画の中で、ドラッグを過剰摂取したレオナルド・ディカプリオは運動機能を失い……


ジョナ・ヒルはLSDの使用によって新世界を体験。


ニコラス・ケイジはなぜかコーヒーテーブルの上にイグアナを目撃します。


そして、Brubakerさんがお気に入りのドラッグ・シーンの1つが、映画「フライト」の中のワンシーン。登場人物がドラッグを摂取する前、カメラはテーブルの表面ぎりぎりのところから人物を映していますが……


人物が鼻からドラッグを吸って顔を上げるのに合わせて、カメラが急上昇。一気に気分が向上したことが、カメラワークによってわかります。これはBrubakerさんが公開するムービーの5分22秒あたりから見ることが可能です。


また、「トレインスポッティング」では……


人物が床に寝転がると……


カーペットごと、床がどんどんと沈んでいきます。これは、ヘロインが使用者にどのような影響を及ぼすのかを見事に描いたものとなっています。このシーンはBrubakerさんのムービーの5分34秒あたりから視聴できます。


そして3つめ目のお気に入りは、5分45秒あたりから始まる「真夜中のカーボーイ」。この映画は1969年に作られたものですが、「映画の作り手は言葉を使わずにして、どのように強い感情を観客に伝えるのか」ということを表しているとのことです。

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