映画「スター・ウォーズ」が日本の時代劇の影響を受けた経緯がよくわかるムービー
ジョージ・ルーカス監督作品の映画「スター・ウォーズ」シリーズが、日本の黒澤明の作品に大きな影響を受けていることは、一部映画ファンの間で知られています。その経緯について詳しい解説をしているのが「How are Samurai Films Responsible for Star Wars?!? - Film School'd -」で、日本とアメリカの映画史についても理解できる内容になっています。
How are Samurai Films Responsible for Star Wars?!? - Film School'd - YouTube
映画「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」が公開されたのは1977年。
話は、スター・ウォーズ エピソード4が公開される67年前の日本にさかのぼります。
1910年に生まれた黒澤明は、体育教師をしていた父の勇に連れられて、日本映画だけでなく多くのアメリカ映画をよく見ていました。
黒澤明は、当時の日本で人気のあったサイレント映画にも興味を示します。
当時、映画館でサイレント映画の上映時には、スクリーンの側に必ずと言っていいほど、男性が立っていたとのこと。
スクリーン横に立っていた男性は、サイレント映画の上映中に内容をナレーションで表現する活動弁士という職業的解説者。黒澤明が慕っていた兄、丙午(へいご)は活動弁士の職に就いていました。
時は進んで1940年。
後に東宝と合併されるピー・シー・エル映画製作所に入社した黒澤明でしたが、西洋文化に影響を受けていた脚本が、当時戦争中であった日本で受け入れられず、本当に撮りたい映画を製作することができなかったそうです。
黒澤明が戦時中に製作した映画は、プロパガンダ的な内容と含んでいたとのこと。
しかしながら、太平洋戦争において、日本は1945年にポツダム宣言を受理し降伏。
戦後の日本はアメリカを含む連合国によって占領されることになります。
戦後は、民間検閲支隊によって新聞や放送、さらには映画まで厳しい検閲が行なわれました。
GHQが規制した表現の中には「帝国主義に関するプロパガンダを含んだ、いかなる形式の表現を禁止する」とあり、これは実質的に侍をテーマにした時代劇映画の製作を禁ずることと一緒でした。
一方その頃、アメリカのハリウッドは黄金期と呼ばれる時代に突入。製作・配給・興行の全てをコントロールするスタジオ・システムという産業形態をとっていた映画会社により、大規模で良質な映画が次々と生まれます。
しかしながら1948年、大手映画会社のパラマウントおよび他の映画会社に対し、「劇場チェーンを映画会社本体から切り離す」という判決がくだされ、スタジオ・システムは幕を下ろすことになりました。
スタジオ・システムが禁止されたことに加え、アメリカ国内では都市を離れて郊外に住居を構えるという生活システムが浸透し、都市にある映画館に足を運ぶ人が少なくなったため、ハリウッド業界は大ダメージを受けたとのこと。
このころGHQによる占領が終了した日本では、表現の自由が認められ、映画監督が好きなように映画を製作できるようになりました。
当時の日本映画界を代表するのが、溝口健二、黒澤明、小津安二郎といった人物です。
日本映画界でメジャーだったのが現代劇と時代劇の2つのジャンル。
時代の発音は、スター・ウォーズに登場する「あの単語」によく似ています。
黒澤明の戦後初の時代劇となった映画「羅生門」は1950年に公開されました。
羅生門は、日本で高い評価を得られなかったものの、ヴェネツィア国際映画祭でグランプリを受賞し海外で高い評価を受けます。
羅生門がグランプリを受賞したことで、日本映画の評判が世界中に伝わります。
溝口健二の「雨月物語」や小津安二郎の「東京物語」、黒澤明の「七人の侍」は世界中で公開されました。
そして、1958年に黒澤明の「隠し砦の三悪人」が公開を迎えます。
戦国時代を舞台とした隠し砦の三悪人は、「2人の百姓が、戦争から逃れた1人の姫を助け、同盟国に逃げ延びる」という、スペースオペラを代表するあの映画の話を思いださせる内容。
同じころのアメリカ。カー・レースに熱中していたジョージ・ルーカスは……
交通事故に遭い、奇跡的に死を免れたものの、自分の人生を見つめなおすことに。
人生を考え直したジョージ・ルーカスは、南カリフォルニア大学で映画の勉強にはげみます。
大学時代のジョージ・ルーカスは、後に「ダーティハリー」や「地獄の黙示録」の脚本を担当したジョン・ミリアス - Wikipediaと運命的な出会いを果たすわけです。
ジョージ・ルーカスは、ジョン・ミリアスに連れられて見に行った「七人の侍」に一目ぼれ。
その後、アメリカ映画界には時代を代表する4人の監督が登場。その4人とはマーティン・スコセッシ、フランシス・フォード・コッポラ、スティーブン・スピルバーグ、そしてジョージ・ルーカスです。
フランシス・フォード・コッポラは世界的にヒットした「ゴッドファーザー」を撮影。
マーティン・スコセッシは「タクシードライバー」で、ロバート・デ・ニーロを起用。
スティーブン・スピルバーグの「ジョーズ」はプロモーションに大きな予算がかけられ、大成功を収めます。
そして、ジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」が1977年に公開を迎えました。
スター・ウォーズ エピソード4は、日本の時代劇や黒澤明の作品に大きな影響を受けているそうで、例えば、作中で登場する「ジェダイ」は時代劇の「時代」から名付けられたとのこと。
ダース・ベイダーや……
ストーム・トルーパーの衣装は侍の鎧がモチーフ。
ヨーダは「七人の侍」に登場する島田勘兵衛がモデルになっているとのこと。
モス・アイズリー宇宙港の酒場でオビ=ワン・ケノービが宇宙人の腕を切り落とすシーンは、黒澤明の「用心棒」にそっくり。
右から左に場面が切り替わる演出は、黒澤明がよく使用していた手法の1つ。
隠し砦の三悪人に登場する太平と又七は、スター・ウォーズのC-3POとR2-D2のモデルになったそうです。
「七人の侍」の「丘の上から徐々に敵が姿を現す」というシーンに酷似したカットがスター・ウォーズにも登場します。
スター・ウォーズにおける時代劇映画の影響と経緯を見ると、映画がただのエンターテインメントではなく、国境を越えて交わされるコミュニケーションの1つであることが、よくわかります。
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