メモ

一般人には知られていないイギリス最大の成功企業「ARM」とは?

by Adam Greig

世の中には業界でトップを争うぐらいの企業なのに一般的にはあまり知られていないという企業がありますが、イギリスでこの種の企業というと「ARM」が挙げられます。

ARM: Britain's most successful tech company you've never heard of | Technology | The Guardian
http://www.theguardian.com/technology/2015/nov/29/arm-cambridge-britain-tech-company-iphone


ARMの前身はエイコーン・コンピューターという、1978年にケンブリッジに設立された企業です。エイコーンはマイクロコンピューターで知られるメーカーで、最初に作った「Acorn System 1」は80ポンド(1980年当時のレートで約4万2120円)で大学の研究者向けに販売されました。

by Flibble

エイコーンは「System 1」のあと、機能を向上させた「System 2」「System 3」「System 4」「System 5」を生み出しました。この流れはやがて家庭向けコンピューター「Acorn Atom」に結実します。

しかし、エイコーンが広く知られるのは家庭向けではなく、1980年代に行われた「BBCコンピューター・リテラシー・プロジェクト」でのこと。このプロジェクトは、マイクロコンピューター革命によって世界が変わるというドキュメンタリー番組の影響を受けて、イギリスで子どもにコンピューターを使いこなす力をつけるために行われたもので、プロジェクトで用いられるマイクロコンピューターとして、エイコーンの「Proton」が採用されました。

「Proton」は「BBC Micro」の名前で販売されることになり、エイコーンは一躍、イギリスの教育用コンピューターのシェアを独占することになりました。このとき、BBC Microはイギリスの約80%の学校に導入されたとのこと。

by Ubcule

このころ、エイコーンでは情報化時代の到来に備えて、将来の基礎を作りに入ります。この当時のエイコーンは従業員がわずか400人以上ぐらいという会社規模で、チップを1から作るような体力はない状態でしたが、外部のプロセッサーは購入して使うほどの性能には達していませんでした。そこで目をつけたのが、デイビッド・パターソンとカーロ・スパンコールがカリフォルニア大学バークレー校で進めていたRISCプロジェクトでした。RISCとは、プロセッサーの命令数を減らして回路を単純化することで演算の高速化を図ったアーキテクチャで、ここから「Acorn Risc Machine」、つまり「ARM」(ARMアーキテクチャ)が生まれました。

エイコーンはこの「ARM」シリーズを自社で開発したホビーPC「Acorn Archimedes」に搭載。続いて、Appleが開発を進めていた携帯情報端末(PDA)・Newtonのプロセッサを共同で開発することになり、プロセッサーを開発する部門が独立して、会社としての「ARM」が設立されました。この当時、PC市場は「ウィンテル」と呼ばれる、OSにはMicrosoftのWindowsを搭載してプロセッサはIntelのものを用いたPCに席巻されていて、ARMチップはWindows PCでは役に立たず、すでにエイコーンはイタリアのコンピューター企業・オリベッティの傘下となっていました。

こうした経緯で誕生したARM社の「ARMアーキテクチャ」は、数あるRISCアーキテクチャの中でも特に低消費電力に優れ、市場に出回るほとんどのスマートフォンなど、組み込みシステムで圧倒的なシェアを誇ります。たとえば、Androidスマートフォンのプロセッサとしてよく用いられているQualcommの「Snapdragon」にはARM製のCortex-Aファミリーのコアが使用されており、Apple製品で用いられている「Apple A9」「Apple A9X」などはApple Axというサードパーティー製のARMアーキテクチャを用いています。よく取り上げられるのは「AppleのiPhone」「SamsungのGalaxy」「ソニーのXperia」といったように製品のメーカーですが、いずれの製品にもARMが関与しているというわけです。

by Socram8888

そんな圧倒的な立場にあるARMですが、「ウィンテル」が携帯電話・スマートフォン市場で巻き返しを狙っているのを指をくわえて眺めているわけではありません。数年前から、携帯電話・スマートフォン向け以外の製品割合を40%にまで増やし、PayPalのようなサーバーや、ゲーム向けなどでも用いられるような、「低消費電力」ではない製品も作っています。これからも、わざわざブランドを前面に押し出さずにやっていくであろうARMが、どれだけの市場を手にしていくのか。直接目にすることはあまりありませんが、注目です。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
ARMの次期CPUコア「Cortex-A72」はIntelのCore M以上の超絶性能であることが判明 - GIGAZINE

Intelが新SoC「Atom x3」でライバルのARMグラフィックチップを採用した理由とは? - GIGAZINE

3.5倍高速で消費電力4分の1の新CPU「Cortex-A72」をARMが発表 - GIGAZINE

in メモ,   ハードウェア, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.