手術中の患者がスマホでメッセージをやりとりすると鎮痛剤の量を抑えられる
by NEC Corporation of America
スマートフォンはいまや電話としての役割だけではなく、カメラや音楽プレイヤーなどの多彩な機能を備えています。スマートフォンの活用方法を研究した結果、なんと外科手術中にスマートフォンを使用していると気持ちが落ち着き、鎮痛剤としての効果を発揮することが判明しています。
Texting reduces need for pain medication during surgery - The Boston Globe
https://www.bostonglobe.com/lifestyle/2015/05/08/texting-reduces-need-for-pain-medication-during-surgery/q7pRsvHDCQikaj0pvFBcyH/story.html
ヘルスケア・医薬品研究機関のRTI Internationalに務める研究者のJamie Guillory氏は、「手術の際に、できるだけ低コストで患者の不安を取り除くことが重要であるため、スマートフォンが鎮静効果を生み出すという今回の発見は、とても実用性が高い」と語ります。過去にも、治療中に音楽を聞いたり、テレビゲームで遊んだり、映画を見たりといった娯楽によって、患者の気がまぎれて鎮痛剤の投与量が通常よりも少なくて済むという研究結果が出ています。Guillory氏は、「音楽や映画などの受動性が高い娯楽よりも、他人と相互的なコミュニケーションを取る方が効果が大きいのではないか」と推測して実験を行いました。
実験では外科手術を受ける98人の患者を4つのグループに分けて、「スマートフォンでアングリーバードをプレイする」「家族とメールのやりとりをする」「見ず知らずの他人とメールのやりとりをする」「何もしない」という異なる状態で下半身に局部麻酔を打って手術を受けてもらいました。
手術中に患者が「麻酔を追加で投与してほしい」と要求した量を分析すると、「アングリーバードをプレイする」グループと「家族とメールのやりとりをする」グループの結果はほぼ同じだったのに対して、研究チームの予想に反して「見ず知らずの他人とメールのやりとりをする」グループで麻酔の量が最も少なく、「何もしない」グループと比べると6分の1の麻酔しか使われなかったそうです。
by Ted Eytan
研究チームではこの結果について、「他人のことを知るための会話には、ポジティブな感情表現や自己肯定的な発言が多く含まれます。一方で、家族との会話では手術の話題が中心になりやすく、体の心配などネガティブな会話が高い割合を占めます。そのため、他人と会話する方が手術中に気が紛れるのではないか」と分析しています。Guillory氏は、レントゲンやCTの撮影時など、患者がひとりで治療に臨まなければならない場面でスマートフォンを使ったメッセージのやりとりが役立つと見込んでいて、医療関係者に向けて術中のスマートフォンの導入を勧めています。
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