ジョブズがMicrosoft開発者イベントで行った貴重なプレゼンテーション映像
By Kelly Abbott
Appleの元CEOであるスティーブ・ジョブズの魅力はたくさんあり、その中でも人の心をつかんで離さない神がかったプレゼンテーションは特に有名で、今でも過去のプレゼンテーションのムービーがインターネットにアップロードされ続けています。そのジョブズがMicrosoftの「Professional Developers Conference(通称:PDR)」で1996年に行ったプレゼンテーションがChannel 9に公開されており、人の心を引きつけるテクニックはこの頃から相当のものだったことが確認できます。
PDC 1996 Keynote with Bob Muglia and Steve Jobs | PDC 1996 | Channel 9
http://channel9.msdn.com/Events/PDC/PDC-1996/PDC-1996-Keynote-with-Bob-Muglia-and-Steve-Jobs
ジョブズを紹介するのはMicrosoftのサーバ&ツール部門元社長のボブ・マグリア。
マグリアの紹介を受けて、当時NeXTのCEOだった41歳のジョブズが登壇します。プレゼンテーションの内容は、NeXTが1996年に世界初のWebアプリケーションサーバとしてリリースした「WebObjects」についてです。
ジョブズは最初に「現在のウェブ業界の発表やニュースは、ほとんどがブラウザに関するものです。その中でも重要なのはブラウザのUIを強化し、ブラウザの能力を最大限までひきだすこと」と語り、「今のブラウザはプラグインとActiveXでUIの能力を引き延ばしている状態です。プラグインとActiveXでブラウザのUIを強化することはとても重要で、今後もブラウザを成功に導くでしょう」と続けます。
「現段階のウェブはステージ1に滞在していて、ステージ2に移行していくことが予想されます。ステージ2のウェブで重要になるのはサーバ。では、ブラウザがUIを重要視するなら、サーバは何を重要視するべきでしょうか?」
「このスライドを示すように、現代のブラウザはHTTPサーバに保存されたページから要求されたページを引き出してくる仕組みになっています」
ジョブズは「このシステムが抱える問題は、ユーザーが要求するページが存在しないときにどうするか?ということです。そんなことは起こらないという人がいましたが、もちろん起こり得ます」と観客に問いかける形で、当時のブラウザが抱えている問題を指摘。
「例えば、FedExのサイトでトラッキング番号から荷物の場所を調べてみましょう。トラッキング番号を入力すると、4つのメインフレームデータベースがトラッキング番号に該当する荷物のデータを調べます」
「その後、集めたデータをまとめて自動的にページを生成し、私に荷物の配送経緯を教えてくれるというわけです。私が言いたいのは、『今見ているページ』は私がトラッキング番号を入力する前に存在しなかったということです。もし、ユーザーがカスタマーサポートに電話して荷物の場所を調べてもらう必要があり、その経費が8ドルかかるとしましょう。1日に1000件の問い合わせがあれば、8000ドルもの経費を削減できます。これがダイナミックなウェブの魅力です」
「この魅力的なサービスを実現させているのがWebObjects。簡単に言ってしまうと、ユーザーが要求しても存在しなかったページを、自動的に構築してしまえるということです」と、ジョブズは自社の製品の魅力を誰でも理解できるように説明します。
途中でジョブズが「今朝はInternet Explorerを使っていましたが、このプレゼンテーションではNetscapeを使います。もちろん、みなさんがInternet Explorerを愛しているのは知っていますよ」と言うと、会場は笑いに包まれます。合間合間に観客がリラックスできるようなジョークを挟んできて、飽きることなくプレゼンテーションを見ていられます。
ここからはWebObjectsを利用している企業のサービスを実際に利用して、製品の魅力を紹介。自動車販売のウェブサイトで「車種」「価格」「モデル」を選択し、値段順に並び換え、WebObjectsを使ってできるダイナミックなサービスを詳しく説明していきます。
「今みなさんに見ていただいたのは、WebObjectsの最も標準的なバージョンを使ってできることです」と語り、WebObjectsの「Pro」と「Enterprise」バージョンを紹介。
その後に、プレゼンテーションの導入部分で問いかけた「ブラウザがUIを重要視するなら、サーバは何を重要視するべきでしょうか?」という問題に対する「サーバはダイナミックに表現できるサービスを重視すべき」という答えを導き、見ているコチラも思わず「なるほど」となってしまいました。
WebObjectsが全てのブラウザとHTTPサーバに対応していることを紹介。
続いて対応言語や……
製品のベータ版がダウンロード可能であること、正規版のリリース予定日をアナウンス。
WebObjects標準モデルの料金は無料。ジョブズは「WebObjectsを使ってダイナミックなサービスを、ここにいる皆さんに使ってもらい、ウェブを1段階上のレベルに引き上げることが、私が本当に望んでいることです」と語ります。
ではWebObjectsをどうやって収益化に結びつけるかという話になり、標準モデルとは搭載されている機能が違う有料の「Pro」と「Enterprise」バージョンの値段を発表。
WebObjectsを既に利用している顧客として、当時アメリカにおける三大投資銀行の1つだったメリルリンチや……
モトローラ……
映画会社の「ドリームワークス」を紹介。
ジョブズは最後にもう一度WebObjectsのデモを行います。フライト検索のOAGのUIは、WebObjects導入前だとこんな感じ。ジョブズは「OAGはとてもモダンなサイトデザインでしたが、WebObjectsを使ってもっとモダンなUIに変更できました」と語ります。
これがWebObjectsを導入後のUI。
検索したフライトはアニメーションで表現され、導入前のUIから数段階上のレベルに到達したことは明らかです。
一通りのデモを行った後に、もう一度製品のバージョンと値段を説明してプレゼンテーションは終了。ジョブズのプレゼンテーションが当時から人を引きつけていたことがよくわかるムービーでした。
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