意識のパフォーマンスを向上させる「脳とスイーツ」の甘い関係
By Shandi-lee Cox
ケーキのようなスイーツを食べたり甘さいっぱいのドリンクを飲んだりするとじつに幸せな気持ちになるものですが、脳科学に基づいた研究結果からも甘いものは脳に良い影響を与え、意識活動のパフォーマンスが向上することが明らかにされました。
How the Brain Uses Glucose to Fuel Self-Control - WSJ
http://online.wsj.com/articles/how-the-brain-uses-glucose-to-fuel-self-control-1417618996
自動車を走らせるためにはガソリンが必要であるように、あるいはスーパーコンピューターを使って膨大な計算を行う場合には多くの電力が必要であるように、何かを動かすためには必ずエネルギー源が必要になってきます。これは人間についても同じことがいえ、特に生命の要とも言える「脳」は糖の一種であるグルコース(ブドウ糖)の供給なくして役目を果たすことができません。
標準的な体格の人の場合、全体重のうち脳が占める割合はわずか3%なのですが、そんな脳が消費するエネルギーは全体の25%にも達するということなので、いかに脳が多くのエネルギーを消費していることがわかります。
By Allan Ajifo
その様子は最新の機器を用いると正確に把握することが可能。音楽を聴いている時には脳の聴覚皮質、何か新しいことを覚えようとしている時は海馬状隆起の部分が、さらにダンスをしている時には運動皮質、そして「こんな遅い時間に食べちゃ駄目だ……!」などと強い意志を発揮するような場合には脳の前頭葉の部分、といった場所での血流が増えてエネルギー消費量が増加する様子を確認することができ、特定の場所がそれぞれ人間の意識活動を担当している様子がわかるようになっています。
そしてさらに、このような脳による意識活動というのは、まるで筋肉が疲れると体を動かすのが難しくなるのと同じように、難しいことを体験した後には能力の低下が起こることがわかっています。
ある実験では、被験者に対して時系列に沿って過去の出来事を思い出させるのですが、その際にはより簡単な「過去から現在へ」とは逆の「現在から過去へ」という順序で思い出すことを強制。簡単な方法を意識的に避けて面倒な方法を採る自己統制心(Self-control)を発揮させたわけですが、このように意識活動をつかさどる脳の前頭葉部分に負荷を与えると、引き続き行われたタスクでの処理能力が一気に低下したことが明らかにされています。
By Roy
また、そのような状況では前頭葉で多くのエネルギーが消費されて、血中に含まれるグルコース濃度が急激に低下することが明らかにされています。さらに興味深いことに、実験中の被験者に砂糖入りの飲み物を与えると、自己統制心の能力が復活してパフォーマンスが上がることも確認されました。
このように、自己統制心にはエネルギーが必要だということが明らかにされたわけですが、アメリカ・オハイオ州立大学のBrad Bushman氏らによる研究チームはさらに、意識の「攻撃的な衝動」に対する脳活動の様子を血中のグルコース濃度をトラッキングすることで調査しました。
一週間にわたる実験には、結婚している夫婦がペアで参加。血中糖度を毎日測定しつつ、夜になるとその日に相手に対して抱いた怒りの感情レベルを評価します。その評価の方法が少し変わっていて、相手に見立てた人形を用意しておき、怒りのレベルに応じて針のピンを突き刺すことでレベルを表現。これ以上ない方法で怒りが表現されるわけですが、一週間の実験の結果からは血中のグルコース濃度が低くなるほど、刺されたピンの数が増加するという傾向が明らかになりました。
By Philippa Willitts
人形を相手に見立てた方法で怒りの感情が表現されたわけですが、実験チームではさらに直接的な方法でも同様の傾向が見られるかを検証しました。同じように夫婦が参加した実験では、両者を別々の部屋に入れた状態にしてコンピューターゲームで対戦させました。そして勝負に負けた側には罰ゲーム的に不快なノイズ音が浴びせされたのですが、なんとこのノイズ音の大きさと長さは勝者が設定できるようにされていました。ノイズ音の音量は最大で105デシベルという大音量に設定することが可能になっていました。
そして実験の結果、先述のピンと人形を使った実験と同じように、血中のグルコース濃度が低くなるほどノイズの音量は大きく、長さは長くなるという、じつに恐ろしい傾向が明らかになったのです。
このように、人間の意識活動をつかさどる脳の働きはグルコース(ブドウ糖)の濃度によって大きく左右されることが確認されました。心理的に負担がかかるタスクに取りかかる際や、夫婦で込み入った「会議」を行うような場合にも、定期的にスイーツや糖分を摂取したほうが良好な結果を生むことにつながると言えそうです。
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