食べても食べても空腹を感じるのはなぜか?

By LoKan Sardari

ハーバード・メディカル・スクールで教授を務めながら、ボストン小児科病院のNew Balance Foundation Obesity Prevention Centerにて指導を行っているDavid S. Ludwig氏と、NuSIで副社長を務めるMark I. Friedman氏が、The New York Timesにて「肥満とダイエット」に関するさまざまな真実を明かしており、「なぜ食べても食べても空腹を感じるのか?」という疑問に対する答えを明かしています。

Always Hungry? Here’s Why - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/05/18/opinion/sunday/always-hungry-heres-why.html


◆肥満になるまでのプロセス
肥満は熱力学の第一法則、つまり物体が変化する際にはエネルギーは出現も消失もしない、という「エネルギー保存の法則」から考えることができるとされています。このエネルギー保存の法則を人間の体に当てはめると「カロリー摂取量からカロリー消費量を引くことで、体内に残るカロリー量が導き出せる」とのことで、消費し切れなかったカロリーが体内に蓄積して脂肪になる、という「肥満になるまでのプロセス」はまさにこれ、というわけ。

◆なぜ食べ過ぎてしまうのか?
肥満を防ぐための単純な解決方法は、類いまれなる意志の力で食欲をセーブし、食べ過ぎないことです。しかし、多くの人にとって長期間食欲を抑えて生活することは至難の業である、ということも容易に想像がつきます。現在では多くの人々が健康に気を配るようになり、政府・栄養学団体・食品産業などがこぞってカロリーバランスの重要性を訴えていますが、なぜ人間は「つい食べ過ぎてしまう」のでしょうか?

By Lwp Kommunikáció

食べ過ぎは、細胞組織の液体と血液の圧力バランスが崩れ、細胞組織に水分が溜まって腫れる「むくみ」という症状の人が「水を飲んでも喉が乾く理由」によく似たものであると筆者のLudwig氏とFriedman氏は語ります。むくみがある人は大量の水を飲んでも喉が渇き続けることがあるそうで、これはむくみの症状により体内の水分が血中ではなく細胞組織内に溜まってしまい、体が「水分が必要である」と誤認してしまうから、とのこと。食べても食べても空腹感を感じてどんどん太ってしまうのはこれと同じような現象が体内で起きているからのようです。

カロリーを体内にためればためるほど、体内を循環している血液中で必要なカロリー量は少なくなっていきます。本来カロリーを含んでいる必要がある血液中ではなく、その他の場所に脂肪としてカロリーが蓄積することで、血液は体中のあらゆるエネルギーを必要とする部位にエネルギーを供給することができなくなり、より多くのカロリーを求めるようになるとのこと。つまり「空腹を感じるのは、自分が太ってきたから」のようです。

By Gareth Williams

◆カロリー摂取量を調整すると
それでは体重を減らすにはどうすれば良いのでしょうか?ダイエットのためにカロリー摂取量を減らす人も多いかと思いますが、カロリー摂取量を減らすことは短期的な減量には成功しますが、空腹感が増し、体がエネルギーを蓄えるために新陳代謝が悪くなります。これは継続的にダイエットを続けるにはあまり良いコンディションとは言えません。反対に多くのカロリーを摂取すると、新陳代謝が良くなるので1日に消費するカロリーは増えます。しかし、運動などを行わなければそれ以上に体重の増加を加速させることになる、とのこと。このように、カロリーバランスを調整して体重を減らそうとしても、体重を戻そうとする生理現象によりダイエットは難しくなる、というわけです。

食べ過ぎても食べなさ過ぎても体重は思うようにコントロールできないものであるため、肥満症研究者の中には「体重は遺伝子によりあらかじめ設定されたもの」と考える人もいるそうです。

By Matt Madd

◆インスリンと体重
結局のところ、遺伝学・身体活動・睡眠・ストレスなどなどあらゆる生物学的要素が、肥満と密接に関わっています。しかし、1つだけ体重の増減において大きな役割を担うものがあり、それがホルモンの一種であるインスリンとのこと。

インスリンは血糖値を下げる働きをするホルモンで、糖尿病の治療時に使用されたりするものです。このインスリン治療で過度のインスリンを摂取すると体重が増加し、反対にインスリンが不足している場合には体重が減少するそうです。

By sriram bala

このインスリンと深く関わりを持つのが炭水化物です。炭水化物を摂取すると血糖値が上昇するので、体内でインスリンが生成されます。体内のインスリン量が増えれば体重増加につながるので、これを抑えるために炭水化物の摂取を控える、低炭水化物ダイエットというダイエット方法もある程です。

◆ダイエットの未来
脂は炭水化物の約2倍のカロリーを持っています。Ludwig氏と彼の同僚の研究によると、21人の肥満成人に低脂肪や低炭水化物などのさまざまな食事によるダイエットを実施させたところ、10~15%の減量に成功したとのこと。この実験結果からダイエット時はカロリーを摂取してOKだということを理解したLudwig氏とFriedman氏は、カロリーをどの栄養素から摂取するかや、摂取する炭水化物の種類(消化・吸収の速いものやそうでないもの)によって、体重の増減は大きく異なってくるのではないか、と推測しているようです。摂取する栄養素や炭水化物の種類によってダイエット時の効果が大きく異なってくれば、カロリー制限してダイエットをする必要はなくなるかもしれない、とも示唆しています。しかし、摂取する栄養素に関する研究はまだまだ進行中のようで、多額の投資を行いより進んだ研究を行っていくべき分野である、とコメント。

2人は肥満治療はカロリーよりもダイエットの品質により傾倒していくだろうとしており、将来的には「何を食べるか」を厳格にコントロールすることで体重をコントロール可能なシステムも生まれるに違いない、と述べています。

By Daniela Vladimirova

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in サイエンス,   , Posted by logu_ii