大気中の二酸化炭素濃度が上昇すると作物の栄養価が低下してしまうことが判明
by Adam Simmons
小麦・米・トウモロコシという3つの作物は人間の栄養源として大きな役割を担っていますが、大気中の二酸化炭素が増加することによってこれら作物の栄養素が減少してしまうことが明らかになりました。
Increasing CO2 threatens human nutrition : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature13179.html
Increasing CO2 may threaten human nutrition | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2014/05/increasing-co2-may-threaten-human-nutrition/
地球上の人々は現在、日々の栄養源の約60%を小麦・米・トウモロコシといった作物から得ており、発展途上国においてその割合は70~80%にまで増加します。そしてこのカギとなる栄養素が亜鉛と鉄。これらは作物が育つ過程で土から吸収されるものです。
Samuel S. Myers氏らが行った研究によると、大気中における二酸化炭素レベルの上昇で、穀物や豆科植物に含まれる亜鉛や鉄、そして場合によってはタンパク質が減少することが分かりました。
研究では小麦・米・トウモロコシ・大豆・エンドウマメ・モロコシなど143種類の作物を、通常の環境下と二酸化炭素の濃度が高い環境下で育て、その栄養価の違いが比較されました。2012年における大気中の二酸化炭素濃度は393.1ppmですが、40~60年後には約550ppmにまで上昇しているとみられているため、実験では人工的に二酸化炭素濃度が550ppmの環境をオーストラリア・日本・アメリカに作りだし、1~6シーズンにわたって作物の栄養レベルを調査。
by United Nations Photo
その結果、二酸化炭素濃度が高い環境下で育ったC3植物(イネやコムギといった主要作物)と豆科植物に含まれる亜鉛と鉄分の量は通常環境で育った作物に比べて少ないことが判明しました。ただし、エンドウマメにおける栄養素の減少量はわずかで、C4植物(高温や乾燥、低CO2、貧窒素土壌など苛酷な気候下に適応した植物)においては栄養素の減少が見られなかったとのこと。これはC4植物がC3植物に比べて効率的に二酸化炭素を固定できるためと考えられています。
大気中の二酸化炭素が増えると作物内の炭水化物が増加し、その代わりに栄養素が減少する、という仮説もありましたが、作物によって栄養素の減少には差があり、現段階でハッキリした理由は分かっていません。
by ht
大豆やナッツ類にはフィチン酸塩という反栄養素が含まれており、消化管の中で亜鉛や鉄、マグネシウムなどのミネラルと反応し、腸からミネラルが吸収されるのを妨げる働きをします。今回の調査で、小麦に含まれるフィチン酸塩レベルに減少が見られたのですが、例え植物内でのフィチン酸塩レベルが二酸化炭素濃度の上昇によって下がってしまっても、人間の体内で利用される亜鉛の量は変わらないことも判明。なお、小麦以外の作物についてフィチン酸塩レベルは変化しませんでした。
なお、二酸化炭素の増加によって作物の栄養素が減少するという問題だけではなく、人口増加によって食糧自体が不足するという問題も考えられており、現在では食糧問題を解決するために新食材「パワー小麦粉」が開発されたり、3Dプリンターで食べ物を印刷する方法も考案されています。
by Dan Foy
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in 食, Posted by darkhorse_log
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