紀元前1600年ごろに作られた世界最古のチーズが発見される
by Andrew McFarlane
ゴーダチーズの熟成期間は3~5年、チェダーチーズには10年以上熟成させるものがありますが、それらとは比べものにならないほどの熟成期間を経たチーズが中国のミイラから発見されました。
Great Gouda! World's oldest cheese found - on mummies
http://www.usatoday.com/story/tech/2014/02/25/worlds-oldest-cheese/5776373/
チーズを発見したドイツにあるマックス・プランク分子細胞生物学研究所のAndrej Shevchenko教授は、「我々は初期のチーズを発見しただけではなく、古代においてチーズがどのように作られていたのか、という直接的な証拠も得たのです。チーズを作る方法は簡単かつ安価で、一般の人々にも広まっていたと考えられます」と語りました。ミイラの首と胸の中から発見されたチーズは、紀元前1615年ごろに作られたと考えられており、ラクターゼが含まれていないタイプのものでした。
ミイラ自体は1930年にスウェーデンの考古学者によって中国北西部にあるタクラマカン砂漠で発見されていたもの。青銅器時代の人々は親類の遺体をボートのような木製の入れ物に入れて、現在は存在しない川近くの砂丘に埋葬していました。この時、入れ物は牛皮できっちり巻かれ、見た目はまるで真空パックにされたようだとShevchenko教授は語ります。
砂漠の乾いた環境と塩分を多く含む土によって遺体は腐食を逃れ、フリーズドライの状態になります。発見されたミイラは明るい茶色の髪で、フェルトの帽子をかぶり、ウールのケープとレザーブーツを履いていました。墓に入っていた植物の種や動物の組織を分析した結果、埋葬は紀元前1450年ごろから1650年ごろに行われたと見られています。
ミイラの首や胸から発見された奇妙な塊を分析してみたところ、塊の成分はタンパク質と脂肪で、Shevchenko教授らはこれをバターやミルクではなく、チーズであると断定。なぜ死者と一緒にチーズを埋めたのかは明らかではありませんが、Shevchenko教授は供え物のようなものではないか、と考えています。
チーズはバクテリアとイースト菌で牛乳を発酵させたもので、これは現在でもケフィアなどを作る際に用いられる技術です。しかし、現在食べられているチーズの多くはケフィアを作る方法ではなく、レンネットという哺乳動物の胃で作られる酵素によって発酵させられるものであり、これまでチーズの始まりは「動物の内臓で作られた袋に牛乳を入れて運んでいたところ、偶然チーズに変化した」という考えが一般的でした。そのため、もし本当に人々がバクテリアとイースト菌でチーズを作っていたとしたら、チーズの歴史は大きく変化する可能性があります。
by Hans Splinter
レンネットを使ってチーズを作るには若い動物を殺す必要がありますが、ケフィア作成と同じ方法を使うとその必要はありません。Shevchenko教授は、この方法が中東で生まれ、その簡単さと低コスト故にアジア全体に広まったのだと主張しています。ケフィアはラクターゼが少ないことから、乳糖不耐症が多いアジアの人にも受け入れられたのだ、とのこと。
これまでに、ポーランドでは7000年以上前のチーズこし器の破片が発見されており、デンマークではチーズ作りに使われた可能性がある5000年前の容器が発見されていますが、実存する最古のチーズを発見したのはShevchenko教授らのチームが初めて。しかし、ヨーク大学のOliver Craig教授は、「タンパク質は腐食が早く、レンネットよりも早期にケフィアと同様のチーズ作成方法が取られた、と結論づける証明は難しい」と考えています。
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