サイエンス

自然が動物や人類の体を数千年の時を超えて「保存」する方法とは?


地球では長い歴史の中で膨大な数の生物が登場しては絶滅してきましたが、一部の生物の体、あるいはフンや足跡は化石となって現代まで残されています。また、場合によっては化石になる以外の方法で生物の体が保存される場合もあるそうで、「自然が生物の体を保存する方法」について科学系メディアのLive Scienceがまとめています。

Frozen mammoths, bog men and tar wolves: Ways nature preserves prehistoric creatures | Live Science
https://www.livescience.com/how-nature-preserves-prehistoric-creatures.html

◆1:凍る
動物の体を保存する最もよい方法の1つが「凍る」ことだとのこと。温度が低いと腐った肉を分解する微生物の成長が妨げられるため、体が腐るのを止めることができます。実際、シベリアなどの永久凍土の中からはマンモス子馬などが発見されているほか、「オオカミから犬に進化する途中かもしれない動物」のミイラも見つかっています。

「オオカミから犬への進化途中の種」かもしれないミイラが良好な状態で永久凍土から見つかる - GIGAZINE


永久凍土から発見される動物は単に体が保存されているだけでなく、胃の中の食物まで残っているそうで、これは遺体が急速に凍結して腐敗が防がれたことを示しています。また、動物だけでなく人間も凍った状態で保存される場合があり、エベレストなどの険しい山には途中で息絶えた登山家の遺体が残っているほか、アルプス山脈では紀元前3300年頃に死亡した男性のミイラであるアイスマンも発見されています。

◆2:泥炭地に沈む
体組織の腐敗を防ぐ方法としては、凍るなどして低温状態を保つほかに「酸素がない状態を保つ」というものがあります。酸性の泥炭が滞積した沼地であるピートボグ(泥炭地)は、強酸性・低温・酸素の欠乏といった条件がそろっていることから、底に沈んだ動物の皮膚や内臓が長期間保存されるとのこと。また、沼の表面に生えるコケが放出する化学物質も、細菌の増殖を停止させる役割を果たすそうです。

泥炭地でミイラ化した遺体は湿地遺体と呼ばれ、近年のものでは第一次世界大戦で死亡したロシア兵やドイツ兵の遺体が、古いものでは紀元前の遺体も数多く見つかっています。

湿地遺体の中でも特に有名なのが、1950年にデンマークで発見されたトーロンマンです。最初にトーロンマンを発見したのは泥炭を切り出していた民間人でしたが、遺体の表情まではっきりわかるほどの保存状態だったことから、最近死んだ人ではないかと考えたとのこと。ところが、その後の放射性炭素年代測定により、トーロンマンが死亡したのは鉄器時代の初期に当たる紀元前400年頃と推定されました。

トーロンマンの推定年齢はおよそ40歳で、内臓もよく残っており、最後の食事は野菜が入ったおかゆのようなものだったことも判明しています。トーロンマンの首には編み込みの革ひもが巻き付けられており、死因は絞殺だったとみられていますが、死後に目と口が閉じられていたことから、犯罪者ではなく宗教的ないけにえだった可能性が高いと考えられています。

以下の写真が、博物館で保存されているトーロンマンの頭部です。当時は全身を保存できるほどの技術がなかったため、頭部のみを切断して現在はレプリカの体をつなげているとのこと。

by RV1864

また、泥炭地に沈んでいるのは人間の遺体だけではなく、ボグ・バターと呼ばれる乳製品も見つかっています。ボグ・バターは木製の容器などに詰められた状態で泥炭に埋められており、この習慣は鉄器時代までさかのぼることができるとのこと。宗教的な理由でバターを泥炭に埋めたという説や、泥炭地が食物の保存に適した場所であることから貯蔵目的で埋めたという説、熟成あるいは発酵させて独特の風味を出す目的だったという説などもあります。

by Annie Gormlie

◆3:タールピットに沈む
一部の地域には天然アスファルトの池であるタールピットが存在し、粘着性の高いタールにはまった動物はそこから抜け出すことができず、そのまま死んでしまうことがありました。タールピットにはまった動物の骨は数千~数万年も保存され、現代になって発掘され始めています。

カリフォルニア州ロサンゼルスにあるラ・ブレア・タールピットは、太古の動物たちの骨が数多く発見されている場所であり、中には9000年前の女性の骨もあるとのこと。発見された骨が展示されているラ・ブレア・タールピット博物館によると、1913年以来350万を超える標本が見つかっており、今後も新たな遺物の発見に向けて作業が続けられる予定です。

ラ・ブレア・タールピットからは600を超える動植物が見つかっていますが、そのほとんどは大型動物の骨だそうで、中でもアメリカライオンダイアウルフといった肉食獣が多いとのことです。

by Konrad Summers

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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