スーパーマーケットに並ぶ「バナナ」が菌により危機的状況にさらされていることが判明

By Shubert Ciencia

バナナにはとても多くの品種が存在するのですが、その中で最もメジャーなものがキャベンディッシュ種で、日本のスーパーマーケットで売られているもののほとんどがこの品種になります。そんなキャベンディッシュ種が、フザリウムという菌の変種により壊滅的なダメージを受けそうになっていることが判明しました。

Fungus threatens top banana : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/fungus-threatens-top-banana-1.14336

現在、世界の輸出バナナの大部分を占めているキャベンディッシュ種ですが、これの前にはグロ・ミシェル種というバナナが輸出バナナのメインを担っていました。グロ・ミシェル種はFusarium oxysporum f.sp.cubense(Foc)と呼ばれるフザリウム属の土菌類に弱く、Focに強い耐性を持っていたキャベンディッシュ種に輸出バナナのメインの座を奪われます。

By Jekson Robertlee

しかし、このキャベンディッシュ種はFocの変種であるFoc熱帯種4(Foc-TR4)に弱く、感染すると実が腐ることが発覚、この菌が世界のバナナ輸出の80％を担っているラテンアメリカにまで来ることになれば、キャベンディッシュ種は輸出バナナのメインから外れることになり、スーパーマーケットでは他品種のバナナを見ることになるかもしれません。

Foc-TR4は1990年代にアジアで初めて見つかり、これまでは台湾・インドネシア・マレーシア・フィリピン・中国・オーストラリアの一部地域で検出されました。しかし、2013年の10月29日にヨルダン、11月にはモザンビークとこれまで検出されなかった土地でFoc-TR4が見つかり、専門家たちはこの菌が世界中に広まることを危惧するようになります。バナナ輸出業の数十億ドル分を占めるキャベンディッシュ種ですが、Foc-TR4がラテンアメリカで検出されるようになれば、その供給量は現在の10分の1程度にまで減少するのでは、と専門家は言います。この菌がどうやってヨルダンやモザンビークへ渡ったのかは不明ですが、出稼ぎの労働者が汚染土壌を持ち込んだり、バナナを増殖させるための根や茎がFoc-TR4に感染していたのではと考えられているようです。

By kendra k

アジアの一部の農場では、このリスクを少しでも減らそうと努力しており、キャベンディッシュ種の組織培養により、一部にFoc-TR4への耐性を持った突然変異種の培養に成功しています。これらの変種を輪作のような手段と組み合わせることで、Foc-TR4に汚染された土地でもキャベンディッシュ種が育てられるよう工夫が凝らされているようです。

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また、アジアの野生のバナナであるMusa acuminata malaccensisは、Foc-TR4に対する耐性を持つようで、研究者はこれの耐性遺伝子をキャベンディッシュ種に取り入れようと実験している、とのこと。遺伝子組み換えを行った新しい品種は、18か月にも及ぶオーストラリアの汚染された土地での実地実験の後に、クイーンズランド工科大学のCentre for Tropical Crops and Biocommoditiesでセンター長を務めるJames Dale氏から「非常に有望」という評価を受けました。しかし、まだ十分な結果を得られたわけではないとのことで、これからの進展に期待が寄せられています。

このように古典的な品種改良や、これまで制限されてきた遺伝子工学を応用することで、Foc-TR4に耐性のある新しいキャベンディッシュ種を生み出すことがバナナ生産の進歩になるのではと考えられているようです。また、バナナは世界中に何百もの品種が存在するので、ある品種が疾病にかかっても、他の疾病に強い品種が存在し、これの耐性遺伝子を取り入れることも可能では、と考えられています。

By Christopher