東日本大震災チャリティアニメ、山本寛監督新作「blossom」ワールドプレミア

東京国際アニメフェア2012のステージイベントで、3.11東日本大震災チャリティアニメ「blossom」のワールドプレミアが開催されました。この作品は、「らき☆すた」「かんなぎ」「フラクタル」などで知られる、ヤマカンこと山本寛(やまもとゆたか)監督が手がける最新作。会場に姿を見せた監督からは、今後につなげる強い思いが語られました。
Project blossom
http://ordet.jp/#blossom
MCを務めたのは千葉麗子さん。元アイドルで、現在は実業家として活躍しています。
千葉麗子(以下、千葉):
山本寛監督、3.11東日本大震災チャリティアニメーション「blossom」ワールドプレミアを開催いたします。

皆さんこんにちは、千葉麗子です。チバレイです。私自身、福島県出身ということで、南相馬市に高校時代の恩師がいたり、おばあちゃんが福島市に住んでいたりします。今はヨガの講師をしていて、福島にも行くんですが、まだ何も終息していない状況です。そんな中、今日は東京国際アニメフェアで山本監督とお会いできるのを楽しみにしてきました。山本監督とは同世代で、どんな作品なのか楽しみです。

では、今回のチャリティアニメのプロデューサー、竹内宏彰さんをこの場にお迎えしたいと思います。盛大な拍手でお迎え下さい。
竹内宏彰プロデューサー(以下、竹内):
皆さんこんにちは、アニメーションプロデューサーの竹内宏彰です。今日はようこそお越し下さいました。実は山本監督、2分前に会場に到着しました。千葉さんはまだ監督とはお会いしていない状態です(笑) 今日はよろしくお願いします。

千葉:
よろしくお願いします。竹内さんは「マトリックス」のアニメ版「アニマトリックス」のプロデューサーを始め、数々の国際的なアニメのプロデューサーをされています。今回の「blossom」でもプロデューサーを務めています。
それでは、監督が到着されたようですので……「blossom」の原作、監督、演出、絵コンテを担当されました、山本寛監督です。山本監督はアニメ「らき☆すた」「かんなぎ」「フラクタル」、映画「私の優しくない先輩」など、数多くのヒット作品を手がけました。
山本寛監督(以下、山本):
どうも、山本です。千葉さん、はじめまして。山本と申します。

千葉:
はじめまして。監督、49年生まれですか?チバレイ、50年生まれです。
山本:
あっ、1つ違いですか。
千葉:
同学年です。
竹内:
プライベートな話はそのぐらいにして。
山本:
はい、どうも、山本と申します。マジで今着きました。そして、マジで今、モノを納品しました。
千葉:
山本監督から会場のみなさんに、作品の内容に関して教えてもらえますか?
竹内:
今日、時間が30分ですから。
山本:
非常にこだわって、ギリのギリまで粘った作品です。見てもらったら「ああ、こういうことか」というのは分かってもらえると思います。この作品を一言で表すのはなかなか難しいのですが、東日本大震災を越えて僕らはやっていくんだと、まだスタートに過ぎないと。短いムービーではありますけれど、どう受け止められるかというのはみなさん、人それぞれだと思います。その反応を、今から真摯に受け止めつつ、今までのやたら噛みつくヤマカンはなりを潜めて、この作品に関しては、これからの作品に関しては、皆様の意見を大いに参考にしながら手探りで進めていかなければならないと思っています。この作品はあくまで第1弾と位置づけております。

blossomのスタッフ陣

竹内:
山本監督ご自身ではあまり言いませんが、「かんなぎ」は宮城県の仙台を舞台にしておりまして、そのチャリティで被災地を訪れて、個人でも名前を伏せて十数回、炊き出しのお手伝いに行かれたそうです。
山本:
数えてみたら9回でした。
竹内:
9回でしたか、すいません。昨年9月に私も山本監督と一緒に南相馬市に行きまして、市長と会って、こういうアニメを作るものとして何かできないかというお話をしました。すると、「山本さん、アニメを作ってくれ」と。アニメを作って、一人でも多くの人に作品を見て欲しい、という話になりまして、山本さんが作品を作ろうというきっかけになったという次第です。
千葉:
なるほど。
山本:
南相馬へは3回行っています。その前に岩手にボランティアツアーに行っていて、そのときに知り合った仲間と行きました。その仲間にはこういうテーマで作品を作っているということを言っていたので、昨日の晩「完成しました」とメールを入れました。すると喜んでいるというか「がんばってくれ」というエールが送られてきました。その人たちに届けるのはもうちょっと先になると思うのですが、まずはみなさんにこのムービーを見て頂いて、どのように思われるのか、繰り返しになりますが、真摯に受け止めたいと思っています。
竹内:
実は千葉さん、このプロジェクトは国際的な展開もありまして、もともとこれを作るきっかけになった外国の方がいらっしゃいます。今回、緊急で来日していただいたので、ご紹介頂ければと思います。
千葉:
それではさっそく登場していただきましょう、本日のスペシャルゲストです。「blossom」の海外プロデューサー、グレゴリー・ルードさんです。グレゴリー・ルードさんはニュージーランド出身のクリエイターです。イギリスの国営放送局BBCでの映像を始めとして、国際的な映像を数多く監督してきました。
また、本作のスーパーバイザーとして参加していただいたビンセント・ショーティノさんにも登壇していただきます。ビンセント・ショーティノさんはSkype Japanの創設メンバーで、現在はアメリカ最大手のアニメ配信会社クランチロールの日本代表を務めています。
グレゴリー・ルード(以下、グレゴリー):
来ることができて大変光栄です。本日はどんなプロジェクトをやろうとしているのかを皆さんにお話しします。本日みなさんに見ていただく「blossom」は、山本監督とシガー・ロスがコラボした映像で、これをはじめとして、世界的に同じようにいろいろなアーティストに参加してもらうプロジェクトのきっかけにしたいと考えています。
今回は被災者の方々、特に子どもたちに寄付を集めるためのチャリティですが、みなさんも知っているようなロックアーティストや、有名なアニメアーティストともコラボレートしたプロジェクトにしていきたいと思っています。他のアニメスタジオの方々にも協力してもらって、子どもたちの力になりたいと思っています。プロジェクトの詳細をもっと知りたい人はクランチロールや、その他のメディアにも掲載していくことになるので、そちらをご覧になって、ご協力下さい。

竹内:
昨年グレゴリーさんが来日したとき、ビンセントさんから紹介を受けまして、私が山本監督とグレゴリーさんを引き合わせました。会った瞬間から意気投合して、2人で何かやろうというプロジェクトがスタートしました。
最初、山本さんには違うアーティストの曲が提供されたんですが、山本さんとグレゴリーさんがディスカッションをして、今回、シガー・ロスというミュージシャンの曲と山本さんの映像をマッチさせようということになりました。プロデューサーなのですが、実は私も本日の映像はまだ見ておりません。先ほど仕上がったそうです。
山本:
寝てないので、頭が真っ白です。もっと面白いことを言うはずだったんですけど(笑)
竹内:
一言、ビンセントさんからもご挨拶いただければと思います。
ビンセント・ショーティノ(以下、ビンス):
ほとんどグレゴリーの方から紹介してもらった通りです。今、世界中の人たちは東北に注目しているので、このアニメの力も使って、なんとか助けになれればと思っています。弊社としては日本のアニメを海外に配信しているので、グレゴリーが何かやりたいと声をかけてくれたので、日本と海外と一緒になって大きなコラボレーションをして、東北の力になれればと思っています。今日、これをスタートとして頑張っていきたいです。

千葉:
それではさっそく、作品を上映したいと思います。
竹内:
作品ですが、最終的に何分ぐらいになりましたか?
山本:
数えていません(笑)、たぶん5分ぐらいです。
千葉:
世界初ですからね。
竹内:
こういう形で公開するシガー・ロスバージョンはこれが最初で最後になって、しばらく次の展開まで作戦を練りたいと思います。みなさん、すごく幸運だと思います。
千葉:
ではお願いします、「blossom」です。

できあがった映像を見守る竹内プロデューサー、山本監督、千葉さん。




竹内:
本来、プロデューサーというのは作品を見ているみなさんの表情を見なければいけないんですが、私も作品を見入ってしまいました。
山本:
すいません、100%の出来ではないんですよ。さっき納品したところで、追い込みきれなかった部分はあります。ただ、震災をテーマにこれからやると嘯いている以上、これぐらいの苦労は被災地の苦労に比べれば数億分の一だと思いますので、今後も苦労を味わわなければと覚悟を新たにして参りました。

山本:
グレゴリーさんからのオファーがあってこのムービーを作らせてもらうことになったんですが、僕の思いとしては、まだ東北に対しては何もお付き合いしていない状態です。なので、これが僕の東北へのラブレターだと思っています。これから東北とどんなお付き合いができるのかを、謙虚にさぐっていきたいと思っています。
先ほどグレゴリーさんから子どもたちへ向けてというのがありました。忘れてはいけないというテーマをお送りしたいと思っていますが、悲劇として忘れてはいけないということではなく、東北が奇跡の復興を遂げられるかというのを話題にして欲しい、世界中の人たちにアピールしたいと思っています。そのきっかけになるかわかりませんが、僕はそういう祈りを込めてアニメを作っていきたいと思っています。
竹内:
実はもう1つお知らせがあります。この「blossom」、私はインターナショナルバージョンと名付けましたが、ジャパンバージョンも実は存在します。今日、オープニングで流した音楽は山本さんと親交の深い鹿野草平さんのものです。鹿野さんがこのアニメを見て、日本のブラスバンドの方々に演奏して欲しいという思いを込めて作曲して下さったものです。
1つのアニメに1つの音楽である必要はないと思っていますので、鹿野さんの曲を今後、学生の方々に演奏していただいたりと思っていますし、個人の作曲家の方が自分で作った音楽をつけていろんな人たちに見せていく、そういったこともできるようにと考えております。
また、このプロジェクトはいくつかの会社に協賛いただいています。学研さんにはチャリティ協賛という形をいただいております。学研さんの雑誌にはこの鹿野さんのジャパンバージョンを無料でつけさせていただいて、多くの人に見ていただけたらと思っています。また、記事等でご報告できればと思っています。それからグッドスマイルカンパニーさん、ブース出展しておりますが、3月25日にブースで情報をいくつか流させていただければと思います。
クランチロールを含め、企業の枠を越えていろんな方々が山本さんの思い、グレゴリーさんの思いに共感して、国とか人種とかを乗り越えてご協力いただければという風に、プロデューサーとして思っています。
千葉:
もっとお話を伺いたかったのですが、そろそろお時間ですので、最後にお一人ずつメッセージをお願いします。
ビンス:
先ほど山本監督が目標を述べられていましたが、私も同じように思っています。震災で日本中の人が大きなショックを受けていますが、アニメと音楽で子どもたちにパワーを与えることができれば、20年後、30年後かもしれませんが、そこから素晴らしいものが生み出されてくると思っています。そのためにこのプロジェクトは非常に重要なものになってくるので、今年、頑張っていきたいです。

竹内:
情報はインターネットなどで随時アップデートしていきますので、引き続きご注目いただければと思います。よろしくお願いします。
グレゴリー:
私は音楽と愛の力を信じていて、みなさんの人生を変えることができると思っています。このプロジェクトを応援してくれるアーティストやミュージシャンも思いは同じです。できることからやっていくということで、ミュージシャンは音楽を、アニメクリエイターはアニメーションを作り、被災地の子どもたちの力になれればと思います。
みなさんもこの思いに協賛いただけるようであれば、寄付であったり、口コミで情報を広めていただければと思います。

山本:
「blossom」を越えた大きなものになるであろうこのプロジェクトに参加するとともに、間接的ではありますがこの作品と繋がりのある新しい連載が「アインザッツ」で次号発表される予定です。それが第2弾になると思います。どれだけの規模で、どれだけの波及力があるかわかりませんが、有言実行でやらせていただきたいと思っています。今後とも見守っていて下さい、よろしくお願いします。

千葉:
本日は皆さん、ありがとうございました。
山本監督は良くも悪くも注目を浴びやすい存在で、2011年に原作・監督を担当したアニメ「フラクタル」では、共同で原作に名を連ねていた作家の東浩紀さんとお互いに批判し合うようなやりとりも見られました。しかし、今回は震災のチャリティアニメであることもあって、自ら「やたら噛みつくヤマカンはなりを潜めて」と表現して、これまでとは覚悟が違うところを見せています。

・関連記事
「言いたいことは全部作品に込めた」山本寛監督、ノイタミナ新作発表会で語る - GIGAZINE
ノイタミナ2011年新作のスタッフ座談会、ノイタミナだからできたこと、ノイタミナじゃなければできたこと - GIGAZINE
1度はアニメ制作が中止された「となりの801ちゃん」が山本寛監督の手で改めてアニメ化決定 - GIGAZINE
若い作家たちを資金面・プロデュース面から支援する「動画革命東京」とは一体何なのか - GIGAZINE
・関連コンテンツ
You can read the machine translated English article East Japan great earthquake charity anim….