取材

水星探査機の試験機体を組み上げ中だったJAXA(宇宙航空研究開発機構)の「飛翔体環境試験棟」を見学してきました


映画「はやぶさ/HAYABUSA」の製作記者会見に伴い、通常時は公開していないJAXA(宇宙航空研究開発機構)内部の研究施設を見学する機会が設けられるということだったので、JAXA広報の阪本さんの案内のもと、内部を見せてもらいました。

今回見学できたのはJAXA相模原キャンパス内部でロケットのさまざまな性能をテストする「飛翔体環境試験棟」と、ロケット各部や衛星構体の強度などを測定する「構造機能試験棟」の2つ。


まず飛翔体環境試験棟の様子については以下から。JAXA|相模原キャンパス

JAXAの入り口近くには、M-V型ロケットが展示されていました。JAXA広報の阪本さんによると、ここにあるロケットは本物で、打ち上げがキャンセルとなって実験用に地上燃焼で使用した探査機用ロケットを、再度組み立て直してここに展示しているとのこと。


ロケットには2つのタイプがあり、このM-V型ロケットは固体燃料を使うロケットとしては世界でも屈指の大きさを持ち、性能ではアメリカよりも10年先を行っているだろうとのこと。


固体燃料のロケットは、液体燃料のものと違い、中で燃料が燃焼するため、ものすごい圧力に耐えなければならないのと同時に、ロケット自体は軽くなくてはいけないという相反した条件をクリアしなくてはなりません。M-Vロケットに使われている鋼は、JAXAで独自に開発されたもので、通常の高張力鋼の数倍の強度を持つとのこと。厚さがわずか5mmで、叩くと軽い音がします。


こちらはM-3SIIロケットの原寸模型。こちらも全段固体燃料によるロケットです。


1985年の打ち上げ当時、全段固体燃料のロケットを使って惑星探査をするというのは常識では考えられないことだったそうですが、JAXAでは固体燃料のロケットを研究しているうちにその性能が研ぎ澄まされていき、M-3SIIは世界初の「燃焼の制御が困難である全段固体燃料ロケットによる地球重力圏の脱出」を達成、その後継機であるM-Vロケットは、1号機から7号機までで4号機を除く6機が打ち上げに成功しているとのこと。


飛翔体環境試験棟に入っていきます。


2階から1階の試験設備を見下ろせる通路からの見学です。この試験棟では、2つのクリーンルームが設置されており、実際にここであかつきIKAROSが組み上げられたそうです。


もうひとつのクリーンルームには水星探査機の試験用の機体が置かれていました。写真中央の8角形をした銀色の機体が探査機。ヨーロッパで現在開発中の機体とドッキングして2014年に打ち上げ予定、その後スイングバイを繰り返し、2020年には水星に到着する計画とのこと。水星は熱の厳しい場所なので、強い太陽の光を浴びても故障しないように、ほとんど鏡と同じように光を反射するガラス質の表面に、金属を蒸着した構造になっています。


飛翔体環境試験棟では、実際に人工衛星などを打ち上げたあとの宇宙空間での環境をシミュレーションする設備もそろっており、これは真空の環境をテストする設備。この中に人工衛星を入れて中を真空にして、日向と日陰の温度差をシミュレートするために、液体窒素で大部分を冷やしつつ一方向から太陽光を模した強い光を浴びせ、耐久性を試験します。


宇宙空間だけではなく、ロケットに乗せて探査機を大気圏外まで飛ばす場合、振動、加速、打ち上げ時の音響など非常に強い負荷がかかるため、その影響で探査機が壊れてしまわないかを検査する設備も整っています。


左側の赤い枠がついた機械は水平方向の振動試験を行う装置。この上に探査機が乗せられ、強く揺さぶられます。右側のグレーの四角い枠に丸い台が乗っている機械は、逆に垂直方向の振動試験を行う機械。


はやぶさが水平方向の振動試験を受けている写真。


垂直方向の振動試験の写真。


これは慣性モーメントを計測する装置で、探査機に回転運動を与え、どれくらい力が作用しやすいかを計測します。


次回はロケットや衛星の構造的な強度を試験する「構造機能試験棟」の様子をお伝えします。

<続き>
ひまわりで放射線を吸い上げる仕組みやレールガンも研究中、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の「構造機能試験棟」を見学してきました - GIGAZINE

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in 取材,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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