サイエンス

アメリカでは人種間の政治思想の違いが縮小した一方で教育水準による違いが拡大している


アメリカにおける主要な政治イデオロギーはおおまかに「保守」「リベラリズム」「中道主義」の3つに分かれています。アメリカ人の政治思想を左右する要因としては人種が挙げられますが、新たな研究ではここ数十年で人種間のイデオロギーの違いは大幅に縮小した一方、「教育水準」による違いが著しく拡大したことが示されました。

Americans’ ideological differences have decreased by race, increased by education | PNAS Nexus | Oxford Academic
https://academic.oup.com/pnasnexus/article/5/4/pgag102/8586457

The political realignment of America: Education overtakes race as key ideological divider
https://www.psypost.org/the-political-realignment-of-america-education-overtakes-race-as-key-ideological-divider/

アメリカの保守主義は一般的に、「政府の規模縮小」「減税」「市場経済の重視」「厳格な移民取り締まり」「伝統的価値観の重視」「強固な警察力および国防」などを重視します。一方のリベラリズムは「社会福祉や経済規制に積極的な政府」「マイノリティや生殖の権利の強力な保護」「環境保護活動」「比較的寛容な移民政策」などを重視します。中道主義は両陣営の立場を併せ持つことが多いですが、選挙の際には保守主義の共和党か、リベラリズムの民主党のいずれかに投票することが多いです。

調査企業のギャラップが2025年に行った調査では、アメリカ人の35%が保守派、33%が中道(穏健)主義、28%はリベラリズムだと回答しています。政治的イデオロギーには人口統計学的な違いが顕著にみられ、アメリカでは「女性は男性よりもややリベラルで民主党に投票する可能性が高い」「異性愛者の男性は共和党に投票する可能性が高い」「黒人・ヒスパニック・アジア系の有権者には民主党支持が多い」といった傾向がありました。


今回、テキサス大学の政治学者であるスティーブン・ジェシー教授は、過去数十年間におけるアメリカ人の政治的見解の変化について、人種や教育レベルといった人口統計学的な観点から調査を行いました。

ジェシー氏は、アメリカ大統領選挙が行われた2008年・2012年・2016年・2020年・2024年に実施された、Cooperative Election Study(協同選挙調査)のデータを分析しました。この調査では合計25万人以上の回答者から、税金・中絶・移民・医療・環境といった政策に関する質問の回答が収集され、回答者の政治的イデオロギーを保守からリベラリズムまでのどこに位置するのかを評価しました。また、回答者の人種や学歴といったデータも収集したとのこと。

データを分析したところ、2008年時点では白人が最も保守的な傾向があり、黒人が最もリベラルな傾向がみられました。ところが、2024年までに黒人とヒスパニックの回答者が平均して保守的になったことで、こうした人種間のイデオロギーの違いが大幅に縮小しました。


これとは対照的に、学歴によるイデオロギーの違いは拡大しました。2008年の時点から、大卒者はリベラルで学歴の低い人は保守的という傾向がありましたが、2024年になると高卒以下の人や大学中退者がさらに保守的になり、大学や大学院の卒業者はさらにリベラルになったと報告されています。

学歴によるイデオロギーの違いが最も顕著だったのは2020年で、大学や大学院の卒業者は2016年と比べて大幅にリベラルになりました。しかし、2024年にはあらゆる教育レベルの回答者が全体的に保守派寄りにシフトしたため、大学や大学院の卒業者のリベラル度は2016年と同程度になり、高卒までの人々はさらに保守的になりました。教育レベルによる政治医的イデオロギーの二極化はすべての人種でみられましたが、白人の間で特に顕著だったとのことです。


以下の図は人種間のイデオロギーの違いを示したグラフで、縦軸が各グループの平均的なイデオロギーを、横軸が調査年を表しています。白人(黒色の線)・黒人(赤色の線)・ヒスパニック(緑色の線)・アジア系(青色の線)を見ると、次第に人種間のイデオロギーの違いが縮小していることがわかります。


以下は教育レベルによるイデオロギーの違いを示したグラフ。高卒または中卒(黒色の線)・大学中退(赤色の線)・大学卒業(緑色の線)・大学院(青色の線)を見ると、次第に学歴によるイデオロギーの違いが開いていることがわかります。


ジェシー氏は論文で、「この結果は、過去5回の大統領選挙の年において人種によるイデオロギーの違いが劇的に縮小した一方で、教育水準がイデオロギーの分断要因としてますます顕著になっていることを示しています。アメリカ人のイデオロギーは、人種を問わずより類似したものになってきています。その主な要因は、黒人が急激に右傾化したことにありますが、ヒスパニック系もわずかに保守的になったことも一員です。教育水準による違いは程度に多少の差はあるものの、すべての人種グループで拡大しています」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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