政治について意見の合わない人と話をするべき理由

日本では政治、宗教、野球の話題が雑談の「3大タブー」と言われることがありますが、アメリカ・バージニア大学で政治的な対立について10年にわたって研究してきた教育学者のレイチェル・ウォール氏は、むしろ政治をテーマに議論することでお互いの印象が前よりずっとよくなることがあるとして、「ホリデーシーズンに友だちや家族ともう一度話し合ってみては」と提案しました。
Why you should talk to people you disagree with about politics
https://theconversation.com/why-you-should-talk-to-people-you-disagree-with-about-politics-244610
◆身近な人と政治の話をするとどうなる?
ウォール氏によると、政治について意見が異なる人が議論をしても、その結果として政治問題に関する考えが変わることはめったにないとのこと。それでもウォール氏が政治的な議論を勧めているのは、対話を通じてお互いの印象が大きく改善することがあるからです。
重要なのは、ディベートや言い合いそのものではなく、その過程で会話がどのように進むかで、ウォール氏は「人々は、他の人が自分の考えに心から興味を持っていて、敬意を持って、穏やかに質問していることを感じると、防御を緩める傾向があります。攻撃的な質問に対して意見を投げ返すのではなく、自分が感じた誠実さをそのまま返そうとするわけです」と述べています。

◆お互いに関心を持つということ
「好奇心に基づくアプローチ」は聞き手と話し手に重要な効果をもたらします。まず、聞き手はそのような会話を通して、聞き手にとっては「悪い選択肢」だと考えている選択や投票をした話し手を、その人なりに合理的な判断をしたまっとうな人間だと思えるようになるとのこと。
好奇心に基づくアプローチにより、話し手はより共感できる存在になり、その選択が善意に基づいていることや、倫理的に健全だということがわかるようになります。その結果、話し手の状況や価値観からすると、その選択には理由があったと思えるようになります。
一方、注意深く耳を傾けられる経験は話し手にとってもポジティブなものです。
実際に、ウォール氏が政治的に対立している大学生同士に対話してもらい、3年後に聞き取り調査をするという実験を行ったところ、一番印象に残っていたのは意見を交わした相手のことでした。
学生たちは、自分を口撃してくると思っていた相手が誠実で敬意のこもった質問をし、自分の答えにしっかり耳を傾けていたことをよく覚えており、その相手のことを感じがいい人だと思ったことも忘れていなかったそうです。
◆民主主義への影響
こうしたやりとりは、政治的な意見が対立している人同士の理解を深め、最終的には民主主義にも貢献するとウォール氏は述べています。その根拠は3つあり、1つ目は憎悪や恐怖から生じる最悪の危機、つまり反対派の人間性をおとしめたり、権利を奪ったり、暴力を扇動したりするような政策やそのような政治家の支持を減らすことで、「反対派はあまりにも愚かで邪悪なので犠牲を払ってでも阻止しなければならない」という感覚を和らげることができるからです。
2つ目は、こうした対話は民主主義の最良の部分、つまり市民同士が理解しようとすることを促すことです。理解が民主主義にとって重要な理由について、ウォール氏は「他の人がどのような暮らしを送っているか、あるいはその人たちを突き動かした経験や関心、信念を理解することなく、すべての人が豊かに暮らせる社会を築くことはできません」と述べました。

また、前述の通り議論によって政治的な意見が変わる人はあまり居ませんが、中には誠実で思慮深い質問を通じて自問自答し、それまでとは異なる答えにたどり着く人も居るとのこと。これが3つ目の理由です。
例えば、ウォール氏が行った実験に参加したある大学生は、対話セッションで「あなたの信念がその選択につながったのはなぜですか?」と問われてから数年後のインタビューで「あれ以来ずっと、自分自身にその質問をしてきました」とウォール氏に打ち明けたそうです。
こうした経験から、ウォール氏は「健全な民主主義を維持するには、対話だけでなく行動も必要ですが、意見が異なる人の間で交わされるオープンで好奇心にあふれた会話は、人々が同じ人間であり、世界観や守る価値のある国を共有していることを思い出せてくれます」と話しました。
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in メモ, Posted by log1l_ks
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