「集中力」を支える脳幹ニューロンが特定される

作業中に周囲の音や動きが気になってしまう時、人間は不要な刺激を無視して重要な情報へ注意を向けようとするものです。ジョンズ・ホプキンス大学のニナド・B・コタリ氏らの研究チームが、こうした「集中力」を支える脳幹のニューロン群をマウス実験で特定したと報告しました。
Evolutionarily old brainstem neurons are required for the control of selective spatial attention | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-026-72340-9
Scientists discover ancient brain cells that help block distractions | ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2026/06/260624025426.htm

騒がしい部屋で相手の声を聞き取ったり、人混みの中で友人を見つけたりする時に必要なのが「選択的空間注意」と呼ばれる能力で、これは単に長時間作業を続ける能力ではなく、不要な刺激を無視して重要な情報へ注意を向ける能力を指しています。
注意の制御については長年にわたって前頭前皮質が中心的な役割を果たすと考えられてきました。前頭前皮質は人類などの霊長類で特に発達している脳領域ですが、鳥や魚のように高度に発達した前頭前皮質を持たない動物も特定の情報に注意を向けることができるため、コタリ氏らは前頭前皮質以外の脳領域にも注目しました。
コタリ氏らが着目したのは鳥や魚を含む脊椎動物に広く存在する、脳幹にある抑制性ニューロンの回路「PLTi」です。

今回コタリ氏らが行った実験は、人間の注意研究で使われるものに似た視覚課題をマウスに行わせるというもの。マウスは画面の正面に出る視覚情報に注意を向けて横に出る妨害刺激を無視し、正面の情報が示す位置を鼻でタッチすることができれば報酬を得られます。この課題を問題なくこなしていたマウスでも、コタリ氏らがPLTiを一時的に働かなくすると横に出る妨害刺激に強く気を取られるようになったとのこと。
コタリ氏らの研究チームに所属するシュリーシュ・P・マイソール氏は、「ADHDの特徴のひとつは弱い妨害刺激であっても注意がそれてしまうことです。私たちがマウスのPLTiを沈黙させた時に見たのはまさにそれでした」と述べています。一方で翌日にPLTiの働きを戻すと、そのマウスは非常に強い妨害刺激であっても無視できるようになったとのことです。
しかしこの結果だけでは、マウスが課題に失敗した理由が「見えにくくなったから」なのか、それとも「鼻で画面をタッチする動きがうまくできなくなったから」なのかを区別することができません。そこでコタリ氏らは妨害刺激がない条件で「単一の標的を見分けられるか」「左右どちらを鼻でタッチするかを選べるか」「課題に必要な方向へ鼻を向ける動作ができるか」を追加実験で調べました。その結果、PLTiを一時的に働かなくしても単一の標的を知覚する能力や課題に必要な運動の選択・方向付けは大きく損なわれていなかったとのこと。
一連の追加実験から、PLTiを不活化することで損なわれたのは競合する複数の情報を受け取り、それらを比較して最も重要な情報がある場所へ注意を向ける能力だけだということが示されました。マイソール氏はPLTiを含む脳幹のニューロンについて、「注意の選択エンジンのようなもので、今自分が注意を向けるべき最も重要な情報は何かという問題を解く助けになる」と説明しています。

また、コタリ氏らはPLTiが単に目立つ刺激へ反応するのではなく「今の課題で重要な刺激」と「無視すべき刺激」を分ける働きに関わると述べています。PLTiは目や注意をどこへ向けるかに関わる脳領域「上丘」と連携し、標的に注意を向けて妨害刺激を無視する働きを支えている可能性があるとのことです。
コタリ氏らは今後、PLTiが脊椎動物の空間的注意をどのように制御しているのか、そして人間の注意にどの程度関わっているのかを調べたいとした上で、ADHDや自閉症の人でPLTiの活動を測定することも検討しており、「PLTiの働きが異なっている場合は、注意に関わる障害を詳しく調べることで薬や治療法を探る手がかりになるかもしれない」と今後の展望を語っています。
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in サイエンス, Posted by log1b_ok
You can read the machine translated English article Brainstem neurons that support 'concentr….







