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スマホ画面に表示するプッシュ通知にAppleとGoogleは何をしているのか?


アプリを開かずとも新着情報を画面に自動でポップアップ表示させる機能が「プッシュ通知」です。マーケティングコンサルタントのジャック・コービー=テューチ氏が、「かつてはアプリからユーザーへ短いメッセージを届ける単純な仕組みだったプッシュ通知は、いまやOSとオンデバイスAIによって編集される状況へと変化している」とブログで解説しています。

What Apple and Google are doing to your push notifications | Jacques Corby-Tuech
https://www.jacquescorbytuech.com/writing/what-apple-and-google-are-doing-your-push-notifications

そもそもプッシュ通知の始まりはユーザー体験というよりも、バッテリー問題への対処でした。Appleは2009年に各アプリが個別にサーバーへ接続し続けるのではなく、端末とAppleの間に単一の持続的な接続を置いて通知を配信する「Apple Push Notification Service」を導入しました。Googleもその後、Cloud to Device Messaging、Google Cloud Messaging、そして「Firebase Cloud Messaging」へと仕組みを発展させました。

by Erik Pitti

つまりiPhone向けの通知はAppleのサーバーを、Android向けの通知はGoogleのサーバーを通る構造であり、両社は当初から通知を抑制したり、落としたり、優先度を変えたりする位置にいるというわけです。ただし、2009年から2017年ごろまでのプッシュ通知は比較的自由で、ユーザー側の制御もアプリごとのオン・オフ程度に限られていました。

流れが変わったのはAndroid 8 Oreoで通知チャンネルが導入された2017年です。GoogleはAndroidアプリで「メッセージ」「ダウンロード」「プロモーション」などのチャンネルを定義し、ユーザーはチャンネルごとに通知をミュートしたり、重要度を下げたり、完全にブロックしたりできるようになりました。


さらにAppleも2021年にリリースされたiOS 15でFocusモードやScheduled Summary、通知の割り込みレベルを導入し、通知をどの程度ユーザーに割り込ませるかをOS側で整理しました。特に「時間的に重要(Time-Sensitive)」の通知はマーケティング目的で使うべきではないとされ、通知そのものがOSに判断される対象となりました。

Android 13では通知権限が明示的なランタイム許可になり、ユーザーが許可しなければ通知を送れない仕組みになりました。Pushwooshの1600万台規模の調査でゲームアプリのオプトイン基盤が約3分の1減少し、ニュースアプリでも19%減少したことがわかっています。さらにBatchの2025年ベンチマークでは、Androidのオプトイン率が85%から67%へ低下し、クロスプラットフォーム平均が61%になったことが紹介されています。


この変化の一部は、ユーザーが自分の注意を守るための当然の権利といえます。しかし送信者から見れば、制御の一部はユーザーではなくプラットフォームに移っており、その判断は不透明で異議申し立てが難しく、さらにAIモデルによって行われるようにもなっています。

この見方の前提には、コービー=テューチ氏が先に論じたメールの変化があります。GoogleやYahoo、Microsoft、Appleはもはやメールを単に受け取って受信箱に並べるだけの存在ではなく、HTML構造や件名、送信者、ユーザーの行動履歴を解析し、メールを分類し、検索やアシスタント機能で再利用できるデータとして扱うようになっています。つまり、プラットフォームが送信者と受信者の間に「編集者」として存在する構造になっているといえます。

その結果、マーケティングメールでは「送れば相手の受信箱に同じ形で届く」という前提が崩れました。開封率はAppleのメールプライバシー保護やGmailの画像プロキシによって信頼しにくい指標になり、今後はクリックや購入などの行動、構造化データとしてどれだけ正しく解析されるか、AI要約でどのように表現されるかが重要になります。このメールで先に起きた変化がAppleとGoogleの2社によって支配されるスマートフォン通知の領域にも及び始めたとコービー=テューチ氏は指摘しました。

例えばApple Intelligenceはオンデバイスの基盤モデルと、Private Cloud Computeで利用されるより大きなモデルを組み合わせ、通知の要約や優先順位付けを行っています。通知要約が有効な場合、同じアプリやカテゴリーの通知はまとめられ、元のタイトルや本文がAI生成の要約に置き換わることがあります。

Google側ではGemini NanoがAndroidのAICore内で動作し、PixelやGalaxyの一部端末で通知要約や通知整理に使われています。AICoreは端末内のシステムサービスとしてモデルを保持し、機能ごとに調整された処理を行う仕組みです。


通知の送信者がこの編集に介入できる余地は限られています。iOSのNotificationServiceExtensionやAndroidの通知チャンネルで一部の制御はできますが、通知が要約されたのか、それともプロモーション扱いされて優先度を下げられたのかを知るAPIはありません。

ユーザーの行動を見ると、多くの通知はユーザーにアプリを即起動させるものではありません。4万人以上のユーザーから約2億件のモバイル通知を収集した研究だと、ユーザーは人からのメッセージや自分の行動に関係する通知を高く評価する一方、プロモーション通知の価値は低く見積もる傾向があることがわかっています。コービー=テューチ氏はこの知見を踏まえ、ユーザー自身の操作や待っている出来事に結びつく通知は宣伝目的の一斉通知よりもプラットフォーム側の編集を受けにくいと整理しています。

マーケターが見られる指標も不確かになっています。Apple Push Notification ServiceやFirebase Cloud Messagingが確実に返すのは「通知がプラットフォームに受け付けられた」という情報であり、それが実際に表示されたか、AIで要約されたかまでは分かりません。各種マーケティング基盤はSDKを通じて表示やタップ、セッション開始を記録できますが、それでも通知がどのように編集されたかは見えません。

この不透明さはAppleのMail Privacy Protectionによってメールの開封率が信頼しにくくなった状況とよく似ているとコービー=テューチ氏は指摘。こうした環境では通知文の書き方も変える必要があります。オンデバイスAIは通知を要点に圧縮するため、ブランドらしい前置きや気の利いた表現よりも、金額や名前、時刻、行動などの具体的な事実を先に置く方が意味を保ちやすくなります。

最終的にコービー=テューチ氏はプッシュ通知もメールと同じく、企業が完全に所有するチャンネルではなかったと論じています。これまでプッシュ通知はソーシャルメディアよりも自社で制御しやすいと思われていましたが、実際にはAppleとGoogleが配送経路・表示面・優先順位・要約を握っており、OSの更新ごとにその主導権はプラットフォーム側へ移っています。

AIエージェントが通知を読んで行動する時代となり、プッシュ通知はユーザーに読ませる文章ではなくAIが処理するきっかけにもなります。コービー=テューチ氏は「企業はプッシュ通知に頼りすぎず、アプリ内のメッセージや会員向け画面など、プラットフォームの編集を受けにくい自社所有の接点を強化する必要がある」と主張しました。

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in ネットサービス,   スマホ, Posted by log1i_yk

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