交流から直流へデータセンターは移行中、800ボルトの直流電力供給で次世代AIデータセンターが実現可能に

次世代のAIデータセンターでは従来のスタンダードである交流ではなく、直流での電力供給が流行する可能性を、世界有数のエンジニアリング誌であるIEEE Spectrumが報じています。
Data Center DC Embraces 800V Power Shift - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/data-center-dc

2026年3月に開催されたAIカンファレンスのNVIDIA GTC 2026では、AIを支える新しいチップアーキテクチャが注目を集めました。しかし、チップの高速化および高性能化が進むにつれ、データセンターのようなインフラストラクチャーへの注目も集まっています。
電力業界ではDelta、Vertiv、Eatonといった企業がAI時代に向けた新しい設計を発表。複雑で非効率な交流と直流の電力変換は、少なくともハイパースケールデータセンターにおいては、徐々に直流構成に置き換えられつつあります。
これについて、Vertivの先進技術およびグローバルマイクログリッド担当ヴァイスプレジデントのクリス・トンプソン氏は、「交流配電は依然として根強く定着していますが、パワーエレクトロニクスの進歩とAIインフラへの需要の高まりにより、直流アーキテクチャへの関心が加速しています」と語っています。

既存のほぼすべてのデータセンターは、交流での電力供給を前提に設計されており、電力はコンピューティング負荷(サーバーなどの計算機器)に到達するまでに、複数回変換されているそうです。
一般的な電圧の変換工程では、電力は中電圧の交流(1~35kV)としてデータセンターに供給され、変圧器によって低電圧の交流(480Vあるいは415V)に降圧されます。その後、無停電電源装置(UPS)内でバッテリー蓄電のために直流に変換され、再び交流に変換されます。そしてサーバー側で低電圧の直流に再度変換された後、コンピューティングチップが必要とする直流電力として供給されるそうです。
Eatonのエンジニアリングおよびテクノロジー担当ヴァイスプレジデントであるルイス・フェルナンド・ウエット・デ・バセラー氏は、「二重変換プロセスにより、出力される交流電力はクリーンで安定しており、データセンターのサーバーに適したものとなります」と説明しています。
従来の変圧工程は、一般的なデータセンターが必要とする電力量には十分対応できます。これは、従来のデータセンタのラックはそれぞれ約10kWの電力を消費する程度だからです。しかし、AI向けデータセンターの場合、ラック当たりの消費電力は1MW相当まで上昇します。
この規模になると、交流から直流へ変換する過程で生じるエネルギーの損失や電流量、さらには銅の使用量といった問題が、無視できないレベルに到達してしまうそうです。具体的には、電力変換の度に一定の損失が発生し、供給すべき電力が増えるほどコンバーターのサイズや銅製のバスパー(電力を分岐するための導体)の接続要件が現実的ではなくなってしまうわけ。NVIDIAによると、電力消費が1MWのラックの場合、最大200kgの銅バスパーが必要になり、1GWの場合はこれが20万kgにまで増加するそうです。

しかし、既存のデータセンターに供給される「13.8kVの交流電力」を「800Vの直流電力」に変更すると、ほとんどの変換工程が不要になります。これにより、ファンや電源装置の数を削減することが可能となり、システムの信頼性が向上し、発熱量が低下し、エネルギー効率が向上し、機器設置面積も縮小することが可能となるそうです。
配電においても、415Vの交流電力を800Vの直流電力に変えることで、同じ導体サイズで送電できる電力を85%も増加させることが可能となります。これは電圧が高くなることで電流需要が減少し、抵抗損失が低減され、送電効率が向上するためです。より細い導体で同じ負荷を処理できるため、銅の使用量も45%削減でき、エネルギー効率も5%向上し、ギガワット規模の施設の場合は総所有コストを30%近く削減することが可能となります。
Vertivのトンプソン氏は、高圧の直流を利用する場合について「高電圧直流アーキテクチャでは、電力網からの電力が中電圧の交流から約800Vの直流に変換され、直流バスを介して施設全体に分配されます。ラックでは小型のコンバーターが電圧をGPUやCPU向けに降圧します」と説明しました。
テクノロジーアドバイザリーグループ・Omdiaのレポートによると、中国ではすでに高電圧直流データセンターが登場しているそうです。アメリカでもMeta、Microsoft、Open Compute Projectの共同プロジェクトである「Mt. Diablo Initiative」で、400Vの直流ラックに関する実験が行なわれています。

既に一部のベンダーが先手を打とうとしており、VertivはNVIDIAのNVIDIA Vera Rubinと統合された800Vの直流エコシステムを発表し、2026年後半の商用化を目指しています。Eatonも直流配電システムの中核となる中電圧のソリッドステートトランス(半導体変圧器)を開発しました。Deltaは合計480kWの組み込みバッテリーバックアップユニットを備えた800Vの直流ラックをリリースしています。
しかし、業界の多くは遅れをとっています。アメリカ電機工業会の戦略・技術・業界担当上級ヴァイスプレジデントであるパトリック・ヒューズ氏は、直流専用機器の製造能力の再構築、半導体および材料供給の拡大、バリューチェーン全体にわたる大規模な設備投資を正当化する明確かつ長期的な需要予測が必要となると語りました。
なお、この報道に対してソーシャル掲示板のHacker Newsでは、「私が若い頃、ハードウェアのラックマウントやスタッキングをしていた頃から、データセンター機器の選択肢として直流電源は存在していました。Cisco、Dell、HPE、IBMをはじめとする数え切れないほどのメーカーが直流電源オプションを提供していました。PDUも同様です。古き良きものが再び脚光を浴びているのです」というコメントが寄せられていました。
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in AI, Posted by logu_ii
You can read the machine translated English article Data centers are transitioning from AC t….







