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子ども向けのアプリを設計する上で気を付けるべき「11個のポイント」とは?


現代では大人だけでなく小さな子どもまで日常的にタブレットやスマートフォンを使用しており、教育やゲームを目的とした子ども向けアプリの需要も高まっています。そんな子ども向けアプリをデザインする上で重要な「11個のポイント」について、子ども向けのお絵描きアプリ「Kidz Fun Art」の開発者であるシェーン・オサリバン氏が解説しました。

On Designing For Children – SOS
https://shaneosullivan.wordpress.com/2025/07/28/on-designing-for-children/

◆1:テキストの使用を最小限に抑える
8歳未満の子どもにもアプリを使ってほしい場合、できるだけ少ないテキストでアプリの主要機能を伝える方法を探るべきだとのこと。オサリバン氏は、多くの子どもはテキストを読まないため意味がなく、美しいグラフィックを配置するスペースを奪ってしまい、子どもにとっての魅力もないと指摘。オサリバン氏が作ったKids Fun Artの画面を見ると、テキストが一切なく、主要な操作はすべてイラストやアイコンだけで理解できるようになっています。


◆2:機能やツールの表示場所を工夫する
大人向けのアプリには、上部の小さなバーに表示された「ファイル」「編集」「表示」「ツール」といった項目をクリックし、開いたメニューから目当ての項目を見つけ出さないと使えない機能もあります。しかし、これは子ども向けアプリの場合にはふさわしくないとのことで、オサリバン氏は「特定の領域を選択したらそれに関連するアイコンが近くに表示される」といった風に、必要な機能を対象となるオブジェクトの近くに表示することを推奨しています。

◆3:状態をすぐに元に戻せるようにする
子どもはうっかり間違えたり、いたずらしたり、思い付きで変な場所をタップしたりすることがあり、意図しないアプリ画面になってしまうことがよくあります。特にお絵描きアプリのようにコンテンツを作成する場合は、どんな操作もすぐに元に戻せるように工夫する必要があるとのこと。

方法としては、「元に戻す/やり直すボタンを目立つように配置する」「実際にはデータを削除せず、削除されたように見せる『論理削除(ソフトデリート)』を採用することで、描いた絵などを誤って削除した場合でもすぐに復元できるようにする」「ソフトデリートしたファイルは数日ほど間隔を空けて本当に削除する」といったものが挙げられます。実際にオサリバン氏は、Kids Fun Artでお絵描きしていた娘が間違って絵を消して泣き崩れてしまったという心の痛む経験をしたと述べています。

◆4:大人を巻き込むべきタイミングを知らせる
年長の子ども向けの機能が搭載されている場合、適切なタイミングで親の協力を促すことで、小さな子どもでも「わからない」といってアプリを投げ出してしまう可能性が減ります。たとえば以下のように、親の助けを得るよう促すイラストなどで子どもに知らせることで、子どもは親に頼るべきタイミングを把握できます。


◆5:細かい指先の動きを減らす
年少の子どもは、指先などの細かい動作が年長の子どもほど発達していないため、指やペンの動きが完璧でなくてもアプリが操作できるようにするべきです。オサリバン氏はこれを実現する方法として、「すべてのボタンやリンクは子どもが指でタップできるくらい大きくする」「子どもは長押しをすることが多いため、できるだけ精密なドラッグなどではなく長押しで操作できるようにする」といった方法を推奨しました。

◆6:画面にうっかり触れた手を認識しないようにする
大人は必要ない時にタブレットやタッチデバイスに触れませんが、子どもは紙に字を書いたりお絵描きしたりする時と同じように、タブレットを頻繁に無意識で触ります。そのため、どのタッチがユーザーからの指示なのか、どのタッチは関係ない接触なのかを判別する機能(パームリジェクション)を搭載する必要があります。

オサリバン氏はこの問題を解決するために、「接触領域のサイズで判別する」「感知する圧力で分類する」といったいくつかの方法を試しました。その結果、「touch EventPointerEventを用いてユーザーが指を使っているのかスタイラスペンを使っているのかを判別し、スタイラスペンを使用している時は今後すべての操作でスタイラスペンのみを認識し、それ以外の接触はすべて無視する」というシンプルな方法がもっともうまくいくことがわかりました。ユーザーが指での操作に戻れるように、指が触れた時は以下のようなアイコンを数秒ほど表示し、これを押すと指での操作に戻るようにするなどの工夫も必要です。


◆7:シンプルにして楽しませる
子ども向けアプリでは、ちょっとした工夫で子どもたちが大声で笑ってくれたり、親から感謝のメールが届いたりするとのこと。子どもを楽しませる工夫はアプリによりけりですが、Kids Fun Artの場合は「虹のようなグラデーションをかける」「絵文字などを貼ると効果音が鳴る」「物体を回転させた時にキラキラ光るエフェクトを付ける」といった工夫が、子どもに喜ばれているそうです。


◆8:状態が変化する時も視覚的なコンテキストを維持する
多くの子どもはアプリで何かを操作して先ほどの画面が消えた後、まったく異なる画面に移ってしまうと、次にどうしたらいいのかわからなくなってしまいます。そのため、子どもがどのようにして今のページにたどり着いたのか、どうすれば元のページに戻れるのかを明確に伝える必要があります。

オサリバン氏が使用している工夫には、「ダイアログの背景を半透明にして、ダイアログを閉じればさっきの画面に戻れるとわかるようにする」「1つ目のダイアログを閉じた後に2つ目のダイアログを表示しない」「画面が変わる時にアニメーションを使用し、どんな風に画面が変わったのかわかりやすくする」といったものがあります。

◆9:広告なしで収益を得るかそもそも収益化しない
子ども向けのアプリを倫理的に配信したければ、サードパーティーの広告を表示して収益化するという方法は取るべきではありません。子どもたちにとって不適切なコンテンツが表示されたり、何かタップしないとアプリが使えなくなってしまうと勘違いさせたりする場合があるためです。Kids Fun Artではオプションで年間の有料サブスクリプションプランを提供して収益化しているとのことです。

◆10:ソーシャル機能を搭載しない
近年のアプリのほとんどは、ユーザー情報や作ったコンテンツを他のユーザーと共有し、評価や批評を受けることでつながるソーシャル機能を搭載しています。しかし、子どもを対象にしたアプリにソーシャル機能を搭載するのは危険であるため、Kids Fun Artでは「子どもが描いた絵を親のメールアドレスに送信する」「あらかじめ用意されたトークンを用いてAIが生成した画像だけを、個人情報と紐付けずに他のユーザーと共有可能にする」という方法を採用し、その他のソーシャル機能は搭載していません。

◆11:子どもに決してお金を使わせない
子ども向けアプリであろうとお金を支払うのは保護者であり、子ども自身がお金を使えるようにするべきではありません。アプリ内課金を導入する際は決定権が保護者にあるように設定し、保護者であることを証明する際にも、デバイスのPINコードなど子どもでも知り得るような情報は使わない方がいいとオサリバン氏は述べました。

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in ソフトウェア, Posted by log1h_ik

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