サイエンス

AIを駆使して150万の天体を発見した高校生が賞金3500万円を手に入れる

by Society for Science

アメリカの非営利団体・Society for Scienceが開催している、高校3年生を対象とした科学コンテストのRegeneron Science Talent Searchで、カリフォルニア州在住の18歳のマッテオ・パズ氏が、最優秀賞と賞金25万ドル(約3500万円)を授与されました。パズ氏は、機械学習アルゴリズムを使用して新たな天体候補150万件を特定し、査読付きの単著論文で発表した科学への貢献が認められました。

A Submillisecond Fourier and Wavelet-based Model to Extract Variable Candidates from the NEOWISE Single-exposure Database - IOPscience
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/1538-3881/ad7fe6

Regeneron Science Talent Search 2025 Awards More Than $1.8 Million to High School Seniors for Innovative Research on Classifying Celestial Objects, Treating a Rare Muscle Disease and Solving a Long-Standing Math Problem - Society for Science
https://www.societyforscience.org/press-release/regeneron-sts-top-awards-2025/

Teen Wins $250K for Using AI to Discover 1.5 Million Hidden Objects in Space
https://scitechdaily.com/teen-wins-250k-for-using-ai-to-discover-1-5-million-hidden-objects-in-space/

パズ氏が天文学に興味を持ったのは、小学校の時に母親に連れられて、カリフォルニア工科大学で開かれた公開天体観測講座に参加した際のこと。STEM教育に力を入れている地元のパサデナ高校に進学したパズ氏は、2022年の夏に開かれた高校生向けの天文学研究プログラム「Planet Finder Academy」で再びカリフォルニア工科大学を訪れました。


パズ氏の指導を担当したカリフォルニア工科大学赤外線処理分析センター(IPAC)の天文学者のデイビー・カークパトリック氏は当初、NASAの広視野赤外線探査機(NEOWISE)が収集したデータのごく一部を使って、変光星をいくつか見つけるよう勧めたとのこと。

カークパトリック氏は「探査機が10年以上かけて行ったあらゆる検出データの行数は2000億行に迫っていました。そこで、私は空の一部を撮影して変光星を見つけられるかどうか試してみてはと考えました。そうすれば、天文学コミュニティに『私たちは手作業で新しいものを見つけましたよ』と報告できますから」と話しました。


しかし、カークパトリック氏がくれた大規模で規則的なデータはAIの得意分野だと気づいたパズ氏は、得意の数学の知識を動員して機械学習アルゴリズムを構築。カークパトリック氏や他の天文学者から学んだ天文物理学の知識を統合して、天体の明るさの微妙な変化を捉える信号処理モデルを作り上げました。

こうして開発されたAI「VARnet」は、既知の天体を使った検証データセットでのテストで極めて高い精度を示しただけでなく、1天体あたり平均52マイクロ秒という高速処理を実現したとのこと。

そして、パズ氏はVARnetにNEOWISEのデータセットを処理させて、未知の超大質量ブラックホールや誕生直後の星、超新星など新発見の天体や天文現象150万件を特定しました。

VARnetは、天文学者が同様のデータを分析するのに使えるだけでなく、時間的なデータの変化が重要なその他の分野の研究にも応用できる可能性を秘めています。

パズ氏は「私が実装したモデルは、天文学における他の時間領域研究、そしておそらく時間的な形式でデータが得られるあらゆる研究に活用できます。例えば、株式のチャート分析にも関連性があると思います。チャート分析でも同様に、時系列ごとに得られたデータの周期的な要素が重要になる場合があるからです。他にも、周期的な季節や昼夜のサイクルが大きな役割を果たす大気汚染などの大気への影響に関する研究にも活用できます」と話しました。

Society for Science/Chris Ayers

パズ氏は、高校を卒業するまでカリフォルニア工科大学の職員として勤務し、カークパトリック氏の下でNEOWISEやNASAの他の宇宙ミッションのデータ管理や処理の仕事をしているとのこと。これは、パズ氏にとって初めての給与収入です。

カークパトリック氏は「マッテオ(パズ氏のこと)が科学コンテストで優勝したと発表された時、今までで最高の喜びを感じました。私にも賞をもらった経験はありますが、誰かの可能性を引き出す手助けをして、それが認められたのは大変うれしかったです。本当に賢い若者たちのコミュニティを生かし、彼らを指導し、彼らがその可能性を見失わないようにできるのなら、それは何物にも代えがたいことです」と話しました。

2025年度のRegeneron Science Talent Searchではパズ氏の他に、「ネイティブアメリカンミオパチー」というまれな遺伝子疾患のショウジョウバエモデルを開発したアヴァ・グレース・カミングス氏や、「3一様ハイパーグラフ(3-uniform hypergraphs)」という長年の数学問題を解いたオーウェン・ジャンウェン・チャン氏ら39人の高校生が表彰され、のべ180万ドル(約2億5500万円)超の賞金を授与されました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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