サイエンス

世界最大の科学コンテストで1位を取った17歳の研究結果が実は捏造だったと判明


国際学生科学技術フェア(ISEF)は毎年5月にアメリカで開催される世界最大の科学コンテストです。2024年5月11日から17日に開催されたISEF 2024で、環境工学部門で1位を獲得した17歳学生の研究が捏造(ねつぞう)されたものだったと報じられています。

Exclusive: Scandal at America's Top Science Fair
https://www.karlstack.com/p/exclusive-scandal-at-americas-top

環境工学部門で1位と賞金5万5000ドル(約860万円)を獲得したのは、カリフォルニア州デルマール在住で南カリフォルニア大学のインターン生であるクリシュ・パイさんです。研究内容は「プラスチック生分解性を得るための遺伝子配列を特定する機械学習研究」でした。

Meet Krish Pai, winner of the Regeneron Young Scientist Award (Regeneron ISEF 2024) - YouTube


パイさんは「Microby」というソフトウェアを開発し、微生物にどのような遺伝子組み換えを行えばプラスチック生分解性を得られるのかを調査。この実験によって、従来のリサイクルと比較して10分の1のコストでプラスチックを分解できる微生物を2種類特定したと論じました。


しかし、インターネット上では、この研究内容はずさんなねつ造と盗用を含んでいると指摘されています。

例えば、以下はパイさんがプレゼンテーションで提示した資料の一部。赤枠で囲われた部分で示されているのが、実際に微生物で分解したプラスチックの写真です。


しかし、この写真はユリシーズ大学によるプラスチック生分解性細菌の研究で使われた以下の画像を加工したものでした。


また、プレゼンテーション資料の中で示されたグラフについては、2019年に発表された研究論文で使われていたものを流用していることが判明。


さらに、パイさんは実験の中で近赤外分光計を作ったと主張し、以下の図解と写真を資料に掲載しました。


しかし、この図解と写真も、2021年に発表されたプラスチックスキャナーのものをそのまま流用していたことがわかりました。

プラスチックごみをスキャンして分別可能かを瞬時に判別できる「Plastic Scanner」が登場 - GIGAZINE


告発を行ったジャーナリストのクリストファー・ブルネット氏は「誰でも間違いを犯します。私も17歳の時に愚かで不道徳なことをたくさんやったことは神もご存じです。そして、成長と償いの機会は常にあります。私はパイさんが悔い改めて、より倫理的な人間になろうと努力することを心から願っています。私の考えでは、彼には良い大学に通い、長く充実したキャリアを築く機会がまだあるべきです」と述べながらも、「パイさんの受賞は取り消されるべきです。この状況は他の参加者にとって不公平です。詐欺は明らかであり、5万5000ドルの賞金は次点者に与えられるべきです」と訴えました。

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in サイエンス,   動画, Posted by log1i_yk

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