ソフトウェア

イギリスの公共システムでまたも「ねつ造スキャンダル」が発覚、学校評価システムのデータがしょっちゅう消えるので監査員が証拠をでっち上げているとの証言


富士通のイギリス子会社が開発した会計システムの欠陥を発端とする郵便局の大規模なえん罪事件に揺れるイギリスで、学校教育の質を監督する「教育水準監査院(オフステッド)」のシステム障害を原因とする証拠のねつ造が横行していることが判明したと、イギリスの一般紙・Observerが報道しました。

Ofsted inspectors ‘make up evidence’ about a school’s performance when IT fails | Ofsted | The Guardian
https://www.theguardian.com/education/2024/feb/03/ofsted-inspectors-make-up-evidence-about-a-schools-performance-when-it-fails

オフステッドは、学校の評価に用いる証拠を集積するための「電子証拠収集(EEG)システム」を2018年に導入しており、監査員は学校の教職員との面談記録や授業を視察した際の所感を、手持ちのラップトップやタブレットからEEGに入力して監査を行っています。


ところが、このEEGには当初から深刻な不具合が存在しており、システムが突然クラッシュして面談のメモがすべて消えたり、丸1日分の証拠がすべて白紙になったりする問題が頻発しているとのこと。消滅したデータの不足分を補うため、監査員が証拠のでっち上げを余儀なくされることが日常化していると、Observerは報じました。

匿名を条件にObserverに情報を提供した複数の現役または元監査員は、こうした問題は何年も前から「よくあること」であり、オフステッドの上層部がそのことを把握していたにもかかわらず「隠ぺい工作が行われてきた」と語りました。


例えば、ある現役の監査員は「学校側との会談の最中に、突然すべての証拠が失われる可能性があるので、それが顔に出ないようにしなければなりません。システムが停止してすべてを失ったら、ホテルに戻って1日分の証拠を入力しなければなりませんが、監査の日の仕事は長くて休みもなく、翌日の資料にも目を通しておかなければならないので、疲れ果ててしまいます」と証言しています。

また別の元監査員は長時間の面談で作成中の証拠が消えた時のことを、「バンクシーのアートワークが自己消滅するように、証拠データが画面から少しずつ消えていくのをただ座って眺めていました。そのようなことが起きている間、問題の発生を相手に気取られないようにするのは大変です。そういう時のための指示は、ただその場を取り繕えというものでした」と振り返りました。

この監査員はさらに、「このような問題を知っている上級指導者がオフステッドにいることは間違いありません」と付け加えています。

Observerによると、中にはEEGが信用できずにMicrosoft Wordで資料を作成していたところ、オフステッドから「EEGを使わなければ懲戒処分にする」と脅されたと話す監査員もいたとのことです。


学校の教育提供者たちはこうした問題についてほとんど聞かされていませんでしたが、Observerは証拠が欠落しているという学校側の苦情に対するオフステッドの回答文書を入手しています。そこには、「最終会議中に、主任監査員が画面上の証拠を指して『ぜんぶ消えてしまった』とはっきり言った」という学校からの苦情が書かれていました。

さらに、この文書は「監査員が作成した報告書の草案に自校のものではない校訓が書かれていると学校が訴えており、証拠も疑わしいと思っている」とも指摘しています。

全国教育組合のダニエル・ケベデ書記長はObserverに対し、「これは郵便局のスキャンダルに似ています。監査員が消えた証拠をねつ造したり、記憶を頼りに作ったりしているという話は忌まわしいもので、教育の在り方として許されることではないでしょう。もしこのようなことが常態化しているようなら、過去5年の間に行われたすべての監査は原則としてすべて無視されるべきです」と話しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
イギリスで900人もの郵便局関係者の起訴につながった会計システムの不具合について欧州富士通トップが「不具合は以前から知られていた」と発言 - GIGAZINE

2000便以上が欠航したイギリスの航空管制問題は7400km離れた地点を同一扱いしたソフトのバグ - GIGAZINE

「アップデートを事前チェックして秘密裏に拒否権を発動できる法案」がイギリスで提出されAppleが「ユーザーを危険にさらす行き過ぎた法案」と猛反発 - GIGAZINE

イギリスの警察で運用される自動顔認証システムは「極めて不正確な精度で運用も不透明」と批判の声 - GIGAZINE

ロンドンの警察は誤検知率98%の顔認識システムで大衆を監視している - GIGAZINE

in ソフトウェア, Posted by log1l_ks

You can read the machine translated English article here.