「政治行動の激しさ」に関連する脳回路の存在が研究で判明

政治に興味を持つこと自体は健全なことですが、精神や脳に疾患があると診断された人の中には、行き過ぎた政治への関心が暴力的な抗議活動や、異なる政治的意見に対する攻撃的な言動など、問題のある政治活動に発展することがあります。これまでほとんどわかっていなかった、政治への関与の強さに関わる脳回路の存在が、脳に損傷を受けた退役軍人を対象した研究により明らかになりました。
Effects of focal brain damage on political behaviour across different political ideologies | Brain | Oxford Academic
https://academic.oup.com/brain/advance-article-abstract/doi/10.1093/brain/awaf101/8090170
Study identifies brain areas that influence p | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1079230
Study uncovers a brain circuit linked to the intensity of political behavior
https://phys.org/news/2025-04-uncovers-brain-circuit-linked-intensity.html
ハーバード大学医学部ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のシャン・H・シディキ氏らの研究チームは、2025年3月21日に査読付き学術誌のBrainに掲載された研究で、政治的なイデオロギーや支持政党にかかわらず、政治への関与の強さと明確に関連する脳回路が見つかったことを発表しました。
この研究には、頭部の「穿通(せんつう)性外傷」により脳が損傷したベトナム戦争の退役軍人124人と、戦闘に従事したものの脳の損傷につながる負傷はしなかった対照群の退役軍人35人が参加しました。
これらの参加者を対象に、研究チームは特定の病変につながる脳回路を特定する新しい神経画像技術「病変ネットワークマッピング」を使用し、参加者らの脳病変の地図を作成しました。

また、脳を損傷した参加者らには、受傷前の政治行動に関する記憶と、受傷から40~45年の時点の政治行動に関するアンケートも実施されました。この調査では、政治への関心度、政治に関する報道を追う頻度、他の人と政治について議論する頻度など、政治への関与度の強さが評価されたとのこと。
こうして集められたデータを分析した結果、認知制御と実行機能をつかさどると考えられている領域である背外側前頭前皮質と、楔前部(けつぜんぶ)後部に病変がある人は、政治への関与が激しいことが判明しました。逆に、感情処理に関与する扁桃体が損傷した人は、政治的関心が低下することもわかりました。
これらの結果は年齢、学歴、支持政党、性格特性、その他の神経精神症状といった要因を考慮しても変わらなかったとのこと。
論文の共著者であるノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のジョーダン・グラフマン氏は、この研究結果について、「リベラル派や保守派といった政治的イデオロギーに結びつく脳ネットワークは見つかりませんでしたが、政治的なスタンスとは無関係に、政治参加の強度に影響を与える脳の回路を特定することができました」と述べました。

研究者らは、政治への関心の強さと脳の働きの関係を解明できれば、攻撃的だったり問題があったりする政治的活動をする患者に対する、効果的な介入方法の開発につながるのではないかと期待しています。
シディキ氏は、「神経精神科医として、患者さんの政治行動について尋ねることはあまりありませんが、精神神経疾患では政治的行動が重要な変化となる可能性があります。もし、政治行動を調整する脳の働きを理解することができれば、患者さんの政治行動を増減させる方法を見つけられるかもしれません」と話しました。
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in サイエンス, Posted by log1l_ks
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