気候変動のせいでチョコレートが値上がりしている

チョコレートは日々のおやつやバレンタインデーの贈り物として欠かせないものとなっていますが、気候変動によってチョコレートの原料であるカカオ豆の生産が打撃を受けているという調査結果が報告されました。原料であるカカオ豆の価格が高騰したことを受け、チョコレートの価格も上昇しています。
Climate Change is Heating Up West Africa's Cocoa Belt | Climate Central
https://www.climatecentral.org/climate-matters/climate-and-cocoa-2025

Cocoa crisis: Climate change threat to chocolate laid bare in new report ahead of Valentine’s Day – Christian Aid | Mediacentre
https://mediacentre.christianaid.org.uk/cocoa-crisis-climate-change-threat-to-chocolate-laid-bare-in-new-report-ahead-of-valentines-day/
Climate Change Is Coming For Your Chocolate, Study Finds : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/climate-change-is-coming-for-your-chocolate-study-finds
チョコレートの原料であるカカオ豆は約70%がコートジボワールやガーナ、ナイジェリア、カメルーンといった西アフリカ諸国で生産されています。しかし近年の気候変動により、これらの西アフリカ諸国では異常気象が増えており、それがカカオ豆の収穫量やチョコレートの価格に悪影響を及ぼしているとのこと。
独立系研究グループのClimate Centralは、西アフリカにある44のカカオ栽培地域で収集された観測データとコンピューターモデルを使用し、主に石油・石炭・メタンガスの燃焼による人為的な気候変動が、2015年~2024年のカカオ豆栽培地域の気温にどのような影響を及ぼしたのかを分析しました。
この分析では実際の観測データと、Climate Centralの気候変動指数システムから導き出された「人為的な気候変動がない世界で発生したであろう気温」の推定値が使用されました。また、研究チームはこれらの地域の気温が、カカオ豆の栽培に悪影響を及ぼすとみられるセ氏32度以上を記録した日に着目したとのことです。

分析の結果、西アフリカの主要なカカオ生産地域では、気温がセ氏32度以上を記録する頻度が過去10年間にわたり増加していることが判明。特に世界のカカオ豆生産量の半分以上を占めるコートジボワールとガーナでは、過去10年間で平均約40日もセ氏32度を超える日が増えていました。また、カメルーンでは平均で年間約18日、ナイジェリアでは平均で年間約14日もセ氏32度を超える日が増えたと報告されました。
以下のグラフでは、棒グラフの塗りつぶされた部分が「人為的な気候変動のない世界で発生したと推定されるセ氏32度以上の日」を、しま模様の部分が「実際に発生したセ氏32度以上の日」を表しています。左からコートジボワール、ガーナ、カメルーン、ナイジェリアの順に並んでおり、特にコートジボワールとガーナでは人為的な気候変動の影響が大きいことがうかがえます。

さらにClimate Centralのレポートでは、降雨量の変化や密輸、ウイルスを媒介するコナカイガラムシのまん延なども、カカオ豆の収穫量と質に悪影響を及ぼしていると説明されています。
また、イギリスの慈善団体・Christian Aidが発表した別のレポートでは、2024年には人為的な気候変動によってコートジボワール、ガーナ、ナイジェリア、カメルーンの4カ国で、気温がセ氏32度を超える日が6週間も増えたと報告されました。2023年にはガーナで予想外の大雨が発生してカカオが腐敗した一方、2024年には深刻な干ばつによる被害が出たとのこと。
Christian Aidの政策・公共キャンペーン担当ディレクターであるOsai Ojigho氏は、「カカオの栽培は世界中の多くの最貧層にとって生計を立てる重要な手段であり、人為的な気候変動がそれを深刻な脅威にさらしています」と述べ、主に北半球の先進国が排出した温室効果ガスにより、南半球の発展途上国に住む生産者が打撃を受けていると指摘しました。

カカオ豆の収穫量減少によって、2023年以降はロンドンやニューヨークの市場でカカオの価格が上昇しています。数十年にわたりニューヨーク市場のカカオ価格は1トンあたり2000~3000ドル(約30万~46万円)で推移してきましたが、2024年12月中旬にはピーク時で1万2500ドル(約190万円)の値が付き、2025年2月12日にも1万ドル(約150万円)を超えました。
原料価格の高騰に伴ってチョコレートの価格も上昇しており、2024年にはグリコや森永製菓、明治、ロッテなどの大手メーカーが相次いでチョコレートの値上げを発表。高級チョコレートメーカーのゴディバも、2025年のバレンタイン向け商品を前年比で約1割値上げしたことが報じられています。
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in サイエンス, 食, Posted by log1h_ik
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