より健康的で持続可能なチョコレートの新しい製造方法が科学者とチョコメーカーによって発見される


チョコレートの原料となるカカオは紀元前2000年頃から栽培が行われており、16世紀頃にスペイン人によってヨーロッパに持ち込まれてから、嗜好(しこう)品として楽しまれるようになりました。そんなチョコレートにはさまざまな課題があるとのことで、
チューリッヒ工科大学の研究チームがチョコレートメーカーと協力して、「より健康的で環境にもいいチョコレート」を開発したと報告しています。

Valorization of cocoa pod side streams improves nutritional and sustainability aspects of chocolate | Nature Food
https://www.nature.com/articles/s43016-024-00967-2


Scientists develop method of making healthier, more sustainable chocolate | Food | The Guardian
https://www.theguardian.com/environment/article/2024/jun/01/scientists-develop-method-of-making-healthier-more-sustainable-chocolate

研究チームは、チョコレートには栄養面・環境面・社会経済面という3つに課題があると指摘しています。


チョコレートは一般的に糖分が多く、エネルギー密度が高い食品であることで知られています。また、飽和脂肪酸を多く含むことから、肥満や2型糖尿病、心血管疾患のリスクを高める可能性があります。また、チョコレートの主原料であるカカオ豆の栽培には広大な土地が必要であり、熱帯林などの伐採につながり、地球温暖化に影響を及ぼしています。

さらに、カカオ豆の多くは開発途上国の小規模農家によって生産されていますが、その収入は非常に限られています。カカオ産業への依存度が高い国では、カカオ豆の価格変動が社会経済に大きな影響を与える可能性があります。


チューリッヒ工科大学の食品技術者で論文の主執筆者でもあるキム・ミシュラ氏は「カカオの実は基本的にカボチャと同じで、今は種子だけを使っています。しかし、この果実には他にも素晴らしいものがたくさんあります」と語っています。

カカオ豆の周りにある「パルプ(果肉)」やカカオ豆を包む殻の内側の部分である「内果皮」は廃棄されることが多いため、研究チームはこのパルプや内果皮を使ってチョコレートを製造する方法を、チョコレートメーカーのMax FelchlinKoa Switzerlandと協力して開発しました。


新しいチョコレートの製造方法は以下の通り。まずカカオのパルプを取り出して果汁を搾り、濃縮してカカオパルプジュース濃縮物(CPJC)を得ます。次に、カカオの内果皮を取り出して乾燥し、粉砕して内果皮粉末(ECP)を得ます。続いて、CPJCとEPCを混合し、加熱してゲル化します。このゲルは甘味料と食物繊維の供給源となります。

そして、カカオ豆は従来通りの方法で発酵・乾燥・ローストをし、粉砕してココアマスを得たら、ゲルを加えて混合します。研究では、ゲルの配合率を最大20%としたとのこと。最後に、ココアマスとゲルの混合物を適切な温度でテンパリングし、型に流し込んで冷やして固めます。


この製法で作ったチョコレートは食物繊維が含まれている上に、ゲルに含まれる自然甘味料によって砂糖の量が減るため、通常のチョコレートよりも栄養価が高まり、飽和脂肪酸を減らすことに成功したとのこと。もちろん官能評価の結果、新製法のチョコレートは従来のものと同等の甘味が得られたと、研究チームは報告しています。

新しい製法はこれまで捨てられていたカカオの内果皮やパルプを利用しているため、カカオ豆自体の使用量も減らすことができます。これにより、カカオ栽培に必要な土地面積を減らし、結果的に地球温暖化への影響を抑制できる可能性があります。

さらに、廃棄物だった内果皮やパルプに商品価値が生まれることで、カカオ農家が収入を得る機会が生まれ、収入源の多様化につながります。加えて、内果皮とパルプをゲル化する技術を農家に普及すれば、カカオの生産地域における技術力の向上にもつながると研究チームは主張しています。


ミシュラ氏は「新製法のチョコレートは、食感は従来のダークチョコレートと基本的に同じで、味も南米産のものと似ています。口の中で広がる甘さは従来のものよりややゆっくりと広がり、果汁由来のフルーティーな香りと酸味がより感じられます」と評価しました。

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in サイエンス,   , Posted by log1i_yk

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