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都市は大きくなるほど不平等が拡大し「住民の収入より住居費の方が上昇スピードが速い」状態になることが判明


多くの人々が密集する都市は人間活動の中心地であり、アイデアの交換や商業活動といったさまざまな相互作用を促進します。ところが、都市の人口変化に伴う影響について分析した研究から、「都市が大きくなるにつれて収入の不平等が拡大し、住民の収入より住居費の方が上昇スピードが速い」状態が生じることが示されています。

Scaling of urban income inequality in the USA | Journal of The Royal Society Interface
https://royalsocietypublishing.org/doi/abs/10.1098/rsif.2021.0223

Study: As cities grow in size, the poor 'get nothing at all' | Santa Fe Institute
https://santafe.edu/news-center/news/new-study-prosperity-cities-benefits-few

以前の研究から、都市が大きくなるにつれて環境汚染や犯罪が悪化する一方、特許件数や富といったものも増加し、平均して都市は成長するにつれて豊かになることが示されています。ところが、サンタフェ研究所のVicky Chuqiao Yang氏は、「以前の文献では都市のスケーリングを『均質性のレンズ』を通して検討してきました」と指摘。都市が成長するにつれて1人当たりの富が増加するという研究結果に対し、「特に経済学などの文献から、多くの社会が不公平であり、経済的成果が均等に分配されていないことを私たちは知っています」と述べて、格差の問題が見落とされてきたことを指摘しました。

そこでミネルバ大学マサチューセッツ工科大学サンタフェ研究所の研究者からなるチームは、都市の成長と住民の生活に関する新たな分析を行いました。この研究ではアメリカ全土の地方自治体のデータを使用して、「不均質性のレンズ」を使用して都市の富について分析したとのこと。


分析の結果、データセット内に含まれる住民を収入ごとに10分割した場合、都市が大きくなるにつれて収入が上位1割の人々がますます多くの収入を得ることが判明しました。つまり、都市が成長することで増えた都市全体の富は均等に分配されるのではなく、裕福な人により多く分配されるため、都市が大きくなるほど貧富の格差は増大していくことになります。

また、都市が成長するにつれて増加するのは富だけでなく、住居費をはじめとする生活費も増加します。そこで研究チームが住居価格の調整も考慮に入れて分析したところ、都市が成長するにつれて住居費が高くなるスピードは、収入が下位10~20%の人々の収入が高くなるスピードを上回るとの結果が出たとのことです。

論文の共著者であるサンタフェ研究所のGeoffrey West特別教授によると、今回の研究は不平等が主に都市の現象であり、都市の貧しい住人はイノベージョンや富の創造を促す社会的相互作用の恩恵を受ける機会を逸しているとのこと。「今回の調査における大きな驚きは、都市が成長しても下位10~20%の人々にはメリットがないという点でした。収入が下がると共に、都市居住者の付加価値は規則的にますます少なくなり、最下位の10%に至っては何も得られず、生活の質を失っているという証拠さえあります」「金持ちは私たちが思っているよりもさらに豊かになり、貧しい人々は想定以上に貧しくなっていることがわかりました」と、West氏は述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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