サイエンス

ADHD治療薬のコンサータが運転能力を向上させる可能性があるという研究結果


近年は激しい競争にさらされている学生や労働者、起業家の間で認知能力を高めるとされる薬物「スマートドラッグ」が人気を集めており、ADHDなどの治療薬もスマートドラッグとして注目されています。新たに、一般的なADHD治療薬であるメチルフェニデート(コンサータ)が、車のドライバーの運転能力を向上させる可能性があると判明しました。

Driving performance and ocular activity following acute administration of 10 mg methylphenidate: A randomised, double-blind, placebo-controlled study - Blair Aitken, Luke A Downey, Serah Rose, Thomas R Arkell, Brook Shiferaw, Amie C Hayley, 2024
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/02698811241286715


Common ADHD Drug Could Make Some People Better Drivers : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/common-adhd-drug-could-make-some-people-better-drivers

ADHDを持つ成人は交通事故交通違反を起こしたり、急ブレーキなどの危険な運転をするリスクが高くなることが知られています。こうしたADHDの人が、コンサータの主成分であるメチルフェニデートを服用すると、運転能力が有意に向上するという研究結果が報告されています。

しかし近年は、スマートドラッグのひとつとしてADHDを持たない人々もメチルフェニデートを服用するケースが増えており、アメリカだけでも500万人の成人が高用量のメチルフェニデートを長期間にわたり服用しているとのこと。こうした状況にあるため、ADHDではない人がメチルフェニデートを服用した場合、運転能力にどのような影響が及ぶのかを知ることが重要です。

そこで研究チームは、ADHDだと診断されていない25人の精神的・肉体的に健康なドライバーを募集し、メチルフェニデートを服用することで運転能力にどのような影響が及ぶのかを調査しました。


被験者には10mgのメチルフェニデートあるいは偽薬が投与され、85分後に「4車線の高速道路を運転するドライビングシミュレーター」を操作するタスクを実行してもらいました。実験は2回行われ、各被験者にメチルフェニデートと偽薬が1回ずつ投与されましたが、被験者本人や研究スタッフは投与されたのがどちらなのか知らされませんでした。

実験では、被験者は時速100kmの走行速度を保ちながら左端の車線(第一走行車線)を40分間走行するように求められ、時には前の車を追い越すなどの操作が必要となりました。被験者が運転している間、機械によって視線の動きが注意深く監視されたほか、ダッシュボードに取り付けられたカメラで視線の固定時間や移動速度が測定され、ドライビングシミュレーターのソフトウェアに「ドライバーがどれほど車線の中心からズレたか」が記録されました。


実験の結果、メチルフェニデートを服用した被験者は特にドライブの後半で走行位置や速度のズレが少なくなり、運転能力が有意に向上したことが判明。一方、視線の動きについてはそれほど大きな差はみられませんでした。

以下のグラフは、左から「車線の中心からのズレ」「指定された走行速度とのズレ」「ハンドル操作の変化」を示したもので、横軸が実験開始からの時間、縦軸がズレや変化の大きさを示しています。偽薬を服用したグループ(緑線)とメチルフェニデートを服用したグループ(青線)を比較すると、確かに「車線の中心からのズレ」や「指定された走行速度とのズレ」の項目では、メチルフェニデートを服用した方がパフォーマンスが高いことがわかります。


今回の研究はあくまで低用量のメチルフェニデートを服用した場合を調査しており、高用量かつ長期間にわたり服用した場合は異なる影響が出る可能性もあります。研究チームは、「特にメチルフェニデートやその他の精神刺激薬によって引き起こされる、眼球運動の顕著な変化を特定するためのさらなる研究が必要です」と結論付けました。

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in 乗り物,   サイエンス, Posted by log1h_ik

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