「会社を売って大金持ちになり正式発足前のDOGEでも働いたが辞めて何もやる気が起きない」という告白
画面録画アプリ「loom」の開発者であるヴィネイ・ハーマス氏が、「私はお金持ちだが、これからの人生で何をしたらいいのか分からない」と題したブログ記事を自身のウェブサイト上で公開しました。記事中では「会社を売って多額の資金を手に入れた」「トレーニングなしで6000メートル級の山に登った」「発足前の政府効率化省(DOGE)の職員として4週間だけ働いた」といった壮絶な体験が語られています。
I am rich and have no idea what to do with my life
https://vinay.sh/i-am-rich-and-have-no-idea-what-to-do-with-my-life/
ハーマス氏が開発したPC画面録画アプリ「loom」は、画面録画機能に加えて「画面内に手書きで情報を追加」「画面内にウェブカメラの映像をワイプ風に挿入」「録画データを即座に共有」といった機能を備えており、3000万人ものユーザーを抱えるヒットアプリに成長しました。2023年10月にハーマス氏はloomを9億7500万ドル(約1500億円)でAtlassianに売却しました。
Today @loom is joining @Atlassian. We have entered a definitive agreement for Atlassian to acquire Loom for $975m. And we are insanely hyped.
— Vinay Hiremath (@vhmth) October 12, 2023
ハーマス氏にはloom部門の幹部として残り6000万ドル(約95億円)の報酬パッケージを得る選択肢もありましたが、大企業特有の「政治的駆け引きが多い」「物事の進むスピードが遅い」「非正規の同僚が多い」といった風潮を嫌い、loomを去ることを決意。そして、新たにロボット工学に関する仕事を始めようと思い立ちました。
ハーマス氏はロボット工学について学んだ経験があり、「コンピューターに手足を与える」ということに興味を持っていました。この興味を盛り上げて「ロボット工学こそ、我が天職」と思い込むために、「世界は深刻な労働者不足に陥っている」「中国に対する競争力の維持が不可欠である」「反復的な労働の市場は数兆ドル規模に及ぶ」といったキャッチーな動機をたくさん考えたとのこと。しかし、ハーマス氏が本当に興味を引かれたのは「ヒト型ロボット」のみであり、自身が「イーロン・マスクのようになりたい」と考えていたことに気付いたそうです。ハーマス氏はブログ記事に「(自身がイーロン・マスクになりたいと考えていたことは)とんでもなく恥ずかしいことだ。この文章をタイピングするだけでつらい」と記しています。
ハーマス氏はロボット工学への参入を諦め、ガールフレンドとともに6カ月にわって各地へ旅行に出かけました。しかし、次第に口論の数が増え、別れることを決断。その直後、ハーマス氏はヒマラヤ山脈の6000メートル級のピーク2カ所を登頂する登山旅行計画を立て、実際に旅行に出発しました。ハーマス氏は登山ガイドを担うシェルパとともに行動しましたが、まったくのトレーニング不足で高山病にかかってしまいました。呼吸困難に陥りつつ計画通りの旅程を完遂したハーマス氏は「困難なことに取り組むこと」が自分にとって重要であることに気付きました。
A few months ago, some hard personal life changes came up. So I decided to go to the Himalayas and summit Lobuche Peak (6119m/20k ft) and Ama Dablam (6812m/22k ft) with no mountaineering experience. It seemed like one way to clear my mind. 🏔️ pic.twitter.com/EbX3TvpX0U
— Vinay Hiremath (@vhmth) November 14, 2024
登山旅行から帰還して友人たちに旅行の思い出を話していた際に、友人の1人が「DOGEでイーロン・マスクやビベック・ラマスワミと一緒に働き、アメリカが不況から抜け出せるようにしたらいい」と冗談を飛ばしました。ハーマス氏はこの冗談を真に受け、DOGEの職員募集に応募し、採用試験に受かってDOGE職員となりました。ハーマス氏によると、DOGEの採用試験は8回にわたる電話面接で、採用後はすぐにSignalのグループに追加されたとのこと。
DOGEの職員になったハーマス氏は「絶対に話せないさまざまなプロジェクト」に取り組み、「アメリカ政府がいかに完全に機能不全に陥っているのか」を学ぶ日々を過ごしました。ハーマス氏は仕事に熱心に取り組みワシントンへの引っ越しも考えていましたが、4週間ほど働いた時点で「DOGEの使命は極めて重要であるものの、自分にとっては緊急性を持って取り組む必要のある最重要事項ではない」と気付き、DOGEを退職しました。
その後、ハーマス氏はハワイに滞在し、ジャングルの中で独学で物理学を学び始めました。自分を納得させるために「現実世界のモノを製造する企業を立ち上げる」という目標を掲げてはいますが、実際は「物理学を学ぶのは楽しいと受け入れること」を目指しているとのこと。物理学を学んだ結果、loomのような優れた製品が生まれなかったとしても、受け入れる準備はできているそうです。
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