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ソフトウェアエンジニアが会社から解雇されて学んだ8つの教訓


2022年半ばから経済が急減速した影響で、2022年には前年の10倍の技術職が職を失ったと報じられており、景気後退が本格化する2023年はさらに厳しい年となることが懸念されます。こうした中、AppleやUberのソフトウェアエンジニアとして働いた経歴を持つスティーブン・ブッチーニ氏が、最近解雇された人や解雇された経験がある人のための教訓を8つにまとめました。

8 Hard Truths I learned when I got laid off from my SWE job | Steven Buccini
https://www.stevenbuccini.com/8-hard-truths-on-getting-laid-off

◆1:解雇は非常に孤独な経験である
ブッチーニ氏は、2020年4月に職場を後にした時の孤独感には驚かされたとのこと。レイオフが決まった際は、勤め先の連絡から元同僚のソーシャルメディアの投稿まで、ブッチーニ氏へのあらゆるメッセージに「サポート」という言葉が含まれていました。しかし、そのサポートは保険の手続きなど雇用関係を解消するプロセスが終わるのと同時にぱったりと途絶えました。

ソフトウェアエンジニアの間では、テキストエディタ選びやホワイトボードにコードを書き込む面接の無意味さまで、あらゆる情報が共有されていますが、解雇されてしまった経験が言及されることはほとんどありません。また、学校のカリキュラムやLinkedInに投稿されるさまざまな自慢話の中にも、解雇にまつわる話題はありません。そのため、ブッチーニ氏は自分が置かれた状況に共感してくれる人を見つけることができず、拒絶感や恐怖感を1人で抱え込むはめになってしまいました。

こうした教訓からブッチーニ氏は「孤独の物理的な側面を軽視しないようにしてください。私がそうであったように、多くの人の生活は仕事が中心に回っていますが、ある日突然それが消えて、同僚との何気ないやりとりも全部失ってしまいます。特に、私は新型コロナウイルス感染症のパンデミックの中で新しい日常生活やそれにまつわる人間関係を再構築しなければなりませんでした。こうした人と人とのつながりが、仕事探しですり減った心の電池の充電に役立ったのです」と話しました。


◆2:復帰には思ったより時間がかかる
ブッチーニ氏によると、ソフトウェアエンジニアは解雇の長期的な影響について軽視しがちだとのこと。なぜならソフトウェアエンジニア、特にしっかりとした経歴を持つエンジニアには常に需要があるというのが一般的な見方だからです。ブッチーニ氏も、当初は2カ月間の休暇も含めて3カ月もすれば仕事に復帰することになるだろうと楽観的に構えていました。

しかし、ブッチーニ氏は実際に新しい職場を見つけるまで1年間もかかってしまいまい、経済的な面で大きな痛手になったほか面接の際にも不利になりました。この点からブッチーニ氏は、「最悪のケースを想定してから、それをさらに2倍に見積もる」という古い職人の格言をエンジニアリングにも適用すれば、少なくとも心理的なストレスは軽減できたはずだとアドバイスしています。


◆3:オファーはあてにできない
ブッチーニ氏によると、「面接の誘いが多いからといって自分が売れっ子なわけでも、オファーを得られる可能性が高いというわけでもありません」とのこと。なぜなら、企業は内定を出すつもりがなくてもたくさんの候補者と面接をしようとするからです。

不況下にもかかわらず企業が多くの求人を出す背景には、複数の戦略が絡んでいます。例えば、ハードルを劇的に上げて極めて優秀な人材に的を絞っていることもあれば、事業環境がよくなった時のために人材をキープしようとしているかもしれません。また、採用部門は真っ先に切り捨てられかねないので、採用担当者が自分の存在価値をアピールするのに付き合わされている可能性もあります。

求人プロセスの後半までこぎ着けても、それは求職者が雇用条件を妥協するまで時間稼ぎをしているだけの可能性もあるので、ブッチーニ氏は「最終面接でどれだけうまくやれたと思っていても、常に新しい計画を並行して進めておくようにしましょう」と述べました。


◆4:やりたくないこともやらざるを得なくなる
買い手市場の時期の中では、好条件の仕事にありつくのが難しくなります。例えば、自分がバカにしている言語を使った仕事の面接を受けなければならないこともあれば、リモートではなく毎日通勤する会社に入らなければならないこともあります。また、評判がいい会社に勤められるとも限りません。

こうした点からブッチーニ氏は「嫌々野菜を食べるのと同じことを早いうちに受け入れなければ、不条理に野垂れ死んだり目の前のチャンスを棒に振ったりすることになります」と述べて、不本意な職場で働くのもやむを得ないとアドバイスしました。

◆5:助けの申し出のほとんどは脊髄反射
シリコンバレーのスタートアップ文化では、不幸な話を聞いた時に「手伝えることがあったら何でも言ってください」と反射的に返事をするのが慣例になりがちです。そうした申し出を求職者に当てはめると、「私の雇い主にあなたを紹介させてください」となりますが、これはそれ以上でもそれ以下でもありません。

もちろん、支援の申し出をしてくれた人に助けを求めるのは悪いアイデアではありませんが、期待値を適切な数値、つまり「ゼロ」に設定しておくことが肝要だとブッチーニ氏は結論付けています。


一方、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsには、2000年代のドットコム・バブルを生き抜いて何百人ものエンジニアを雇ってきたという経験者から「実際に、私は何かあったら仕事を紹介したい人が30人ほど載ったリストを持っています。バブルを生き抜いた人は努力とネットワークで生き抜いてきました。もし転職を考えているなら、新年は自分の実力や人脈を考え直す絶好の機会ですので、知り合いをリストアップして、電話で仕事を探していると伝えましょう。もし『履歴書を送ってくれ』とか、『サイトの情報は最新か』とあまり聞かれなかったのであれば、変化が必要です」とのアドバイスが書き込まれていました

◆6:正直に全部SNSに書かないこと
「面接でうそをついてはなりませんが、本当のことを全部公言すべきでもありません」とブッチーニ氏。例えば、面接では首になったと打ち明けずにもっと前向きな志望動機を話し、元同僚の悪口は仮に事実であっても言うべきではないとのこと。また、ソーシャルメディアから物議を醸しそうなプロフィールや投稿を消しておくのも重要です。

SNSに関する教訓は、ブッチーニ氏自身の苦い経験が元となっています。ブッチーニ氏は9カ月の間面接を受けては失敗し続けたストレスの発散のため、そして同情を引けることも少し期待して面接の記録をTwitterに投稿していました。しかし、ある日リクルーターに電話をした時に、相手から「君がTwitterに投稿した面接の記録表を見ましたが、もうそれだけで君が我が社に合わないことが分かってしまいました。私はただ、君を紹介した人への好意としてこの電話を取っただけです」と言われてしまったとのことです。


◆7:内定は見極めること
苦労の末に内定が出たら飛びつきたくなりますが、ブッチーニ氏は一息ついて内定を吟味すべきだとしています。その例としてブッチーニ氏は、音声SNSアプリの「Clubhouse」を挙げました。

Clubhouseは一時期大流行しシリコンバレーで最も大きな注目を集めましたが、いつの間にか下火になってしまい、株価は最高値の10%以下にまで暴落しました。Clubhouseの栄枯盛衰と同様に、1年間もあればシリコンバレーのIT業界は大きな変化を遂げます。そのためブッチーニ氏は、新しい会社に入ってからも、職場が自分に合っているかどうかの評価に1年間はかけるようにしているとのこと。


そんなブッチーニ氏でも仕事探しに失敗しないわけではありませんし、もし合わない仕事だった場合はすぐに辞めることもできます。しかし、内定に飛びつく前に、会社が軌道に乗っているかや市場セグメントの健全性、将来性、将来の上司との関係などの観点から、その仕事が自分の目標にかなっているかどうかをよく考えてみるべきだとブッチーニ氏は指摘しました。

◆8:解雇から学べることも多い
解雇によって苦境に立たされることになったブッチーニ氏ですが、意外にも首になった時に真っ先に浮かんできたのは「安心感」だったとのこと。当時はパンデミックが本格化しつつあり、保険には入れなくなり、株式市場は暴落して資産は目減りし、海外にいたにもかかわらず国境は封鎖されてしまいました。そのような環境の中では、今の仕事が好きではないとうすうす気づいていても辞める勇気が出せませんでしたが、そんなブッチーニ氏の背中を押してくれたのが解雇だったというわけです。


「仕事に追われている状態」から一転して「仕事をしたくてもできない状態」に切り替わったことで、ブッチーニ氏は自分自身や仕事について見つめ直すことができるようになりました。一方、次の勤め先が決まっているような通常の転職では、引き継ぎや新しい仕事のことで頭がいっぱいになるので、こうはいきません。

この経験についてブッチーニ氏は、「当時は分かりませんでしたが、若い頃に成し遂げたことや自分が犯した過ちを整理するには、数カ月間の時間が必要だったのです。この時に得られた気づきが血となり肉となったおかげで、今の私はこれまでで一番充実していて生産性の高い生活を送っています」と振り返りました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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