韓国がTSMCに対抗する受託チップメーカーの「KSMC」創設を検討
韓国の産業界と学界が、国内の半導体産業が直面する課題に対処するため、台湾のTSMCに倣った「KSMC(Korea Semiconductor Manufacturing Company)の設立を提案したことがわかりました。多様な製造プロセスを通じて、ファウンドリとファブレス企業の間にバランスの取れたエコシステムを構築することを目指すとのことです。
Korea Considers Establishing 'KSMC' to Bolster Semiconductor Ecosystem | Be Korea-savvy
http://koreabizwire.com/korea-considers-establishing-ksmc-to-bolster-semiconductor-ecosystem/301233
South Korea mulls creating 'KSMC' contract chipmaker to compete with TSMC, requires a $13.9 billion investment | Tom's Hardware
https://www.tomshardware.com/tech-industry/semiconductors/south-korea-mulls-creating-ksmc-contract-chipmaker-to-compete-with-tsmc-requires-a-usd13-9-billion-investment
この計画は2024年12月18日に韓国国立工学院(NAEK)が開催したセミナーで明らかにされたもので、台湾に比べて製造の多様性が欠けている韓国の半導体市場を成長させ、台湾のようなバランスの取れたエコシステムを維持することが目的とされています。
韓国はSamsungという世界トップクラスの半導体企業を抱えていますが、ロジック・プロセス技術やチップ設計に関しては台湾に大きく後れをとっており、状況は好転していません。セミナーに参加した専門家らは、韓国が半導体分野で世界的なリーダーシップを維持するためには早急に対処する必要があると強調しました。
案の1つが、政府による公的資金で台湾のTSMCのような企業を設立するというものです。専門家は、KSMCを設立して政府が20兆ウォン(約2兆2000億円)を投資することで、2045年までに300兆ウォン(約32兆5000億円)の経済効果が生まれると見積もっています。もともとTSMCも台湾政府からのアプローチがあって設立されたもので、台湾のように公民連携の姿勢で取り組めば状況が改善するとの見方があります。
韓国ではSamsungが強い力を持っていて、10nm未満の先端ノードについてはほとんどの中小企業がSamsungに依存している状態で制約が大きいとのこと。一方で台湾はTSMCに先進的な半導体を任せ、レガシーあるいはミドルと位置づけられる下位の半導体はUMCやPSMCのような企業で補完しています。
このように、最先端技術とレガシー技術の両方を含む多様な製造プロセスを通じて、ファウンドリとファブレス企業の間にバランスの取れたエコシステムを構築することが求められており、KSMCをその担い手とするのが最善策だといいます。成均館大学のクォン・ソクジュン教授は「KSMCが政府の支援を受けて立ち上げられれば、韓国でTSMCのような役割を果たせるでしょう」と述べました。
一方で、公的資金を受けた企業が果たして高度な製造技術を開発し、利益を上げるのに十分な顧客からの注文を獲得できるのかという懸念も提起されました。20兆ウォンでは資金が足りない可能性があり、SKハイニックスのクァク・ノジョンCEOは、「計画の一環としてSamsungのレガシー半導体用施設の一部を再利用してはどうか」と提案したとのことです。
セミナーでは、韓国の半導体産業に投資競争力の弱体化や、ファブレスおよびパッケージングの成長不足、人材流出、過度な規制など7つの主要課題があることが議題として提出され、解決策として半導体エコシステムの強化やR&D投資の拡大、人材誘致・維持政策の実施などが提案されたそうです。また、TSMCのエンジニアからのフィードバックとして、開発のスピードが速いと労働時間の延長がしばしば必要になることが挙げられ、韓国で定められた「1週間の労働は52時間まで」という政策を緩めることが提案されました。
半導体産業協会のアン・ギヒョン氏はタイムリーな投資の緊急性を強調し、韓国の半導体のリーダーシップを維持するために、2047年までに補助金や税額控除を通じた300兆ウォンの政府支援を求めることを提唱しました。
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in Posted by log1p_kr
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