時差ぼけや睡眠時間の乱れに対して代謝は脳より素早く適応できることが判明

人間の体には睡眠や代謝などを24時間周期で調節する概日リズムが存在しており、時差のある場所への旅行や交代勤務、あるいは夜更かしなどによって生活リズムが乱れるとさまざまな問題が生じます。被験者の生活リズムを一気に5時間ずらす新たな実験では、「代謝は脳よりも素早く概日リズムのズレに適応する」ことが判明しました。
Short-term changes in human metabolism following a 5-h delay of the light-dark and behavioral cycle: iScience
https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(24)02386-1

Jet lag: your metabolism recovers quicker than your brain – new study
https://theconversation.com/jet-lag-your-metabolism-recovers-quicker-than-your-brain-new-study-243866
人間の概日リズムは生活環境やスタイルに合うよう調節されていますが、時には交代勤務や時差ぼけなどによって、概日リズムと環境とのミスマッチが生じることがあります。このミスマッチのことは「circadian desynchrony(概日リズムの脱同期)」と呼ばれており、概日リズムと環境を12時間ずらす過去の研究では、被験者の代謝に変化が生じたことや、血糖コントロールが不十分になったことなどが報告されています。
しかし、12時間より控えめな概日リズムの脱同期による影響と、そこからの回復についてはあまりよく理解されていません。そこでイギリスのサリー大学などの研究チームは、男女の被験者の環境および行動パターンを「5時間」ずらす実験を行いました。
実験では、1日目(Day 1)は通常の生活リズムで過ごしてもらい、2日目(Day 2)に就寝時間を5時間遅らせることで概日リズムの脱同期を引き起こしました。そして、脳内時計のバイオマーカーとなるホルモンのメラトニン濃度と、1日を通しての主観的な眠気と覚醒感を測定しました。また、血液を採取してさまざまな代謝のバイオマーカーについても測定しました。なお、被験者は平均約45歳で全体的に太り過ぎの傾向があったものの、健康上の問題は診断されていなかったとのこと。

実験では、概日リズムと環境に5時間のずれが生じた直後から、夕方の眠気が増加して覚醒度が下がることが確認されました。同時にメラトニン濃度の変化も生じ、徐々に体内時計が調節されていったものの、5日間の実験期間中には元通りまで回復しませんでした。
一方、代謝には5時間のずれが生じてから「食事によるエネルギー消費の減少」「朝食後に胃の内容物が腸に送られるまでの時間の遅れ」「血中の糖や中性脂肪の再調整」といった数多くの変化が現れました。
眠気やメラトニン濃度とは対照的に、代謝に関わるすべての変化は実験期間である5日間のうちに完全に再調整されました。一部の変化はわずか3日以内に再調整されたとのことで、概日リズムの脱同期に対する代謝の回復は、主観的な眠気や体内時計よりもはるかに速いことがわかりました。

研究チームは、「私たちの研究は概日リズムの脱同期が人間の代謝を損なうことを確認しましたが、代謝の障害は眠気や覚醒度の変化よりも小さく、短期的であることを示唆しています。この発見は、交代勤務や飛行機を多用する世界中の人々に関連しています」とコメントしました。
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in サイエンス, Posted by log1h_ik
You can read the machine translated English article It turns out that the metabolism can ada….