Amazonが低所得地域のプライム会員に最速配達をしなかった上に事実を隠していたとして訴えられる

有料会員向け最速配達サービスの対象地域から一部地域をひそかに除外したとして、Amazonがアメリカ・コロンビア特別区司法長官のブライアン・L・シュワルブ氏から訴えられました。当該地域は黒人が多く、低所得者層が多く居住している場所として知られています。

Attorney General Schwalb Sues Amazon for Secretly Excluding Ward 7 & 8 ZIP Codes from Prime Membership Delivery Benefits
https://oag.dc.gov/release/attorney-general-schwalb-sues-amazon-secretly

Amazon sued by DC AG over slow deliveries in low-income areas
https://www.cnbc.com/2024/12/04/amazon-sued-by-dc-ag-over-excluding-areas-from-prime-delivery.html

D.C. alleges Amazon is cheating some Prime users • The Register
https://www.theregister.com/2024/12/04/washington_dc_amazon_prime/

Amazonは「Amazonプライム」という定額サービスを展開していて、加入者向けに最速で荷物を届ける最速配達サービスを提供しています。

シュワルブ氏によると、2022年6月以降、AmazonはワシントンD.C.の一部地域(郵便番号20019と20020)を意図的に最速配達サービスの対象から除外したとのこと。さらに、除外することで当該地域への配達が著しく遅くなることがわかっているにもかかわらず、Amazonはそのことを知らせなかったとされています。

コロンビア特別区司法長官事務所が示した資料によると、Amazonが変更を行う以前の2021年に荷物が2日以内に届く割合は、地域全体でおよそ70％、当該地域の1つである郵便番号20019で最大72％でした。しかし、変更後の2022年は明らかに当該地域のみ配達が大きく遅れるようになり、2023年には2日以内に届く割合は約25％にまで減少しています。

除外された場所はワシントンD.C.の第7地区および第8地区に含まれる地域で、歴史的に低所得者が多く失業率が高い所とされています。変更の影響を受けた住民は約4万8000人に上るとのことです。

住民は配達が遅くなったことに気づき、Amazonへ異議を申し立てていたそうですが、Amazonはサービス対象地域から外したことを隠し、偶然だと誤解させるような態度をとったとシュワルブ氏は主張しています。

シュワルブ氏は「一般的に、企業は業務上の変更を行うことが認められていますが、顧客が十分な情報を得た上で購入の意思決定を行えるよう、その悪影響について顧客に知らせることが義務付けられています」と指摘。Amazonはサービスを変更する権利を保持しているものの、秘密裏に変更することは許されていないとして、シュワルブ氏は消費者保護手続き法(CPPA)違反の疑いでAmazonを提訴しました。

当該地域の消費者保護手続き法は、消費者を欺くこと、虚偽の説明をすること、製品やサービスに関する重要な情報を開示しないことなど、欺瞞(ぎまん)的で不公正な行為を幅広く禁止しています。シュワルブ氏は、「提供していないサービスを提供しているかのように見せかけ、サービスを享受できないのに顧客に料金を支払わせた」という点が、同法に違反していると指摘しています。

シュワルブ氏はこの訴訟で、不公正で欺瞞的な行為にこれ以上関与しないこと、影響を受けた住民に対して損害賠償を支払うことをAmazonに求めました。

なお、Amazonが地域格差について是正を求められるのは今回が初めてではなく、2016年には「黒人居住者の多い地域が当日配達の対象となる可能性は、白人居住者が多い地域の約半分である」との指摘を受けています。このときは議員からも批判され、Amazonは黒人が大多数を占める地区に迅速な配達を行うことを約束しました。